関ヶ原合戦 家康の戦略と幕藩体制 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061598584

作品紹介・あらすじ

秀吉没後、混沌とする天下掌握への道筋。豊臣政権内部で胚胎した諸問題はやがて家康と三成の二大勢力形成へと収斂してゆく。東西に分かれた両軍が衝突する慶長五年九月一五日。戦いはどのように展開したのか。関ヶ原に未だ到着しない徳川主力の秀忠軍、小早川秀秋の反忠行動、外様大名の奮戦、島津隊の不思議な戦いなど、天下分け目の合戦を詳述。

感想・レビュー・書評

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  •  初出は1994年。関ヶ原合戦における東軍の意図せざる編成に、初期の幕藩体制を規定した政治史的・国制史的意義を見出している。「家康の戦略」という副題に反して、むしろ徳川家康のリーダーシップの脆弱性と豊臣系大名の強靭さを強調しており、豊臣秀頼の再評価と初期徳川幕府の西国支配の弱さという、近年の研究潮流に影響を与えたと言えよう。

  • 2023/7/17読了
     関ヶ原の戦いとその前後の様子が過去の文献を基にした内容で論文形式で記述されている。目新しさは無いような・・・

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99064584

  • 「家康が大坂の陣を起こしたのが不可解」という著者のむすびにあるように、関ケ原は天下分け目などではなく、関ケ原後は徳川(武家)・豊臣(公家)の二重公儀体制であっという解釈。家康は関ケ原後も秀頼に対して特別待遇をし続けていた。
    でも実際に大坂の陣は起こったわけで、その歴史的事実から遡って、関ケ原以降の15年間を解釈するのか?大坂の陣が起こるという事を前提とせず、純粋に史料批判を行って解釈するかの違いなのだろう。家康にどの時点でどの程度の野心があって、将来どうするつもりだったのかはわからない。通説では二条城会見で秀頼が立派だったので老人家康が焦ったという事だが、それにしても大坂の陣には大儀がないし、無理がある。この辺はまだまだ謎が多いと感じた。
    尚、学術文庫なのでそれなりに硬派な内容ではあるのだが、小早川秀秋が「問鉄砲」に驚いて裏切りを決断というのは、史実ではないというのが優勢なのだが、著者レベルでも平気で俗説を記述してしまう点においては、その根強さを感じる所もあった。

  • 関ケ原の合戦およびその前後が詳細に記述されている。
    徳川方に属する豊臣系武将の強さ、そして、その強さを認識しながらも豊臣家とは異なる公儀制を布くことで、反感を買うことなく実質的に日本を支配してしまう家康の強かさには感嘆せずにはいられない。

  • これまでの「東軍が勝って、徳川の天下ができましたとさ」みたいな考え方が、ちょっと変わるような、関ヶ原合戦の研究書。
    合戦前後の詳細な大名の動向を知るのにも、良い本だと思いました。
    序文を読むと、いつものトンデモ歴史解釈の人みたいな印象を持つかもしれませんが、本文でちゃんと考え方が示されているので、安心して読んで良いでしょう。(^^;
    同じ作者で、大阪冬夏の陣に至るまでの話も読んでみたいのですが、研究者ってそんなに幅広くは研究対象としないんだろうなぁ。(^^;

  • [江戸前夜、天下両分]東西両軍が激しく争い、その結果が江戸時代の幕を開けることにつながった関ヶ原の合戦。戦に至るまでの経緯からその戦闘及び戦略の特徴、そして合戦がその後の政治体制の形成に与えた影響を考察した一冊です。著者は、クラシック音楽への造詣も深い歴史学者である笠谷和比古。


    (失礼ながら)思いも寄らない傑作に出会ってしまいました。「なぜ重要な先陣に家康は豊臣系武将を配置せざるを得なかったか」、「なぜ緒戦が拮抗していたにも関わらず、家康を取り囲むようにしていた3万人もの軍勢を最後の最後まで合戦に投入できなかったか」などの問いを手がかりにしながら、合戦の全体像を描いていく様はお世辞ではなく圧巻。また、著者の筆により浮かび上がってくる関ヶ原合戦の尋常でない重要性にも身震いを覚えました。


    本書の白眉は関ヶ原合戦が江戸幕府の政治体制にどのような影響を及ぼしたかを叙述した箇所。合戦において勝利を収めた家康が、実はその勝利の内実に苦悩しながら、見事としか形容のしようがないバランス感覚を発揮して体制を固めていったことが伺えます。それだけに、著者が指摘するように大阪の陣で「豹変」とも言える態度をとった家康の心が那辺にあったのかが本当に気になるところです。

