- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061598973
作品紹介・あらすじ
中世の村はひたすら明るかったのか。あるいは村の隅々にまで戦国大名の支配が浸透していたのか-実態は「自力」のさまざまな発動が織りなされる熟した社会であった。村同士の争い事の際の言葉戦いという挑戦の作法、暴力の回帰や反復を避けるための人質・わびごとの作法、また犯罪解決のための自検断の作法などを検証し、中世の村の実相に迫る。
感想・レビュー・書評
-
藤木先生の著作を読むのは、大学生ぶりか。
戦国時代の法や自治権の大家。
戦国時代を勉強したいと思うなら、藤木先生の著作は外せない。
このコロナ禍で藤木先生が亡くなられたとのこと。
残念である。合掌。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
解説:久留島典子
-
戦国時代の村々に、西部劇のような制度があり、活用されていた、というのが興味深い。様々な視点で「村」の実態に迫ろうとする一冊。「はっきりしたことはわからない」のが多いのは、研究途上の分野だからか。
-
戦国期における、村に生活する人々をテーマにした研究書。
戦国期、足軽・雑兵に代表される一般兵士の集団線が主役となった。
それは、鎌倉武士が戦う前に行っていた、大将同士の詞戦から、雑兵同士の詞戦の変遷をたどることからもわかる。
この「詞戦」が、敵の士気を削ぎ、味方の士気を鼓舞する重要な戦であった。
常に戦の主役であった「村」という共同体は、領主の統治機構の一部を担っている自負もあり、服従一辺倒ではなかった。
領主が村への干渉を強めると、村を預かる庄屋は、百姓たちの先頭に立って逃散(逃亡を促す)をかけて領主に抵抗し、年貢帳簿の提出を拒んで、庄内への直接介入を許さなかった。
本書は、こういった庶民(この頃が庶民の萌芽だと個人的には考えている)のたくましさをまとめた内容になっている。
本旨からは外れるが、戦国の村の掟についても様々な解説をしており、スケープゴートの役割として、流れ者や乞食を雇っていたという。
村同士の争いが起こった際、その発端となった下手人は処刑の対象となる。しかし実際処刑されるのは、雇った浪人ものや乞食であったことなど、当時の村の運営について興味深い解説をしている。 -
内容はよかったけど、わかりづらかった(私の読解力の低さが多分だが)
-
戦国時代の民衆が、ただただ略奪されていただけかと?
いいえ、なかなか逞しくてよ。
史料を丁寧に取り扱っての論証は、とても説得力があります。
口合戦は呪術的な意味や、実際に敵を挫き、見方の四季を上げるのに使われたと、最初に述べています。
村同士の紛争を解決するために、人質(若い大人、特に成人男性は含まない)を渡したり、浪人などを村で養ってあげて、いざという時に犠牲になってもらったりしたそうです。
村の自治は若衆と老人が協力して行い、犯罪者が出たときは密告や捕縛を奨励、しかしあくまで個人で捕まえた場合のみとか、様々なルールがあります。 -
ラジオ深夜便2009年7月16日放送分で、この本の著者、藤木久志氏が「村に戦争が来る 戦国時代の危機管理」というタイトルで話をされていた。それが非常に面白かったのでこの本を読んでみたのだが、いささかこの本は手強かった。
上目次に掲げたようなテーマについて丹念に古文書を挙げいく。解説付きの読みやすく整形した文とは言え、原典がかなり載っているので、きちんと読み進めようとするとかなり集中力がいる。私なんかでは読んでいるうちにボーッとしてしまったり、テーマが何の文を読んでいるのか忘れてしまったり。面白おかしく結論だけ書いてある新書本なんかをイメージして購入すると挫折することになりそうだ。一方で、興味あるテーマの古文書ともなると、読んでいて非常に面白い。中世にの人間の息づかいが感じられる(ような気がする)瞬間がある。