切ない社会派ミステリ。
わたしも恋人が東京に就職になって、彼に会いに一人で夜行バスに乗って、はじめて新宿に降りた時、早朝にも関わらず大量の人が足早に行き来しててとても怖くて孤独を感じた経験があるので、由紀子の気持ちがすごくわかる。
彼女は1人でそこで生きていかなくてはならなかったからなおさら辛い。
源一の放火の裏側にある社会派な部分よりも、由紀子の人生や彼女が土屋を殺すに至った過程のほうが実は島田さんが描きたかった部分なのかもしれない。
しかし、由紀子の人生をみると東京は人々の関わりが薄く冷淡というように感じられるが、寒川の田舎であっても、夜這いをかけられていた由紀子の母のことをみんな黙ってみていた。そこに救いのなさを感じる。