狂い壁 狂い窓 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 16
感想 : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061810471

感想・レビュー・書評

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  • この人って人間関係が崩れていくような話を書くのうまいね。

    ホラー現象よりもむしろそっちの方が怖いわ。

  •  それはひとつの責苦だった。
     彼は何度も許しを乞うた。膝にすがり、泣きながら断罪を願い続けた。しかし妻は子供を宥めるように彼の頭を撫でながら、黙って首を横に振り続けるばかりだった。弱々しい笑みを湛えたその表情を見れば、悪いのは妾だと言いたがっているのがわかる。それらひとつひとつの仕種が、彼にとっては百万回の鞭だった。彼はいよいよ自分の罪に震え、頭を掻き毮り、彼女の膝で泣きじゃくった。彼は既にバラバラだった。ここにこうしているのは抜け殻でしかない。哀れな妻の姿を見るのは耐えられず、かと言って再び彼女を捨てることなど到底できることではない。

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著者プロフィール

竹本健治:
一九五四年兵庫県生れ。佐賀県在住。中井英夫の推薦を受け、大学在学中に『匣の中の失楽』を探偵小説専門誌「幻影城」上で連載。デビュー作となった同書は三大奇書になぞらえ「第四の奇書」と呼ばれた。
ミステリ・SF・ホラーと作風は幅広く、代表作には『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』の「ゲーム三部作」をはじめとする天才囲碁棋士・牧場智久を探偵役としたシリーズや、自身を含む実在の作家たちが登場するメタ小説「ウロボロス」シリーズなどがある。近著に大作『闇に用いる力学』。

「2022年 『竹本健治・選 変格ミステリ傑作選【戦後篇Ⅰ】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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