- Amazon.co.jp ・本 (830ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061819320
作品紹介・あらすじ
「私の情夫だから」、これは男にとって女に言われる最上の言葉だが、大概の男は、一生に一度もこの台詞を聞くことは無い。何故なら、この台詞を吐き出す女こそ、性悪な女だからだ。そして性悪女の美しさを、大概の人は知らない。彼女達が、どれほど恠しい女なのか。この作品は、それを教えてくれる。-『絡新婦の理』には、主題はあるがメロディーはない。登場人物は、全てパートであり、それらが実に巧みにアンサンブルしている。
感想・レビュー・書評
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百鬼夜行シリーズの中では一番好きです。
すっごいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
上手いタイトルだよなぁ、と思いました。
蜘蛛の巣というのは、縦糸が中心から放射線状に広がっているのに対し、横糸は一本だけで、渦巻き状になっているそうです。
で、この物語では、刑事の木場修がその蜘蛛の巣の横糸を辿るように、少しずつ真相に迫っていきます。
と、ここからちょっと面倒くさい話になります。
後で気づいたんですが、作者の作品の構造自体が基本的にコレなんですよね。
そして、この作り方に似ているのが、『モンスター』や『20世紀少年』での浦沢直樹さんだったりします。
これ、又聞きで申し訳ないんですが、以前、島本和彦さんが浦沢直樹さんのマンガを分析したことがあるそうで、そこで以下のようなことを話されていたそうです。
普通のマンガというのは、一つの話がだんだん盛り上がり、クライマックスを迎えるとクールダウンします。一度リセットされて、また次盛り上げていかなければならない。グラフで言うと、横軸を物語の進行、縦軸を盛り上がりと取ると、ちょうど富士山のような形になるわけです。二次曲線で盛り上がって、クライマックスからまた二次曲線で下がるわけです。
このオーソドックスなやり方の欠点は、一度クールダウンしてまた新たに盛り上げなければいけないので、どうしても「下がる」ときが発生してしまいます。
しかし、浦沢さんの話の組み立て方は違います。浦沢さんは、例えばA・B・C3つの話があるとすると、まずAを描き始めます。そして、ある程度の所まで来たら(便宜上、1から3くらいまで盛り上がってきたとします)、そこでいきなりAの話をぶつんと切っちゃいます。で、今度はBという話を始める。これがまた3くらいまで盛り上がってきたら、突然ぶった切って、今度はCを1から始める。で、Cが3くらいまで来たら、今度はAの話を2か2.5くらいから再び始めるわけです。
こうやって3つの話を交互に繰り返しながら少しずつ進めていく中で、一つの大きな物語を浮き彫りにしていくわけです。
このやり方の上手いところは、A・B・Cを回すことで、全てが盛り上がり続けており、クールダウンする瞬間がないのです。つまり、ずっと盛り上がっているように見せることができる。
…と、ここまでが伝聞です(ちょっと私の整理も入ってるかもしれません)。
京極堂シリーズの話も3つか4つくらいの話がコロコロ入れ替わりますよね。構造としては浦沢作品と同じなんだと思います。それこそ、複数の話を先に書いておいてそれらをそれぞれ4つのブロックに切り分け、A1・B1・C1・A2・B2・C2…と配列し直しているかのようです。
このやり方って、また比喩的になりますが、デッサンの線を引くようなモノのだと思います。鉛筆の線を何本も重ねて描いていく中で輪郭を見せていくように、複数の短い線のような物語の断片を重ねることで、一つの大きな物語を見せていくわけです。
だけど、このやり方には欠点もあります。どうしても反復が多くなってダレやすくなるのと、途中で何となくオチが見えてくるのです。
正直に言いまして、本作くらいから京極堂シリーズの話は繰り返しがくどく感じられるようになってきました。同じ事を延々と読まされ、読んでいて「もうちょっと編集がハサミ入れてまとめろよ」と思うことがありました。
