姑獲鳥の夏 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061817982

作品紹介・あらすじ

うだるような暑さの中、急にひんやりとした締め切った部屋に入り眩暈を覚えるような、抜け落ちた記憶を必死に集めようとしてもどかしさを感じるような、過去からの因縁を断ち切れず苦悩するような、京極夏彦の「姑獲鳥の夏」は登場人物の気持ちのかけ違いによって引き起こされる悲劇です。だから、不思議なことなど何もないのです。

感想・レビュー・書評

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  • 姑獲鳥。

    読み方と意味が二つあるそうで、

    ①「うぶめ」と読むと、日本の妖怪。夜中に赤ん坊を抱いた姿で現れて、通行人にその赤ん坊を抱かせようとする。

    ②「こかくちょう」と読むと、中国の伝承上の鳥。夜間に飛行し、他人の子を攫って自分の子にしたり、子どもの命を奪ったりする。

    そんな話が冒頭の、私(関口巽)とその友人、京極堂の長い議論(問答)の中に盛り込まれる。

    これが、私(関口)が持ち込んだ事件(謎)の、実は解説のようになっていたと、冒頭部分を読み返して気付いた。

    事件(謎)は2つあって、
    •妊娠20ヶ月の妊婦が出産しないまま衰弱
    •その夫が密室から失踪

    ここから、物語が展開していく。

    複雑で緻密で、読み終えて、読み返して、「ああ!」

    理解に時間のかかる僕には遅れて、この作品の充足感が込み上げてきた。

    京極夏彦さんの小説は、ボリュームたっぷりな上、気味が悪そうなため敬遠してきたが、非常に読みやすい文体だった「アリアドネの声」の井上真偽さんが好きな小説として挙げていたため、読むことにした。

    怪奇、心理、因習、伝承•••。

    ページ数だけでなく中身もさまざまな要素が盛り込まれ重厚感たっぷり。

    満腹感に満たされているので、お腹が空いた頃に、また、京極さんにチャレンジしてみようと思う。

    • bmakiさん
      うんうん、そうなんですよね。
      最初はその厚みと、装丁の不気味さに敬遠してしまいがちですが、このシリーズはゲラゲラ笑えるほどに面白いのです!...
      うんうん、そうなんですよね。
      最初はその厚みと、装丁の不気味さに敬遠してしまいがちですが、このシリーズはゲラゲラ笑えるほどに面白いのです!
      私は榎木津のファンですが、榎木津が活躍する回では、間違いなく大爆笑されると思います。

      次は魍魎の匣でしょうか?
      こちらは本当に最高でした。

      姑獲鳥の夏、私は2回読んでいるのに、肝心な所をまた失念してしまったようです。。。
      3回目も有りだなと思ってます( ̄▽ ̄)
      2024/01/03
    • shukawabestさん
      コメントありがとうございます。
      かなり京極さんの小説読まれていますね。
      この作品で唯一物足りなさがあったとすれば、榎木津が中途半端だったこと...
      コメントありがとうございます。
      かなり京極さんの小説読まれていますね。
      この作品で唯一物足りなさがあったとすれば、榎木津が中途半端だったこと。独特なキャラクターだったのに、なぜもっと活躍しないのだろうと思っていました。後に活躍の場があるなら安心しました。「魍魎の匣」を京極作品の中では次に読んでみようと思います。そして、最終的にはbmakiさんは読まれていますが、僕の京極さんに対するトラウマの元になった、一番分厚い文庫本、「絡新婦の理」、チャレンジできたらいいかなと思っています。
      僕も好きな作品は、期間を空けて繰り返し読むので、京極さんの作品から、また読みたいというものが出れば楽しいだろうなと思います。
      また、今後も引き続きよろしくお願いします。
      2024/01/04
  • 以前、読みました。
    最高でした。
    驚愕でした。
    三回は読み返しました。
    クライマックスはなぜか音楽が聞こえてきました。
    なぜかは分かりません。音楽が聞こえた本は初めてです。
    いや~、面白い。

