フリッカー式鏡公彦にうってつけの殺人 (講談社ノベルス サK- 1)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061821965

作品紹介・あらすじ

妹が死んだ。自殺だった、と僕のイカれた家族は云うが。そして現れた男。手にはビデオ。内容は妹のレイプ中継。渡されたのはレイプ魔どもの愛娘達の克明すぎる行動表。こうされちゃあ、する事は一つ。これが自然な思考だね。そして僕は、少女達の捕獲を開始した。その果てに…、こんな馬鹿げた世界が用意されているなんて知りもせず。

感想・レビュー・書評

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  • 登場人物の伏線などからの行動理由は分かりやすいがどこか歯車が合わないような狂い方をしているので独特な展開となっていて面白かった。

  • 登場人物も精神破綻者ばかりだが、話の筋もぶっ飛んでいたので、普通の話や推理が好きな年配の方には厳しいのかも?私はうまく「終わり」ってなってないような気がするのが嫌だけど、それなりに楽しんで読みました。これを書いたのが19歳の時っていうのが一番ビックリした。
    レイプ、殺人、監禁、暴力てんこもりなので、中学生にも少し早いかな。

  • 超展開にただただ打ち震えます

  • 【感想】
    楽しく読み進められた。
    終盤は呑み込めない情報が多く、???だった。
    読み終わってみればメフィスト賞らしい小説だった。
    オタク作品の引用はちょっと寒かった。

    読み進める推進力になったのは以下の点
    ・公彦が何をしでかすか分からないドキドキ感。
    ・明日美と切り裂きジャックの関係性の謎(こっちが二重人格だと思ってた)。
    ・2軸(公彦、明日美)がどう重なるのかという期待。
    ・綾子の無双感

    【公彦の欲求が不明瞭なことについて】
     一般的に、主人公の欲求(欲している物事、具体的なゴール)は物語の推進力になる。例えば、エレンは巨人を駆逐したいと思うから、特定の方向に動き出し、自身のゴールにたどり着くために様々な行動をとる。だから、読者は物語に興味を持つようになる。
     本作品は公彦の欲求が不明瞭だ。復讐のため女学生を拉致監禁するものの、何をしたいのかが分からない。これは、通常、致命的な欠点になり得る。しかし、あえて不明瞭にすることで、壊れた人間としての公彦が際立ち、犯人としての危うさも出てくる。失った推進力は、不明慮な欲求を謎として読者に提示すること、ミステリーの主人公らしい明日美の軸を挿入することで補っている。しかも、提示した謎は、”佐奈を殺していたのは公彦”という落ちにしっかり効いている。

    【公彦の本当の欲求とは】
     終盤で公彦が、佐奈を殺して犯していたことが明かされる。これにより、公彦は深層意識で、佐奈を犯した男達と、自分が同族であることを知っていたことになる。だからこそ、学生を拉致しても、犯さないことで自分の正常性を証明したかったのではないか。

    【明日美の軸について】
    基本行動:切り裂きジャックの追跡。
    欲求:冬子のかたき討ちをしたい。
    弱点:特になし
     明日美の行動、切り裂きジャックの正体、答院の思惑、件の謎、やはりミステリー小説としての本軸はこちらだろう。公彦の軸は、交わっているというよりは、明日美の軸から派生していた物語でしかなかったイメージだ。作品内でも言及されていたが、公彦は駒として扱われ、この物語の主役としては相応しくなかった。
     ただ、明日美は物語を通して、キャラクターにふり幅があるわけではないので、魅力的な人物とはいえない。謎が最後に種明かしされるだけで、当事者の価値観が変化するわけではない、よくあるミステリー小説の構造になっている。

    【タイトルについて】
    “フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人”はどれを指しているのだろうか。候補は以下の通り。
    1.佐奈を殺して犯した殺人
    2.藤堂を殺した殺人
    3.女学生を3人を拉致監禁計画の総称(殺人ではないがミスリードとして)
    4.公彦が藤堂に殺された殺人
    5.1-4全て

    フリッカー式(二重人格)で行われた殺人は1のみ(厳密に言えば4も二重人格が関わっているが・・・)。順当に1が本命になるだろう。
    ここで、うってつけというくらいだから、公彦らしさについて考えてみる。
    ・処女厨
    ・衝動的に殺してしまう無計画さ
    ・自身の壊れている部分を隠して、正義面している恥知らずさ
    ・駒として扱われ、主人公になれない惨めさ

    羅列してみると、この作品での道化っぷり、レイプ集団に対しての処女廚など、どの殺人にも当てはまりそうに思える。よって、1つの殺人ではなく、全ての犯行の総称とする5のほうが、しっくりくる。

    【佐奈が公彦の子供を身ごもっていることについて】
     これは設定が雑だから色々な可能性があるが、公彦は藤堂を殺そうとして失敗している詰めの甘さがある。佐奈も殺し損ねており、怪我したパーツだけ取り替え、本体は生き残っていたのではないだろうか。

    【総評】
    次回作は後回し。

  • 主人公の1人称が良い。特にこれといった説明もなくされる文学作品の引用や、あまりしっくり来ない比喩、さらにかなり省略され抽象化された論理が主人公の1人称を構成している。理解を求めていない一人称が、却ってその暴走寸前の観念を表しているように感じられた。
    レイプ、自殺、二重人格、連続殺人鬼、クローン、件と言葉を選ばなければ通俗的な衝撃展開がぽいぽい投げ込まれて出来上がっている小説なんだけど、底の方にエネルギーのほとばしりが確かに認められる、認めざるをえない、そんな小説。

  • 「何者かになりたいと焦る若い人にススメたいです。」

  • 2004/12/04:講談社ノベルス
    2021/12/20:星海社FICTIONS(復刊)

  • 合理性、論理的に辻褄が合っていないとキツイ人にはお勧めできない作品かなと思う。が、ワシには面白かった。
    自己を自己と認識する範囲について思索させるような内容。ある種哲学的な方向というか、その雰囲気がある。

  • 【199】

  • 妹が死んだ。自殺だった、と僕のイカれた家族は云うが。そして現れた男。手にはビデオ。内容は妹のレイプ中継。渡されたのはレイプ魔どもの愛娘達の克明すぎる行動表。こうされちゃあ、する事は一つ。これが自然な思考だね。そして僕は、少女達の捕獲を開始した。その果てに…、こんな馬鹿げた世界が用意されているなんて知りもせず。

    面白いんですが、誰もが狂ってる。
    突き刺しジャックの動機が秀逸。
    エピローグは続きが気になる。

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著者プロフィール

1952年北海道釧路市生まれ。
1974年に北海道教育大学札幌分校特設美術課程卒業(美学・美術史専攻)。1976年に北海道教育庁北海道新美術館建設準備室の学芸員、翌年には北海道立近代美術館学芸員となる。1985年北海道立旭川美術館学芸課長。1990年からは北海道立近代美術館に戻り、2004年同館学芸副館長。2012年から2022年まで札幌芸術の森美術館館長を務める。この間、それぞれの美術館で数多くの北海道ゆかりの作家の個展や現代美術展を企画開催。
現在、AICA国際美術評論家連盟会員、北海道芸術学会会員、北海道美術館学芸員研究協議会会員。また旭川市中原悌二郎賞、札幌市本郷新記念札幌彫刻賞、ニセコ町有島武郎青少年公募絵画展、北海道陶芸展などの審査員を務める。

「2023年 『北の美術の箱舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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