- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061810471
感想・レビュー・書評
-
この人って人間関係が崩れていくような話を書くのうまいね。
ホラー現象よりもむしろそっちの方が怖いわ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
それはひとつの責苦だった。
彼は何度も許しを乞うた。膝にすがり、泣きながら断罪を願い続けた。しかし妻は子供を宥めるように彼の頭を撫でながら、黙って首を横に振り続けるばかりだった。弱々しい笑みを湛えたその表情を見れば、悪いのは妾だと言いたがっているのがわかる。それらひとつひとつの仕種が、彼にとっては百万回の鞭だった。彼はいよいよ自分の罪に震え、頭を掻き毮り、彼女の膝で泣きじゃくった。彼は既にバラバラだった。ここにこうしているのは抜け殻でしかない。哀れな妻の姿を見るのは耐えられず、かと言って再び彼女を捨てることなど到底できることではない。
全2件中 1 - 2件を表示
著者プロフィール
竹本健治の作品