    • みんみんさん
      今から京極堂が久遠寺に乗り込みます…
      めちゃくちゃ面白い\(//∇//)
      後180ページ‼︎
      今から京極堂が久遠寺に乗り込みます…
      めちゃくちゃ面白い\(//∇//)
      後180ページ‼︎
      2023/01/27
    • 土瓶さん
      終盤は怒涛!
         恐怖!!
         哀しみ!!!
      の三重奏です。お楽しみに♪
      終盤は怒涛!
         恐怖!!
         哀しみ!!!
      の三重奏です。お楽しみに♪
      2023/01/27
    • 土瓶さん
      「久遠寺家の呪いを解いてくれ!」
      「久遠寺家の呪いを解いてくれ!」
      2023/01/27
  • はじめ本屋で見た時は、こんなに分厚い文庫本あるのかと思った。こんなに分厚くするなら上下巻に分けたらいいのに。値段もそれなりに高かったが。
    京極堂が主人公。ちょっと、他の主人公より変わっていて面白い。でも、内容は結構凝っていて難しい。意地で読んだ。その後、このシリーズも意地で読んだという事は、やはり魅力あるシリーズなんか。

  • メジャーどころをという事で。
    この人のは、厚いから敬遠してきたが、
    遂に読んでみた。

    京極堂シリーズ一作目。
    舞台は終戦直後の日本。
    密室殺人はミステリー。
    呪いは陰陽道。
    憑物筋は怪談。

    よくもまぁこれだけの話を組み込んで
    作ったなと。感心。
    量子力学とか出てくるし。

    自由・平等・民主主義の仮面を被った陰湿な差別主義

    いつ何が起ころうと当たり前だし、何も起こらなくても当たり前だ。なるようになっているだけだ。この世に不思議なことなど何もないのだ

  • 民俗学と現象学を巧みに使ったメンタルミステリー。
    独特の世界観が構築されていて、みんなハマるのも頷ける。

  • <京極夏彦>の本はとても魅力的で面白いということは、何となく知っていた。
    本好きの友人たちは、新刊がでるのを心待ちにしていたし、分厚い本を持ち歩いて時間を惜しんで読んでいたから。
    でも、その厚さ故、本を読みなれていない私としては、なかなかチャレンジできなかった。
    しかし、電車の中でほんの少し読み始めてみたら・・・グイグイとその世界に引き込まれ、わくわく感でいっぱいになった。

    本を貸してくれた友人に「理屈っぽいよ」とか「漢字が多いよ」とか言われたけど、その理屈は話の展開上必要なものであるし、漢字はふりがなが降ってあったりするのでそれほど気にならなかった。
    そして、その理屈っぽい話がとても魅力的なのだ。

    そして何より登場人物がそれぞれ個性的で魅力的だった。
    沢山の人物が登場してくると、わけがわからなくなり、少し前のページに戻ることもしばしばある私だけれど、この本に関しては一度もなかった。
    それは、最初の登場でその人の人物像がしっかりと想像できるし、一度でインプットできてしまうからだ。

    さて、話の内容につてだが、それは映画を見ていたので大方わかっていた。
    しかし、読み終えたとき、「なるほど、そういうことだったのか」と謎が解けた思いだった。
    映画でわかったつもりでいたことが、まやかしであったかのような気にさえなった。

    映画もとても面白かったので、やはりその役者さんたちを思い浮かべながらストーリーを追っていったところはある。
    そのせいか、あっという間に読破。
    最初はこんな分厚い本読めるのか?
    文字が小さくてページは二段になってる~
    などなど、最初の不安は取り越し苦労。

    今はただ、早く次の作品を読みたい。

  •  「面白い本に出会ったら、その著者のデビュー作を読みなさい。そこには著者の全てが詰まってるから」
     子供の頃、本を贈ってくれた伯父が、手紙に書き添えてくれた言葉です。
     本書は、作家・京極夏彦のデビュー作ですが、京極夏彦そして京極堂の魅力がぎっしり詰まった作品だと思います。

