- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061813694
作品紹介・あらすじ
鎌倉の旧家、里井家の長男・幸太郎が鈍器で撲殺されたのを皮切りに、銃殺、毒殺と次々に恐るべき殺人が行われる。探偵事務所を営む手島利明とその恋人、輝子の2人は、莫大な財産目当ての凶行とみて調査を進め真相に迫る。里井家の少年がもらした「宝探し」のひとことが指し示す凶悪無類の真犯人は一体、誰か?
感想・レビュー・書評
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天国の探偵局で局長に呼び出された塩見忠良。
自分の死の原因が分からないという彼のために、局長は真相を究明しようという。しかし天国のルールとして現世に直接介入する事は許されない。ただひとつ出来るのは古今東西現実虚構を問わず、名探偵の魂を下界の人間に照射し捜査のきっかけを与えるという事だけ。
名探偵、普通の探偵、その他。三種類に分けられた天国のリスト。
ホームズでもポアロでも誰でも好きに選べるというのに、塩見は同郷のよしみで鎌倉在住の若きヘタレ探偵を選んでしまう。
すでに死んだ人間が天国で自分の死の原因を探るというなんとも面白い設定のミステリ。ユーモアミステリのようですが、そこは梶龍雄。しっかり伏線が張られた本格ミステリです。
現世側の主人公、手島利明は夢見がちなミステリマニアで定職に就かず廃墟に『手島探偵事務所』の看板を掲げ、ひたすらミステリを読みふける変人。捜査と称した不法侵入による厳重注意一回。古本屋で手に入れたチャンドラーに挟まれていたメモがきっかけで事件に関わり始める。
彼の行動を天国でVTR(?のようなもの)を観ながら、局長と塩見があれこれ推理を繰り広げる一風変わった作り。危なっかしい手島の推理を踏まえて、さらに天国でおさらいする。現世と天国、交互に描かれる構成が楽しい。
梶龍雄ってこういうタイプのミステリも書くんですね。大満足でした。ラストにプラスアルファのご褒美をもらえたのが嬉しい。さて、みなさんはどうでしょうか。
尚、この本は『Xの悲劇』に始まるエラリー・クイーンの一連のシリーズの内容に触れている部分があるので、未読の方は注意が必要です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
鎌倉の旧家を舞台にした遺産相続が絡む本格ミステリーです。
天国の局長が地上の私立探偵に指示して解決させるいう着想は面白いのですが、どうもギクシャクしていて読み辛かったです。
トリックはやや強引ですが、なかなか凝った趣向ですし、著者の持ち味である伏線の妙も味わえます。犯人当て小説としては申し分のない出来だと思います。
著者プロフィール
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