    〜関ヶ原合戦が歴史の過程のなかで果たした役割は、徳川幕府による日本全土に対する一元的で中央集権的な支配体制を確立したことではなく、むしろさまざまな局面において、分権的で多元的な政治秩序をその後の近世社会に対して付与したことにあるように思われる。〜

    めっけもん的一冊でした☆5つ

  • その後400年の歴史を決定付けた関ヶ原の真実が裏の裏までよく見える。本題ではないとはいえ、大阪の陣の記述が大変そっけないのが唯一の不満。
    征夷大将軍とその世襲という既成事実ができた。また合戦を約150年繰り返したため一度軍事衝突が生じれば、小勢力の小競り合いでなく数万単位へと合戦の大規模化が生じてしまう。すでに全国の大名は戦国の黄昏を感じていたことだろう。
    それが将来の禍根となるであろう豊臣の排除へと向かったんじゃないかな。

  • 東軍七万、西軍八万の激突主力秀忠軍遅参が持つ意味は。
    関ヶ原での東軍の勝利は徳川の力によるものではない。秀忠の軍勢三万の遅参。外様大名の奮戦。不測の事態が家康の計算を狂わせた。苦い勝利。戦後処理の複雑な陰翳。三百年の政治構造がここに決定される。天下分け目の合戦を詳述。
     第一章 豊臣政権とその崩壊
     第二章 三成挙兵
     第三章 関ヶ原の合戦ー慶長五年九月十五日
     第四章 戦後処理ー征夷大将軍任官の政治的文脈
     第五章 むすびにー関ヶ原合戦の歴史的意義

    滝野川さんの「今日は9月15日」というコメントに触発されて読む。親本を読んでいるので再読というべきか。
    親本の講談社選書メチエは1994年の刊行。手元にあるのは2000年の第3刷なので、その頃、読んだはずである。本書を読んだ時の衝撃は、いまなお忘れる事は出来ない。
    (ちなみに所持している親本には第2版注記というものがいくつか載っており良識的なのが嬉しい。)
    文庫版は、2008年の刊。親本にあった注記は無いが、補論が付け加えられている。
    本書が画期的なのは、備えの視点から、徳川軍の戦力は中山道を通った秀忠軍にあり、家康軍は旗本中心の防御的な舞台であったと論じたことにある。ゆえに合戦の勝利は、豊臣恩顧の外様大名の力に負う事が大きく論功行賞においても、外様大名を厚遇する必要があり、江戸幕府の支配体制に影響を与えたというものである。また、関ヶ原合戦から大坂の陣にいたるまでの間は、二重公儀体制であったとしている。

    今から読むと、やや古びている部分もあるが関ヶ原を語るうえで外せない1冊であると思う。戦闘の経緯については、参謀本部編による日本戦史に依拠しているという点は不満な気もする。
    ひとつ気になるのは、北政所と淀殿の抜き差しならぬ対立が、東軍についた武将たちの動向に影響したという点である。この点は、いろいろ批判もあったようであり、文庫化にあたり著者は補論を設けて自説を補強しているのであるが、個人的には補論を読んでも納得いかなかった。(両者の対立を物語る直接的な史料はないものだろうか)
    p199養源院蔵の豊臣秀頼画像が、「徳川」秀頼画像とされていた。単純な校正ミスだと思うが残念。

    とはいえ、いまなおお勧めの1冊であることに変わりは無い。

  • 関ヶ原合戦時の大名配置図やら合戦後の領地の増減、大名配置図などの資料が豊富ないい本です。私みたいな初心者からそれなりに知識のある人まで楽しめるんじゃないかな。

    個人的には地元の変遷がすごく面白かったです。
    佐竹義宣は常陸水戸54万石が出羽秋田30万石に減封・所替になったのですが、他にも『南総里見八犬伝』でおなじみの里見家が常陸鹿島→安房館山、武田信吉が下総佐倉→常陸水戸、秋田実季が出羽秋田→常陸宍戸と存外に関ヶ原合戦の余波を受けていました。
    佐竹義宣は石田光成と親交も深かったらしく、豊臣七将の光成襲撃事件の際に光成を助けて大坂を脱出させたとか、常陸の佐竹領の太閤検地の検地奉行は石田光成だったとか。知らなかった!
    ほんとにこのお値段でこの内容はお得すぎます。

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター名誉教授、大阪学院大学法学部教授。博士(文学)(京都大学)。専攻は日本近世史・武家社会論。主な著書に『主君「押込」の構造』(平凡社)、『士(サムライ)の思想―日本型組織・強さの構造』(日本経済新聞社)、『武士道の精神史』(ちくま書房)、編著に『徳川社会と日本の近代化』(思文閣出版)、『徳川家康─その政治と文化・芸能』(宮帯出版社)ほか多数。

「2020年 『信長の自己神格化と本能寺の変』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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