- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061598836
作品紹介・あらすじ
「巨」の部首は?「卍」は何画?「布什」とはどこの大統領?-三〇〇〇年以上昔の甲骨文字の時代から、漢字はどのように造られ、生活をうるおし、文化圏を広げてきたか。そしてIT時代の情報伝達をいかに担っていくか。漢字に囲まれて育った著者がその魅力と歴史と未来への可能性を語り尽くす、ユニークな漢字文化論。
感想・レビュー・書評
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以前、漢字研究者の笹原宏之さんの本に、彼が中学時代から『大漢和辞典』を手に入れ、通読していたという話が出ていて仰天したことがある。
漢字研究者になるような人は、子どもの頃から違うんだなあ、と。
一方、たくさんの著書があって、現在漢字といえばこの人、という感がある阿辻哲次さんはというと、ご実家が印刷工場だったとのこと。
子どもの頃から文選(ぶんせん)作業をしていて、画数や部首に関心を持つようになったとか。
先祖代々漢学者の家柄なのかと勝手に思っていたので、ちょっと意外だった。
第四章にある大規模漢字字典の話は、面白かった。
1994年に出た『中華字海』は、八万余の字を収めているという。
もっとも、死字も多く、実用に便利ではないそうだ。
それから、会意文字の位置と意味の関係についての指摘も面白く感じた。
同じ形の意符でも、現れる位置で全く字の意味が変わってくるというのだ。
「東アジア漢字文化圏」という言葉はこの人も使っている。
現在の漢字ブームに対し驚きを持ってはいるものの、まあ、それを認める立場には立っていようか。
漢字文化の振興を支持するロジックはどのようなものかという関心で読んだ。
ワープロ、ケータイの普及で、今は誰もが簡単に漢字を使えるようになった。
だから、漢字を制限する必要はないじゃないか、というのが第一の論点。
もう一つは、漢字のピクトグラムに通じる性格。
むしろ音と積極的に切り離して、世界共通の意味を伝えるマークとして、有用なコミュニケーションツールとなる可能性を評価していた。
二つめの論点は面白いとは思ったが・・・
この人にとっては、日本語の表記体系の問題として捉えるつもりはないようだった。
後日記
会意文字の要素が、位置によって意味が違うと言う話が本書にあったのは上記の通り。
後で思い出したのだが、動用字とはどのような関係になるのだろう?
動用字が成り立つのは、場所が変わっても同じパーツなら同じ意味という理解があってのことだと思われるのだが・・・
もう少しこの問題、情報が欲しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
漢字の起源から、現代のインターネットや携帯電話での文字や言葉の使われ方など、「文字の文化」をとても柔軟に捉えられてるので、わかりやすく好奇心をそそられます。
漢字検定などに興味を持たれてる方も面白いと思いますし、書道を楽しんでいる方もこの本は必読だと思えます。
著者の温かい人間味も溢れている名著と思います。