美濃牛 (講談社ノベルス シL- 2)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (542ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061821231

感想・レビュー・書評

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  • 「ハサミ男」作者の2冊目。
    ・・・正直長かった。タイトルからは内容が一切計れず。
    かなり読み進めたところで事件が起きて犯人探しはせずに読み進めたけど、意外な顛末でなるほどと思った。もっとこの作家の小説を読んでみよう。
    125冊目読了。

  • 病を癒す力を持つ「奇跡の泉」があるという亀恩洞(きおんどう)は、別名を〈鬼隠れの穴〉といい、高賀童子(こうがどうじ)という牛鬼が棲むと伝えられていた。運命の夜、その鍾乳洞前で発見された無惨な遺体は、やがて起こる惨劇の始まりに過ぎなかった。古今東西の物語の意匠と作家へのオマージュが散りばめられた、精密で豊潤な傑作推理小説。

    横溝正史オマージュらしい(未読申し訳ありません
    ノベルスP527。膨大な薀蓄が無ければ半分で済みますね…

    土俗的な舞台にリゾート開発を盛り込み、閉ざされた村や古めかしい要素に、現代が押し寄せてくるというなんとも変わった背景。
    探偵ではなく、取材に来たライターの天瀬を主人公に置くことで、村の紹介が呑気に延々続く。突如首切りが現れたことで、次々と殺人がはじまるのだが、探偵が軽い笑。そして警察も割と無能なのがまた今作のページ数に関係するのでは…

    真相とその動機には震えあがる。
    ミスリードの大胆さ。緻密さ。作者と犯人ようやりますな…

    窓音という無表情JKがいたり、出羽と村長のラブコメあり。わらべ唄。俳句会。牛牛牛。事件の外の日常、キャラクターがツボだった。文章が読み易いというのは作者の才能である(何度も言うが長いけどね…

    『美濃牛』の存在について
    シャカミスの課題本で話題となりましたが、私の見解より、より深く先がみえていた皆さんのおかげで、正しい解釈に近づけたように思います。感謝。

    エピローグの後、プロローグを読み返そうね…

  • 名探偵石動戯作が初登場する一冊。

    横溝的山村で金田一的名探偵が活躍しています。「八墓村」とか「悪魔の手毬歌」「獄門島」辺りが好きな人なら楽しめるかと。
    石動さんのとぼけたキャラクターもいい感じです。

    しかしまさか「黒い仏」であんな展開になるとは、この頃は予想もしていなかったのであった。


    読了日:10/01

  • 初期、結構まともかも。

  • 京極路線を試したのか、キャラに魅力出して欲しい

  • 全体的にはまとまっていても少し不明なところがあり消化不良感…石動さんは好きです、まさかメインキャラとは

  • ※2005/4/24のblogより転載

     とある山奥に佇む暮枝村。村の名士である羅堂家の人間が連続殺人に巻き込まれていく。
     村の行方を左右するリゾート開発、医学の常識を超えた神秘の泉、生粋の村民と、外部からの新たなる居住者と進入者が織り成す小さな村での人間模様。
     様々な思惑が交差する中、犯人は一体誰なのか!?

     デビュー作「ハサミ男」が鮮烈だっただけに、期待が大き過ぎたからか、衝撃感は少なめも、内容的にはまさに正統派。
     設定を始め、時代背景こそ違うけれども横溝正史先生を思わせる構成は、新本格派ならぬ本格派のテイスト満載で、読み応えは十分。斬新なトリックや意外性は高くありませんが、下手に手の込んだトリック作品の数倍は面白いと思います。

  • ちょっと期待値が高かったかな…

    岐阜の暮枝村の地主羅堂家の土地にある鍾乳洞の中の泉に病を治すとの噂が立ち、ゼネコンがリゾート化を計画する。泉の取材を依頼されたフリーライター天瀬とカメラマン町田は、羅堂家の説得にあたる石動戯作とともに暮枝村に入る。
    鍾乳洞は羅堂家長男真一の手で塞がれ、なかなか取材がはかどらない中で、真一の息子哲史の死体が発見され、それから羅堂家の人間が次々に殺される。

    「美濃牛」というタイトルは秀逸。
    岐阜での飛騨と美濃の確執がもう少し出てくるかと思ったけど、そういう話ではなかった。

    作者のデビュー後第一作にして石動戯作シリーズの最初の作品なわけだけど、イマイチ石動に好感が持てなかった。
    デビュー作『ハサミ男』とは雰囲気の異なる作品で、同じ作者とは思えないほどだった。

    庶子の復讐を主軸に、恋愛沙汰やら自殺やら強盗犯の逃走やら末期的癌患者の奇跡やらが絡んできて、ストーリーが厚みを増している。
    でも逆にいうと各要素が薄らいで、最後の方では牛イメージが吹き飛んでしまった。
    真相は読ませるものだったけど、きっかけを与えたからってそんなに簡単に身内を殺すかなぁ。
    窓音の真意も最後までよく分からないし、天瀬が(確かにトラウマ経験はしたけど)どうしてこんなに怯えるのかもよく分からなかった。
    窓音にとって天瀬は、恋心に漬け込んだ後見人としての役割でしかないって解釈で合ってるかな。
    読み込みが足りないのかしら。

    一章ごとの構成がすごく細切れになってて、せっかく乗ってきても勢いが途切れちゃう感じが勿体なかった。そのせいで集中して読めなかった気がする。
    残念。
    句会は面白かった。
    あまり本筋には関係なかったけど、藍下に向けられた出羽の一方的な幼馴染み的友情が良かった。


    解説読んだら、横溝正史オマージュみたいな作品に仕上がってるとのことだったので、横溝正史読んでたらもっと楽しめたのかも。




    非常に個人的な見解で恐縮だけど、私は右利きだけどベルトはバックルが右を向くように締めてるので、あのベルトの下りは納得が行かないです(笑)。

  • 石動戯作シリーズ一作目。殊能作品はやはり非常に読みやすい。文庫換算750ページほどの大作でも1日で読めるほど。内容は横溝オマージュであるが未読でも問題ない。小さな驚きを小出しにしていきながら最後には全てが逆説的に繋がっていくストーリーの綿密さは壮観。牛に関する引用や石動の蘊蓄は面白く、時に深い考察の余地を残す。冒頭で早々に明かされる犯人と結末は、長い物語の中でどうそこに繋がるかを推理させ、同時に強力なミスリードに誘い込む。古典をアップデートする逆説の村の殺人事件。作者特有のユーモアも安定して面白い。

  • 厚さのわりに余白と蘊蓄が多く、また文章も簡単なのでとても読みやすい。このシリーズはわりと何でもありで、SFのようなものから賛否両論あるものまで様々と聞いていたが、本作は至ってまじめなミステリーという感じだった。叙述トリックや意外性だけに頼らない内容も好感度が高かった。登場人物も、皆とても魅力的に感じられた。
    私はベタ好きなので、当たりだった。

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著者プロフィール

1964年、福井県生まれ。名古屋大学理学部中退。1999年、『ハサミ男』で第13回メフィスト賞を受賞しデビュー。著書に『美濃牛』『黒い仏』『鏡の中は日曜日』『キマイラの新しい城』(いずれも講談社文庫)がある。 2013年2月、逝去。

「2022年 『殊能将之 未発表短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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