鏡の中は日曜日 (講談社ノベルス)

  • 講談社 (2001年12月1日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784061822221

感想・レビュー・書評

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  • 読みたかった本。14年前に奇妙な館で起きた殺人事件の再調査。禍々しいものを想像しどんなトリックを仕掛けてくるかと身構えた。が着地点が予想と全く違う!肩透かし感無いわけじゃないが本物の名探偵がかっこよかったのでまぁいいか。

  • 第1章は読みにくかった。太字の文字が私を悩ませた。
    こんな風に書いていると言う事は何かあるぞ。
    多分「ぼく」はこの人だろう・・・などと考えながら読んでいって、あれ違った?
    では「ぼく」はやはりあの人でいいの?じゃ、あの人は?どこへ行ったの?
    あの人も、あの人もどこへ行ったの?
    梵貝荘事件の犯人は?新事件の犯人は?
    第2章はなかなかページが進まなかった。フランス語や詩の薀蓄が多かったからか。
    そして第3章はもうノンストップでした。「ぼく」は幸せだな。

  • 最後に一気に明かされる伏線回収に興奮。物語は不思議な不気味な世界観に繰り広げられ、没頭してさまよえる読書体験が楽しかった。またこの前読んだ『ハサミ男』も然り、先入観にやられる!

    物語は、ミステリー作家が書いた水城探偵シリーズ<名探偵の最後の事件>の真実が異なるという問い設定から始まる謎解き。
    第1章では、突然始まる謎の人物の心情描写と、その人に関わる謎の人物たちとの情景描写。なぜこの喋り方なのか、どんな関係なのか、何歳なのか、そして誰なのか、最後までモヤモヤしながら騙され続けた。
    第2章では、過去(みずき探偵シリーズの本文)と現在(真実解明へ向けた調査)を行き来しながら、新しい視点をさらに得ていく。小説の登場人物との接触により明らかになっていく人物像(見た目や性格、喋り方など)には、先入観があることに気づかされる。
    第3章では、一気に明かされる真実、伏線回収。ホームズシリーズ<最後の事件>対する新解釈があったりとワクワクさせられた。探偵の探偵への恋はちょっと微妙だった笑

  • 構成からして何かあるぞと思わせる。真相はふざけるなと思う人もいるようだけれど、メタミステリーというか本格ミステリーに対するパロディの要素があるので私は楽しめた。荒唐無稽だからとか、人物を描けてないとか、動機がおかしいとか、そんなことは昔から推理小説が言われてきたこと。それをあえてやっているのがなかなか小憎らしい。
    いくつかのトリックを組み合わせ、テクニックを駆使してちゃんと最後までもっていく。元々ミステリーを味わう時に推理せずにそのまま読んだり観たりするので素直に感心した。

  • 『ハサミ男』でまんまと騙されていたので今回は騙されないぞ!と気をつけて読んでいたのだけどやっぱり騙された。だってあんた初めの方で逝っちゃったじゃないですか。いやでも間違った記述はしてないし事実関係に無理は無いのか……。「詩」が象徴的に登場したり、その作法について語られたりする部分は、一人称で語る人物が持つ不透明な現実との境界線をあいまいにする効果があるようで、「いま読んでるこの文章っていったい何?」という疑心がわき起こりこれまた作者の思うつぼ。殊能さんのミステリ好きだ〜。

  • かくて閉幕――名探偵、最後の事件!
    歪(いびつ)な館、梵貝荘(ばんばいそう)の惨劇。名探偵の死にざま。

    鎌倉に建つ梵貝荘は法螺(ほら)貝を意味する歪な館。主は魔王と呼ばれる異端の仏文学者。一家の死が刻印された不穏な舞台で、深夜に招待客の弁護士が刺殺され、現場となった異形の階段には1万円札がばらまかれていた。眩暈と浮遊感に溢れ周到な仕掛けに満ちた世界に、あの名探偵が挑む。隙なく完璧な本格ミステリ!



