詩的私的ジャック (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061819412

作品紹介・あらすじ

那古野市内の大学施設で女子大生が立て続けに殺害された。犯行現場はすべて密室。そのうえ、被害者の肌には意味不明の傷痕が残されていた。捜査線上に上がったのはN大学工学部助教授、犀川創平が担任する学生だった。彼の作る曲の歌詞と事件が奇妙に類似していたのだ。犯人はなぜ傷痕を残し、密室に異様に拘るのか?理系女子大生、西之園萌絵が論理的思考で謎に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • "格好をつけるのが嫌いだ、という人間は、
    格好をつけないことが、格好の良いことだと思っていて、
    つまり、格好をつけている。"

  • 私的詩的ジャック
    森博嗣S&Mシリーズ4作目。
    相変わらずわたしは謎は解けず。
    殺人事件が解決しそうなのにまだまだページ数があって不思議だったが納得の展開だった。
    前回よりロマンチックな感じもあって微笑んでしまった。萌絵ちゃん素直で可愛い。

  • S&Mシリーズ。
    この題名好き。勢いがあって良い。

    密室殺人がこれでもかというほど立て続けに起こるのに、
    全然それを重要視してなくて、さらっと解かれてしまう。
    重要なのは
    「なぜそんなことをしたのか」ということのみ。

    萌絵ちゃんと犀川先生の心情描写がいい。
    特に
    『「寂しい」という感情は、何故か「寒い」という体感に似ている。人間の精神防衛システムは、メンタルな障害をわかりやすく、フィジカルに表現しようとするものだ。』
    この部分が好き。
    あと、
    『相手の思考を楽観的に期待している状況・・・、これを甘えている、というんだ。いいかい、気持ちなんて伝わらない。伝えたいものは、言葉でいいなさい。それが、どんなに難しくても、それ以外に方法はない』
    って先生が萌絵ちゃんに言うところ。
    理系のミステリーといわれているけど、こういう部分はものすごく心理的。
    そしてそのまま勢いあまってプロポーズする萌絵ちゃんもいいw

    ミステリーじゃない部分がとてもおもしろかった。
    人間て、難しいね。

  • 今回は萌絵が奮闘する回。犀川は基本現場にいないし(もはや中国行ってたり。)、いつも以上に事件に興味はなさそう。
    だからといって萌絵が頑張って推理する......と行きたいところだけども萌絵の頭の中は実は犀川でいっぱい(笑)
    大好きなんだなぁ、と。現実にいたら萌絵は厄介ものでしかなさそうなものだけども応援してしまう。犀川先生も若干(?)萌絵への接し方も変わってて、ミステリでありつつも、普段とは違う味を楽しめた気がします。
    そして犀川先生の脳内描写が多かった(気がする)。 とても癒されました。
    もちろん、連続殺人はいつも通り奥が深くてページをめくる手が止まらず。寝不足です(笑)

  • “すべてはFになる”から始まるS&M(犀川助教授&萌絵)シリーズ第4作目。

    犀川先生の論理的な思考と、萌絵の図々しいお嬢様らしさを楽しむことができれば
    このシリーズを堪能できると思う。思うのだけど、個人的には萌絵が嫌いで仕方がない。

    それでもついつい読んでしまうのは、やっぱり森博嗣の作品がおもしろいからなんだろうなぁ。


    犯人探しは容易だからそれが主題ではない。
    そして犯人の動機がまたまた理系(といったら失礼かな)で、
    他人を許容することができない個人の心理を、あくまでもひとつのピースとしてトリックを暴く犀川先生の淡白な反応が更に理系。

    犯人の特定や動機を解明することがミステリーの全てではないだなんて、やはり今までにないミステリー作品なんでしょうね。

  • S&Mシリーズ4作目。再読。
    トリックだけでなく、キャラや会話や思考が好き。

  • メモ:動機と犯罪の構造が、「冷密」と対の関係になっているような気がした。
    犯人の動機は説明して分かってもらえるものなら初めから殺さない、という言葉に、ホワイダニット型のミステリに対するちくりとした批判精神を感じた。

    • kakapo1233さん
      あをだまさん、こんにちは。「犯人の動機は説明して分かってもらえるものなら初めから殺さない」確かに、常人?には、捕まるという危険を冒してまで、...
      あをだまさん、こんにちは。「犯人の動機は説明して分かってもらえるものなら初めから殺さない」確かに、常人?には、捕まるという危険を冒してまで、殺人を犯す人の気持ちは理解できないですよね。
      2016/01/04
  • 本作は推理を楽しむというよりは人間描写を楽しみました。
    あとは犀川先生と萌絵のやりとりが良い!
    犀川先生の哲学にも考えさせられることが多いし。

    人間の純粋さはベクトルによってこうも違うものか、と感じました。

  • 何もかもが格好いい一冊。まず今作で特に魅力的なのは、人間の心の推移や変化、感情など人間の内的な部分を、非常に理系的な視点から描いているところ。自己分析の場面が多く、その人間の価値観を基に自己を論理的に定義しようと努める場面や、人間の(もしくは自ら)の心情や思考、感情や感受の仕方に対して、理由や根拠を常に考察しようとする場面が多い。自分にはない発想や、逆にあてはまると思える心理的な考察が登場人物各々なりに整頓されて明確に描かれているため、読んでいて息を呑むフレーズばかりだった。特に今回は、萌絵が20歳前後ならではの悩みや、アイデンティティがモラトリアムにぶつかる場面がリアルに描かれており、天才の多い作品の中で人間味や心の奥深さを味わえる。犀川先生との関係も見どころ。いつの間にか家に行く関係になっていて驚いた。
    トリックも面白い。ダイナミックな装置やあまりに専門的な分野に踏み込んだ前作たちとは異なり、今回は工学部に属する彼らにぴったりの「工学」らしい事件だったので、もちろん分からない知識はたくさんあったが、それでも萌絵の視点に立ってリアルに感じながら楽しんで読み進められる。表面は意味不明なのに蓋を開けてみれば単純、といった推理が本当に面白いし、犯人の動機もわたしは個人的に好きだった。言葉の使い方、表現方法、登場人物たちの独特な個性。すべてが素敵。
    「英語で言える?」はもう秀逸。

  • ストーリーというか事件は退屈。ちょっと中弛みか。その代わり、萌絵ちゃんと犀川先生の関係性の進化?を楽しむ4作目だったかな。共感を期待して泣いてしまった乙女に「甘えてる」とズバンと指摘しちゃう先生、笑える。

    大人になったね、と、堕落した自分、という犀川先生の言葉に納得する。2人ともFと比べると変わったよなあ。なんとなく。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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