- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061821491
作品紹介・あらすじ
十二世紀の中東。聖者たちの伝記録編纂を志す作家・ファリードは、取材のため、アリーと名乗る男を訪ねる。男が語ったのは、姿を顕わさぬ導師と四人の修行者たちだけが住まう山の、閉ざされた穹廬の中で起きた殺人だった。未だかつて誰も目にしたことのない鮮麗な本格世界を展開する。第十七回メフィスト賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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これは「読む巡礼」だったのだと、読後に思わされるような一冊。
きっと果てしない修行の日々がずっと変わりなく続くのだろう……と思ってしまいそうな土色と薄白色の世界に、投げ込まれるように殺人事件が提示されたコントラストがほんと鮮烈で。
すごいものを読んでしまった……って余韻がずっと残ってます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
イスラム世界を舞台にしたミステリ。
何がなんだか訳がなからなかったけれど、読み終えたときにとんでもないものを読んだ!という驚嘆だけが残った。 -
この本を読んでいる間、あなたはスーフィーである。
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イスラム教の話かぁ……訳わからんけど、取りあえず読んでみるか。
くらいの感じで読み進めていくと、止まらなくなった。
結局、ミステリっぽくなってきて、でも最後はやっぱりイスラム教のテーマを貫いていて。
なんだか、凄い本を読んでしまった気がする。
面白かった。 -
イスラム教の殺人ミステリとか普通無いから新鮮だった。
表紙とか凝ってる。 -
12世紀の中東、イスラム世界を舞台に展開する、宗教的・観念的なやり取りがなんとも神秘的です。一応閉ざされた山での殺人というミステリーはありますが、イスラムの宗教問答がメインで、独自の世界を創り出しています。ひじょうに個性的な作品で、一読の価値ありです。
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穹廬内の密室は謎解きに必要な要素を提示していますが、一部状況を後付けしていることもあり、推理するにはやや不親切かなと思います。
ただ、メインはそこではなく終盤にあります。怒濤の追い込みと意外な形で収束するラストは圧巻です。一読の価値は十分にあると思います。
個人的にイスラムに関する蘊蓄や補足が足りないと思いました。日本人には馴染みがないですし、動機に絡む要素でもあるのでもっと詳しく書き込んで欲しかったです。 -
「もはや気づいていることだろうが、おまえの言葉は言葉ばかりなのだ。おまえはすべての言葉と教説を背負って、虚無の淵に堕ちてゆくつもりか。言葉とは眼前の蠟燭のようなもの。意味という炎を燈し、傲慢にも世界を照らそうとするが、所詮は玄穹の星芒。真実の光のまえでは、偽りの光にすぎぬ。表層の意味にたよるな。意味はすぐに剥落する。よいか、ものが意味を喪うのではない、意味がものから剥落するのだ。ちょうど、下手な騎士が馬から落ちるようにな。言葉とは、騎士を失った空しい馬にすぎぬ。」あまりに宗教的過ぎるが、面白い。だからこそ面白いと言うべきか。
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なかなか手を出せなかった積ん読本。第十七回メフィスト賞受賞作。
まぁ、内容がね、イスラム教関係だし。宗教色満載だし。
はじめをちょっと読んで、なかなか続きを読む気になれなかったけど。
ところがどっこい(古)結構面白かったんだ、これ。
登場人物の宗教観に関する薀蓄は辛かったが。
推理に関しては特に妙な部分も見つからず。むしろ理に適ってて、良。
ラストのオチも非常に好みだ。気付いたときに「ああ」と思わず声を上げてしまう、そんなオチ。
「――言葉とは、騎士を失った空しい馬にすぎぬ」
偶像崇拝を厭うイスラム教。「言葉」も突き詰めれば偶像の一つである。
……これってネタバレ?
03.12.22 -
面白かった