姑獲鳥の夏 (講談社ノベルス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061817982

感想・レビュー・書評

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  • 怪奇という幻想を見事に顕現させた作品。人が過去に見てきた怪奇の根元を暴いていく展開には息を呑んでページをめくりつづける他なかった。

  • 妖怪と言葉と病気。実在しないもの。

    言語学での留学が決まって、ソシュールの構造主義に触れたタイミングで読んだのは何かの縁だったのかもしれない。(2000年)
    京極堂(主人公)の言う「妖怪だと思えばそれは妖怪だ」というのが、現象とそれを全体から切り取った名前(言語)との間の恣意性を言っているのだとすればまさにシニフィアンとシニフィエの関係にあると言える。
    シニフィアンとしての妖怪(怪異)は様々な形で曖昧に形を取りながら語られていて、その意味で妖怪は実在しない。

    「姑獲鳥の夏」では関口は最後まで目の前の現象をあるがままには認識できない。そんなことができるのは榎木津探偵のみであり、彼はある種超越的な存在として描かれている。答えは関口の前にあるが、ミステリー(妖怪)は彼の世界の切り取り方に由来する。共通構造を関口という主体が恣意的に切り取り、読者はその視点で物語を見つめ、恣意性の狭間に生まれる妖怪を見ることになる。

    ここで、かつての読書に加えていま思うのが、「病気」はこの妖怪と同じようなものではないかと言うこと。身体精神全体から症候/データを基に現象を切り出して診断名をつける。その決定の一回性はエビデンスの積み重ねを援用してもやはり恣意的な部分は残らざるを得ない。京極堂は古文書や膨大な知識(エビデンス)を積み重ねて論理を構築し、関口や関係者に説明(ムンテラ)を行う。ミステリーではこの後付け論理が構造を解き明かしているように見えるけれども、診療は飽くまでも複雑な偶然の絡まりでもあり、後付け説明はその道筋の1つでしかないことの自覚が大切だと思う。

    本の感想ではなくなってしまった(汗

  • 京極夏彦さんの作品にのめりこむきっかけになった一冊
    事件の真相や謎解きが大好きになった

    犯人に真相を突きつけ白状させて逮捕するという解決でなく「呪い」をかけるという斬新な方法で大好きなシリーズ

    中学3年の時に邪魅の雫が出て以来6年待ち続けている鵺の碑が早く出ますように・・・

  • ちょっと不気味な世界観、そして分厚い本。
    数ページ読んだところで挫折しそうになりました。

    ただ登場人物がことごとく魅力的なので、そこにハマれば分厚さなんて感じないでしょう。
    私は京極堂が語り出したところから京極堂ファンになり、一気に読めました。

    まぁあの語りが好きかどうかは好みがわかれるでしょう。

  • 20ヶ月身籠り続ける女の夫が密室から失踪する謎に古本屋で陰陽師の京極堂が挑む。
    妖怪物と思って読むと結末に裏切られた気持ちになるのでご用心。
    人間の記憶のからくり問答が延々と続く前半。これが理解できないほどに難しくなく考えることを放棄したくならないバランスで興味深く読み進んだ。
    終戦後の日本の暗いけど何故だか心地よい雰囲気が好き。関口の謎めいた数々の回想の描写も怖いけど魅力的な世界である。
    ただこれだけ妙な条件が揃えば心霊的なものと思い込んでしまうよなぁ…というラストは好みが分かれそう。特に失踪した夫が見つからなかった理由に共感できる人は少ないと思う。

    初体験の京極本。暗くて古くて、だけど不思議と居心地がよくて脳内ドーパミンが分泌されまくる古書店にいるような味わいでした。

  •  ようやく読み終わりました。
     かなり長い時間がかかってしまったので、疲れた。
     というか、見た目でわかると思うんですが、相当に分厚いです。
     つまり、長いです。

     まず、事件が起こるまでが長いです。相当に長い。
    「姑獲鳥」とは何だと京極堂が語っている時点で他の本だったら確実に一冊が終わる。
     そして、一冊終わった辺りでようやく探偵と依頼人が現れる。
     現れたところで、ようやく話が始まるけれど、話が入り組みすぎて、とにもかくにも事件の全容がまずわからない。
     わからないのに、探偵さんは事件がわかった挙句に逃げ出してしまう。
    「気持ち悪い」と言って。

     関口くんの視点しか持たない読者は置いてきぼり。
     そのままどんどん関口くんが錯乱し出して、今度は自分の目が信じられなくなるんだけど、そこに再び京極堂が現れて、すべての謎を解き明かす、
     解き明かすのはいいんだけど、何せいちいち話していることが難しいので、半分くらいしか理解できないまま物語が進んで行って「あーうー」。
     おまけに、ヲチが現在の相当なホラーなので、気持ち悪くなってしまう。
     というか、読みながら足元が覚束なくなって、何度かめまいがくらくらしました。

     でも、面白い。
     相当に面白い。

     夏の夜中に、くらくらした上に、眩暈を覚えるようなうすらざむい難解な物語を読みたい人にオススメします。
     時間はたっぷりつぶせます。

  • 面白かった!
    母は強くて、弱くて、だけどどうしたって逃げられない相手

  • 読み終わったときの虚無感といったら…

  • 初京極作品。今まで常識ときていた世界が覆されるような一冊。ある意味蒙を啓く本である。複雑な事件と魅力的な登場人物が素晴らしい。

  • 初めて読んだ京極作品。

    正直、めっちゃ難しい!!と思いました。この人の作品はなれるのに時間がかかるなあというのが素直な感想でした。
    でも、内容自体はすごく面白かったです。

    妖怪って、おくが深い。。。。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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