(ちなみに、浦沢さんの『モンスター』や『20世紀少年』も途中からそういう印象を受けました。何というか、もったいつけられているというか、引き延ばしをされているみたいに感じちゃうんです)
話としては面白いんですが、それ以上に冗長を感じるようになってきて、その冗長が構造と密接に関わってるのかな? と思った作品です。
何だかオススメしにくくなっちゃいましたが、話は十分面白かったです。 -
今回の百鬼夜行シリーズ、絡新婦の理は四人の美女を中心に据え、二つのストーリーが交錯する。
前作までとの違いは、冒頭がエピローグとなっており読み終わった後に最初の冒頭を読み返さないと気が済まなくなる。
いくつか考察しないと理解が難しい箇所もあり、その点もあいまって面白い作品となっている。
ただし、読了後は悲しさも出る作品でもあり哀愁感を漂わせることは必至。
尚、この作品を読んでシリーズ性を垣間見たが、今回は1作目もある程度リンクしてくる。内容を忘れないようにするのが難しい(笑) -
百鬼夜行シリーズ5作目。
分厚かった~~~!2つの事件が少しずつリンクしていて、とにかくややこしい。そしてその上にさらに黒幕が…!となると完全に脳のキャパを超えました。ひとつひとつの事件は一応理解したつもりだけど、全体図を見るとこんがらがってきて、黒幕の犯行動機や仕組んだ筋書きと各事件とがどうリンクしてそうなったのか、という整理が自分の中でつけられず、ぐちゃぐちゃと複雑に絡み合った事件の表面をすいーっと撫でた程度しか理解が及ばなかった。これは要再読。京極読んだ後は毎回言ってるけど要再読。
今回はいつにもまして前作までの事件の登場人物が複数絡んできて、碧を見てなんとなく魍魎のあの子のことを思い出してたら名前が出てきてちょっと嬉しかった。一通りノベルス版で読んだら今度は分冊で読んでみようかな。
エピローグからプロローグに戻る部分の情景が美しくて印象的でした。 -
今回は、最初の中禅寺と犯人のやり取りを、主要人物が出揃ったところで消去法で振り返ると、その時点で真犯人が分かってしまう。ただ犯人が分かっていても事件の真相は分からない。どんどん死んでいくし、憑き物落としの時には意外な事実が明らかになる。黒魔術、少女売春、慰安婦問題など女性に纏わる話題が多く取り上げられている。女の敵は女、という言葉を思い出すが、実行犯は意外な・・・。文句無しに面白いけど、長いです。
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エピローグまで読んだ後、プロローグに戻ったとき・・・鳥肌が立ちました。忘れられない1冊です。
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すごい!これは本当にすごい!!!
最高傑作です。
すごくおすすめですが、シリーズ最初から読んでこその面白さもあるので、シリーズの最初から是非読んでほしい!
今回の京極のウンチクは非常に興味深かった。事実なのだろうか?? -
今回は、まぁ見事です。
☆5のレビューは久しぶりですわ。
眼潰し魔無差別殺人事件
女子学園黒魔術事件
貴族の館事件
その全てが、別の糸から始まりながら、
少しずつ繋がりを見せつつ、
さらに女性解放運動やら色々な事件がさらなる絡まりを見せ、
最後には蜘蛛の巣の中心「蜘蛛」へと向かって行きます。
「あなたが蜘蛛だったのですね」
へ向かう物語の結末は見事としか例えようが無い。
今までの登場人物がわんさか出てくるわ、新キャラが多いわが、一番の難点で、
正直名前をあまり覚えられない私からすると、登場人物表が欲しいです。
そこは、自分で登場人物をメモして栞がわりにでも使って下さい。
ラストへ向かうくだりは秀逸ですが、
それ故に、最後の解説がいらなくなります。
全部答えは途中に書いてあるから。
この意味は読んで確かめて欲しいのですが。
本気で二周目を読みたくなりますが、
長いのでやっぱり読まない。
京極堂シリーズの中でも人気があるのが分かる作品です。
著者プロフィール
京極夏彦の作品