    第1章を読んでいたとき、よく分からなくて少し諦めそうになった。たぶん、認知症かなんかの人の目線なんだろうなって思っていたけど、記憶がなんだか曖昧なかんじで、読んでいると不安になってくるかんじだった。そして、いつ探偵が出てくるのかとか、いつ怪しい屋敷が出てくるのか気になってしまった。


    第1章の終わりに、衝撃的なことが起こって、びっくりしているうちに第2章が始まった。ようやくミステリーぽくなってきて、過去と現在を行き来しているかんじで面白かった。過去では、怪しい屋敷に大学生だとかいろんな人が集まって、屋敷の主人はなんだか偏屈なかんじ。そして、現在ではその屋敷で起こった事件の再調査が始まっている。



    探偵が見事推理した事件を再調査するってすごい話だなって思った。事件は解決して、裁判も終わって犯人は刑務所から出所して静かに暮らしているという。そうか…私たちが読んできたミステリーで犯人が逮捕されたことはあったけど、その後に裁判やら刑務所へいくとかリアルと同じことがあのあとに起こっているんだなって、なんだか改めて思ってしまった。


    それより、その過去と現代を行き来するのは全然いいんだけど、あの第1章の衝撃に近付いていると思うと、なんだか少し怖かった。そして、読んでいる最中に、この探偵の話はシリーズになっていて、この話は第3弾ぐらいだと知った。え、これってこのままこのシリーズ終わるのかなって思ってしまったのは無理はないと思うの。


    そして、話は進んでいって、怪しい屋敷の事件は解決した。でも、なんだかモヤモヤしてしまう…本当に、あの推理でいいのかなって。なんだかあっけなかったかんじがした。


    しかし、もう1人の探偵はかっこよかったな。あの人のシリーズなら読んでみたいと思ったけど、彼女は引退して幸せに暮らしているのだから仕方ないか。でもさぁ、助手のあいつはマジで気持ち悪かったな。「あなたの知性に惚れている」って言いながら、本当は女性として好きだったんじゃんってなったわ。


    2025.2.15 読了

  • 石動シリーズだったのか、読んでて途中まで気づかなかった。。
    そしてミステリーなんだろうか?と思いながら読み進めたけど、最後の方になって、あ!と思い、読み終わってから冒頭しばらく再読した。
    凝ってるといえば凝ってる作品。
    306冊目読了。

  • 殊能将之 鏡の中は日曜日
    読み終えました。
    題名がいまいちピンときません。

    ハサミ男と違ってミステリーぽいかと読んでいきました。うんうーんでもこれは本格ミステリではありません。
    でもこの作品も◯じやなく◯だったオチでしたね。   彼の作品はみんなこのオチがあるとか?
    著者は◯ではなく◯なの?
    お亡くなりになったと聞いてますが、作者自身がミステリーかもしれません。


    殊能作品は2作目でした。
    ハサミ男からご無沙汰
    本はまだ他にも持っていましたが、殊能将之おすすめで検索してみます。では次回作まで。

  • 嫌いじゃない。
    名探偵水城がかっこいい。

  • 早く続きを読みたいと思った作品は久しぶり。
    物語の見せ方が凄く面白かった。
    ☆5つ付けようかと迷ったくらい。

    最初に梵貝荘なる館の平面図と登場人物一覧があって、めちゃ新本格ミステリを気取ってる作品。
    物語は、痴呆の「ぼく」の日常の描写から始まる。
    『ハサミ男』でも感じたけど、殊能さんは病んだ人間の一人称を書かせたらピカイチだと思う。すごく読ませる。
    だんだん「ぼく」が殺人事件に関わったらしい記憶が断片的に現れ、どうやら石動戯作がその調査をしているらしいことが知れる。
    この、少しずつ状況が開示されてゆく冒頭の掴みが、凄く良い。
    果ては石動が「ぼく」に殴り殺される!
    前作『黒い仏』のぶっ飛び振りを経験してると、石動が殺されても(いやめちゃビックリしたけど)「シリーズモノなのに主人公殺されちゃったよ! ぶっ飛びすぎなんだよ次回どうするんよw」くらいな感想ですんなり受け入れてる自分がいる。

