- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061598607
作品紹介・あらすじ
元女官長の不敬事件、虎ノ門事件、田中正造直訴事件、あるいは明治憲法制定史、昭和天皇「独白録」の弁明など、近代天皇制をめぐる事件に「精神鑑定のポリティクス」という補助線を引くと、いったい何が見えてくるか。「反・皇室分子=狂人」というレッテル貼り。そして、「狂気の捏造」が君主に向けられる恐れはなかったのか?独自の視点で読み解くスリリングな近代日本史。
感想・レビュー・書評
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狂気(とされた)王——日本においてはすなわち天皇——のことではなくて、王権(というか王制)をめぐる、狂気の取り扱われかたについての本である。具体的には難波大助、津田三蔵、島津ハルといった「不敬」な者どもや、相馬誠胤やルートヴィヒ2世などの「不都合」な君主が、ある時は正気、またある時は狂気と、恣意的に扱われた歴史をひもといている。
それはいいのだが、まずやたらとひらがなばかりの文体が気持ち悪い。初めて読む著者なので、これがいつもの癖なのか一時期の自分内ブームだったのかは知らないが、「書いた者だけが酔っている美文」の一変奏である。
そして内容がまた、やたら迂遠で意味ありげだが、結局は邪推と牽強付会なのだ。著者はみずから言うように、「まったくのしろうと」である。それが、他人の名誉を毀損しかねないようなことを、「断定することは、さけようと思う」などとネッチョリした文体で、何度も何度もくり返すのだ。もはや、生理的嫌悪感すらある。
テーマは興味深いだけに、残念だ。
2018/9/28〜9/29読了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第1章 オカルティズムと宮廷人
第2章 虎ノ門のテロリスト
第3章 石と煙突のファナティケル
第4章 フレーム・アップができるまで
第5章 ニコライをおそったもの
第6章 相馬事件というスキャンダル
第7章 マッカーサーに語ったこと
第8章 皇位簒奪というイリュージョン
第9章 ルードヴィヒの王国から
第10章 ノイシュバンシュタインの物語
著者:井上章一(1955-、京都市、建築史) -
2016/8/30
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[ 内容 ]
元女官長の不敬事件、虎ノ門事件、田中正造直訴事件、あるいは明治憲法制定史、昭和天皇「独白録」の弁明など、近代天皇制をめぐる事件に「精神鑑定のポリティクス」という補助線を引くと、いったい何が見えてくるか。
「反・皇室分子=狂人」というレッテル貼り。
そして、「狂気の捏造」が君主に向けられる恐れはなかったのか?独自の視点で読み解くスリリングな近代日本史。
[ 目次 ]
第1章 オカルティズムと宮廷人
第2章 虎ノ門のテロリスト
第3章 石と煙突のファナティケル
第4章 フレーム・アップができるまで
第5章 ニコライをおそったもの
第6章 相馬事件というスキャンダル
第7章 マッカーサーに語ったこと
第8章 皇位簒奪というイリュージョン
第9章 ルードヴィヒの王国から
第10章 ノイシュバンシュタインの物語
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
昭和の時代を知る人さえ少なくなって、我々はその時代の影を見ることも知ることもあまりできなくなってしまいつつある。子供の頃聞かされた戦前のセンセーショナルな事件についての不確かでまことしやかな噂は本当のことだったのだろうか?私くらいの世代でやっとそのような思いに至る最後の世代では無かろうか?著者のややセンセーショナルを気取った書き方は好みではない。言を左右にしてもったいぶったまま終わりにしてしまうのもいかがかと思う。著者は桂離宮論で一世を風靡した方ではあるが、その議論にはちょっと辟易した覚えがある。本書についても同じような感想を持つ。ただ、私に昭和の香りを伝えてくれるという点でだけちょっと気に入っている。
著者プロフィール
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