     元々、親父が『鉄鼠の檻』を読んでいたのがきっかけで京極堂シリーズと出会いました。
     確かそのとき、
     「それ、面白いの?」と聞いたところ、
     「むちゃくちゃ面白い」と親父が答え、
     「じゃ、読み終わったら貸して」と頼むと、
     「これ、シリーズもんやから、順番に読まんとあかんぞ」と言われました。
     で、調べてみたら、『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』『狂骨の夢』そして『鉄鼠の檻』と、目の前で親父が面白がって読んでいる作品に到達するまでには、アホみたいに分厚い三冊のノベルスを読破しなければならないと知り、愕然としたのを覚えています。
     が、読み始めたらどハマりしました。寝食こそ忘れませんでしたが、学校の勉強は全部忘れて読みふけったのを覚えています(ヲイ

     冒頭、京極堂と関君が、徳川家康とダイダラボッチを引き合いに、延々100頁にわたり実存について議論するところで、一気に京極ワールドに引き込まれました。
     冷静に考えれば、「これ、いつ話が始まるねん?」と思うところですが、そんなことを考えさせない筆致で、知的にスリリングな会話が続くので、貪るように読んだ記憶があります。

     いよいよ事件が始まっても、鬱々とした関君の視点から物語が語られるため、いつしか自分も関君の気持ちに感化されたのか、暗いモノトーンの世界で物語世界を見ていることに気づきました。
     二十か月以上も妊娠中の女性。記憶が見える超能力探偵・榎木津。そして、久遠寺涼子と関君の過去…話はどんどんややこしくなります。
     眩暈坂を登るところから話は始まりましたが、僕も読み進めるにつれ、そんな感じがしてきました(笑)。「これ、ちゃんと風呂敷たためるの?」と少し心配になりながら、読み進めたのを覚えています。

     が、最後、全ての憑き物を落とすため、黒装束に身を包んだ京極堂が出てきたとき、ここまで読んできた僕の、心の中に澱のように溜まった憑き物も一緒に落としてくれたように感じました。
     こんな訳のわからん事件の真相が、京極堂の説明を聞くにつれ、オセロが一気にひっくり返されるように、きれいに説明されていきます。「この世には不思議なことなど何も無いのだよ、関君」というセリフは、著者から自分に向けられた言葉のように刺さりました。人生で体験したことのないレベルの「アハ!体験」だったと思います…って、何かオセロだのアハ!体験だの、比喩がセコいですね…orz

     今更私なんぞがあれこれ書いても屋上屋を架すようなものですし、なるべく予備知識なく読んで欲しいのでモヤーッとした感想しか書けませんが、とにかく未読なら読んで下さい。というか、これ読んでないって時点で人生損してます!

  • あー小説を読んだ!それが感想第一だ。
    死生観や宗教の哲学までもが語られ、しかも例えが分かりやすい。去年読んだ「死とは何か」よりよほどわかりやすい。京極堂と言う強烈なヒーローに心底惚れた。
    ミステリーから後半のホラーは凄まじく、前半の長々しいくだりが嘘のように、気がつけば残りわずかと言うところでまた語りが入り急停止。と油断したところに急転直下の結末に全てが繋がった!
    姑獲鳥とはすごい題材を使ったものだと初の京極氏の小説の虜となった。

  • 読み返すと、意外と面白かった。
    薀蓄本。
    初めてこの本を手にした時は分厚いなと思ったが、巻を重ねるごとに更に分厚くなっていくので読み返した時にはうっす!となる不思議。

  • 何度読んでも魅了される。
    シリーズ通じて好きになれない関口が、特にこの本では許せないのだけど、それでも時間が空くと読みたくなってしまう。
    ただ、いつもラストに少し物足りなさを感じる。
    物語は終わっても、関口が消化し切れていないからだろう、次作と併せて本当の一作品、という気がする。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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