    掴みにすっかり持っていかれ、場面は変わって1か月前の石動を追う三人称視点になっても続きが気になって仕方ない。
    十四年前の殺人事件を再調査するよう依頼を受けた石動。その事件は、名探偵水城優臣が解決し、その助手兼記録者鮎井が事件の7年後に「梵貝荘殺人事件」として小説化したものの、未刊のままとなっていた。
    名探偵水城シリーズのファンでもあった石動は興味もあって依頼を引き受け、資料として「梵貝荘殺人事件」を読みつつ、当時の関係者に会って話を聞くうちに、水城の推理は間違ってたのではないかと思い至る。

    読者には、小説の内容と現在の石動の調査の様子が交互に開示される(これがまた上手いなと思った)。
    実際の事件の小説化とはいえ、小説は小説なわけで、書かれてないこともありそうだし、関係者の中には小説の登場人物としての描写とは乖離してる人もいたりで、小説が事実に忠実とは限らないことを思い知らされる。
    このテーマはまんま、いわゆる「後期クイーン問題」でもある。多分、この作品は殊能さんの「後期クイーン問題」への挑戦なんだね。

    読者は(私は)、冒頭の「ぼく」はこの中の誰なのかと考えてしまう。物語は梵貝荘の主である瑞門龍司郎であることを匂わせるが、そんな一筋縄には行くまいと思う自分もいる。作者が壊れたから小説は未刊なんだ、という記述に惑わされて「ぼく」は記録者鮎井なのか?とも思う。
    佳境に来て、「ぼく」=水城優臣だとミスリードさせられて、それから「梵貝荘殺人事件」には書かれなかった水城優臣(優姫)と瑞門誠伸の恋愛譚を知ることになる。

    感覚的には何度もどんでん返った感じがする。
    「ぼく」=誠伸が殺したのは鮎井だったけど(被害者は眼鏡をかけてたからどこかで石動じゃないとは分かってた)、どんでん返り過ぎて「もう一度どんでん返って最後の最後で石動マジで死ぬんじゃね?」と期待(?)してしまった。

    最後の、優姫と誠伸と石動が神社にお参りに行くシーンはちょっと助長だと思ったんだけど、冒頭シーンの答え合わせになってるんだよね。
    つまり読者は誠伸の行く末も最初に知らされてる訳で、それに気づいたらちょっとしんみりしちゃった。
    優姫はほんとに誠伸が好きなんだってことも伝わって、そこはかとなく哀しい。
    自然、再読してしまうというね。

    我に返って考えれば、実際の水城優臣(優姫)が女だったってトリックは『ハサミ男』の焼き直しな訳で、それでも簡単に引っ掛かる自分を逆に褒めたい。
    石動が疑った水城の推理の誤りは、実は誤ってなかったんだから、もう石動は名探偵名乗らない方が良いんじゃないか。ていうか、石動が冴えてたのは『美濃牛』の一瞬だけだよね…。
    石動戯作シリーズは、作風も出来もばらけすぎてて評価が難しい。
    個人的には『美濃牛』も『黒い仏』もイマイチ乗り切れなかったので、本作品でここまで読んできた努力(?)が報われた気がした。


    ミステリの諸問題とか知らないピュアな感覚で読めた方が楽しめる作品です。オススメ。

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著者プロフィール

1964年、福井県生まれ。名古屋大学理学部中退。1999年、『ハサミ男』で第13回メフィスト賞を受賞しデビュー。著書に『美濃牛』『黒い仏』『鏡の中は日曜日』『キマイラの新しい城』(いずれも講談社文庫)がある。 2013年2月、逝去。

「2022年 『殊能将之 未発表短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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