- Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061819207
感想・レビュー・書評
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以下続刊。
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『砦の上に我らが世界』。深春19歳、京介との出逢い編。
なんだか京介が気になってしまって、今更ながら読み返している。京介は、探偵としては不完全だ。冷淡を装いながら感傷的で、だから最後で詰めが甘い。
それは彼自身が、犯罪や殺人というものに対して断固とした判断を持っていない所為で、その曖昧さ(犯罪を絶対悪と見るか、必要悪と見るか)に、自分自身が主体的に迷い込み、周囲の犯罪の結末を巻き込んでしまっているからだ。
この事件だって、後味が悪いことこの上ない。犯人を断罪するのなら傍観は無意味に長すぎるし、飯村先生の自殺を予期していたならば、犯人を責める権利はない。
けど一方で、京介にとっての蒼と深春の位置づけの違いが、この巻で解った気がする。
蒼は京介にとって、『再生』の憧れだ。自分の投影像。傷つき歪になった蒼が、安定し、解き放たれることが、京介自身の『再生』に繋がると、無意識に縋りついているような。だから、蒼を支えることは、自分自身を支えることになる。
だが一方で、京介は深春に対しては驚くほど無防備な依存を見せる。離れていくことを予期しているし、実際離れても追うことはしないだろうけれど、今はもたれかかっていたいと。後先顧みない、子供じみた依存。
蒼に対しては弱みは見せないし、保護者という優位な立場を決して崩そうとはしないだろうけれど(彼にはそれを装うだけの能力はある)、深春に対しては無頓着で、時折投げやりじみた人間味をさらけ出す。蒼には期待しているけれど、深春には期待していない。
本当の意味で、京介の側に居続けるひとかも、深春は。
ところでそろそろ見えてきたのは、父親、ですかね。だいたい、大財閥の娘さんの旦那に選ばれるくらいだから、それなりの後ろ盾がある気はするんですけど。 -
ミステリーとしてもしっかりしている、京介と深春の出会いの話。
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19歳の冬。「輝額荘」という木造下宿で深春と京介が出会った直後、裏庭で発見された住人の死体。内部犯の仕業なのか、皆の「砦」に暗い翳がしのびよる。京介も捜査に駆り出されて、事態は急展開する!
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深春の潔さに惚れ惚れする。
少し愚鈍で、でも他人の内面を思い描いてやれる、こういう地に足のついた人間が、京介には必要だろう。
見た目がむさ苦しくとも、深春は良い男であり、その存在はシリーズ中の隠れたオアシス。 -
ずいぶん前に読んだ本。
過去の話。今回の物語を見る役は深春ちゃん。
かれが京介と出会ったのは、格安の木造下宿「輝額荘」だった。
いい雰囲気で学生生活を過ごしていた中、悲しい事件が… -
京介と深春の出会い物語で、「苦い青春の一ページ」物語、といった感。案外と犯人はあっさり分かっちゃうなあ。トリック?はまあまあだけど。シリーズものの一作としてはともかく、どうも印象が薄めかという気も。あ、そういえばこの時代背景にはこれがあったのか!
個人的には、「二十年前の事件の真相」が私の大好きな某作品を彷彿とさせることもあって、かなりお気に入りかも。こういう過去のトラウマどろどろ暗めの悲惨な話が好き、という歪んだ趣味を持っております(笑)。
あと、建築の方の話としては、密かに「翡翠の城」と繋がってたり。……深春同様?忘れてたけどね。 -
再読。所どころ覚えていましたが、しっかり楽しませて頂きました。深春サイドからの話の作り。京介との出逢い、家族とは?がテーマ。
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2004年4月18日読了。
京介と深春の出会いの話。
京介…(何が言いたい)。