あんみつ姫(ワイド版) (1) (ワイドKC)

  • 講談社 (1992年3月1日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ / ISBN・EAN: 9784061765214

感想・レビュー・書評

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  • 天衣無縫な姫様の、甘くてピリリな日常のはじまりはじまり。

    ヘンテコだからこそとっても素敵! なオリジナル作品をあまた世に送り出されてきた「竹本泉」先生としては珍しい、原作付きのメディアミックス作品です。
    ああそうか。巨匠という呼び方は肩肘張るのでそぐわないにせよ、2024年現在からすれば活動歴四〇年を越える大ベテランもこの当時では六年目のキャリアでした。
    少女漫画史に絶大な足跡を刻んだ『あんみつ姫』を任されるのも納得な頃合いといったところでしょう。

    ちなみに私はオリジナルの「倉金章介」先生版の本家本元『あんみつ姫』は不勉強なことに読んだことはありませんので、どうしても的を外した意見になってしまうことは避けられないとは思います。
    それでももしよろしければ、以下のレビューをご照覧になっていただけましたら幸いです。

    ちなみに竹本先生の作品は一時期やたら出し直し・復刻されていたことでも知られています。
    全四冊な本作もそれは例外ではなく、「宙出版(ミッシィコミックス)」と「幻冬舎(バーズコミックススペシャル)」からそれぞれ約十年越しで二回に渡り、上下巻で復刻されてたりします。

    出し直しの方には当時の事情などを記した竹本作品名物「なかがき」・「あとがき」コーナーが追加されていたりするのでファンには見逃せないかと。
    ただ、内容としてはどれもほとんど変わらないので入手性を鑑みてお好みでどうぞといったところでしょうか。ほとんどということなので、ちょっと変わってるところもありますがその辺は後述します。

    で、本作の雰囲気に関しましては全編濃密な竹本節です。わりとオリジナル作品としての趣があります。
    この辺は、時を同じくしてやっているテレビアニメ版が輪にかけて自由な振る舞いを見せていたこともあってでしょう。だから可能性のひとつとして認められたのかもしれません。懐が深いのはいいことです。

    まぁそんなわけでだいたいいつもとやってることは変わんないじゃないかというツッコミは置いといて。
    まず、原作・テレビアニメ系列のキャラクターデザインとこちら竹本版はかなり違いますね。
    主人公「あんみつ姫」を筆頭に、どっかで見たような竹本作品おなじみの顔顔顔が顔を出します。

    けれど、媒体によって程度の差こそあれ共通する時代劇に時代を無視した風物や技術が共存する世界観はきちんと保たれています。それから基本コメディで、時折人情物を混ぜ込んだ作風も踏襲しています。
    ただ、本作の場合は城内での人間関係はトラブルメーカーな発明家のパパのほか、個性的な家臣それぞれの出番はもちろんある一方、あくまでそれぞれのポジションに徹してるなという印象でした。

    一年の連載で全十二話というくくりもあってか、個別エピソードでの掘り下げはあまりされていません。
    姫を教え導く家庭教師の立場にいる「カステラ夫人」はさすがに目立っている印象でしたが。あくまで「あんみつ姫」を中心として城下の人々込みで巻き込んでいくドタバタコメディに終始した感がありました。

    ただし、本作独自に取り上げられる要素は大いにあります。
    たとえば、オリジナルのキャラを軸に三角関係でラブコメをやろうとした形跡を感じられるのが特徴だったりと。(いやまぁ、不発で終わるんですけどね……w)
    アニメで登場予定だった隣国の若殿「さくらもち太郎」が本作で起用されたのは裏話で時折挙げられていましたが、同じく隣国の「いちご大福」姫について言及される方があまりいらっしゃらないのは不思議です。

    こちら一話から登場するいちご大福姫、お金持ちを鼻にかけて毎度のように自慢しあんみつ姫のところに訪れる嫌味な姫様にみえて、対等な姫君にお友達としてかまってもらいたいことが明け透けです。
    悪い子じゃないんですが、立ち振る舞いがなんかシュールでオチ担当になることも多い。
    彼女を抜きにして竹本泉版『あんみつ姫』は語れないと思うんです。

    この場合はさくらもち太郎を巡り、ふたりが恋のさや当てするとかいう話じゃなくって、お忍びで町人と交わらなくても同じ目線で語り合える(語り合ってたか……?)友達がいると話にまとまりが出るというか。
    ラブコメとしてはともかく、その辺の試みは成功してたかなって私は思うわけです。
    それと多種多様な脚本家・演出家のカラーが出た1986年のアニメとは違い、こちらは竹本先生単独で一年に渡る連載を試行錯誤しておられたわけで。ままならない部分があっても、それも味というものですよ、味。

    以上。
    そんなわけでここ一巻では三話までを収録です。
    内訳としましては主人公登場で基本を押さえた第一話、要所でいい仕事をしてくれるカステラ夫人が登場する第二話、そして魚屋さんの正体の片鱗が明らかになる第三話です。

    三話までの流れを読む感じでは、ノリと勢いと姫の人徳(?)でわりと洒落にならない事態を上手く収め、ここぞというところでカステラ夫人が叱ってくれるのはなんというかバランスって感じですね。
    話を回すのが姫のおてんばだけじゃなくて、空回りだったりするのが可愛らしくていいんだと思います。

    あと、本書の42Pに該当する部分は出し直しの度に表現が変わっているのですが、この辺は色々あったせいとされています。その色々が何なのかについてはここでは触れません。あまり面白い話にはならないので。
    前後の文脈を読み取れば、問題とされる箇所はあんみつ姫が恐怖のあまり実像からかけ離れた勝手な想像を膨らませたに過ぎない。脈絡のない虚像のひとつに過ぎないことが理解できるはずなんですけどね。

    ちなみに第二話は教育に携わる夫人の登場回らしく、色々考えさせられる面白い話だったと思います。
    問題なのは見た目がどうであれその人を受け入れること、勝手な先入観に目を曇らせてはいけませんといったところで。誤りを認めることでおてんば姫は一歩一歩健やかに成長していくのですね。どっとはらい。

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