13人目の探偵士 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
3.39
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本棚登録 : 69
感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061822627

作品紹介・あらすじ

奇妙な童謡どおりに探偵ばかり次々襲う殺人鬼"猫"による残忍で狡猾な事件。密室の中には喉を切られた偉大な探偵皇と記憶喪失の男。血文字の伝言は何を語る?現場から消えた謎の凶器とは。ミッシング・リンクの連続殺人、アリバイ崩し、探偵士とパンク刑事たちによる推理合戦。ここにミステリのすべてがある。

感想・レビュー・書評

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  • 多分再読。
    処女作かつゲームブックという体裁で、この小説は凄い。後継の次世代新本格への影響もあると思う。探偵士とか。多重解決の過程でいろんなトリックが破綻してくのも面白い。改めて傑作

  • 総合評価 ★★★☆☆
     もともとは,1987年に「13人目の名探偵」というタイトルで,ゲームブックとして発売されていた作品。「13人目の名探偵」が絶版になって手に入らなくなっていたことなどから1992年に大幅に加筆修正して出版された。そういった経緯が「あとがき」に当たるNOTEに書かれている。現在は,手に入りやすくなるために発売されたはずのこの作品まで手に入りにくくなっている。新刊で売っている本屋さんはないし,古本屋でもあまり見かけない。今回は図書館で借りて読んだ。中学生頃,ゲームブックは結構読んでいて,「ルパン三世 謀略の九龍コネクション」とか好きだった。よって,ゲームブック風の味付けは好み。ゲームブック版の「13人目の名探偵」を当時読んでいたら感動していたかもしれない。1つのミステリとして読むと,どこかで見たトリックの寄せ集め感がある。密室トリックは被害者が犯人だったというもの。ダミーの密室トリックも含めて,どこかで読んだことがある感があるが,それなりにまとまっている。ダイイングメッセージもふーんという感じ。キャラクターもそこまで魅力的ではない。パラレル英国などの背景となる設定が魅力的なだけにちょっと残念。もとがゲームブックでもあり,個々のトリックがそこまで練られていないのも仕方がないのだろう。最後のバーチャルリアリティというオチも陳腐。うーん。いろいろな要素を取り入れたミステリクイズ本という位置付けなら十分楽しめるがミステリとしてはあまり高い点は付けられないかな。★3で。

    サプライズ ★★★☆☆
     被害者であるクリストファー・ブラウニング郷こそが連続殺人犯キャットだったというサプライズが用意されているが,割とそうなんじゃない?と予想できてしまうためサプライズ感が少ない。ミステリをあまり読んでいない状態で読んでいると,違った感想になるのだろうが。私が日本から来た近松林太郎という探偵であるという点も,近松林太郎が日本人でありながらハーフであるという点も相まって,サプライズとなるはずなのだが,これはきっちり読んでいないと驚けない。総合的に見てサプライズ感は少なめ。山口雅也らしいというか、サプライズ型ではなくロジック型のミステリである。★3で。

    熱中度 ★★★☆☆
     密室の中で被害者と一緒に発見された人物が主人公で記憶喪失。謎の連続殺人犯キャットの存在と多数の探偵士達…とミステリ好きならたまらないような面白い要素がてんこ盛り。先が気になるのは間違いない。しかし,3人の探偵ごとの推理パートがあって,中には同じ文章を読まされたりもする。この読みにくさが没入感を削ぐ。熱中度としては★3程度になるか。

    インパクト ★★★☆☆
     もともとゲームブックということで,随所に残るゲームブックらしさが新鮮でインパクトはある。捜査をする3人の探偵も密室郷の探偵,ハードボイルド探偵,女性探偵とバラバラ。それなりの個性もある。しかし,なんというか地味なのである。連続殺人犯キャットが探偵皇という探偵界のボスであるなどインパクト強そうなのだが,実際は薄い。そもそもパラレルワールドのイギリスの世界観が地味。探偵皇もすぐ死んじゃうので地味。私の正体が日本から来た探偵だというのももっとうまく書けたインパクトがありそうだが地味。その伏線も上手いといえば上手いのだが,折込の新聞記事の一部にちょこっと残っているだけ。地味。山口雅也の文体が地味なのかもしれない。最後のオチのバーチャル・リアリティというのも今となっては地味だなぁ。★3で。

    キャラクター ★★★☆☆
     ブル・バーロウ・ルイスという3人の探偵士はそれなりに個性的。キッド・ピストルズとピンクが出てくるのもファンにはうれしい。とはいえ,全体的に世界観が地味なので,キャラクターも地味になってしまう。主人公の正体が近松林太郎という日本人探偵なのだが,こいつもバックボーンなどが全くなく地味。何より,せっかく魅力的になりそうな連続殺人犯キャットが被害者だと言う点がキャラクター的な魅力を削いでいる。★3で。

    読後感 ★★☆☆☆
     すっきりしない終わり方。読後感がいいとは言えない。

    希少価値 ★★★★☆
    手に入らない。再販されたら勝っておきたい。 

    メモ
    〇 プロローグは犯人=キャットとある名探偵が対峙しているシーン。このキャットが本編で被害者だと思われていたクリストファー・ブラウニング郷。名探偵が本編主人公で記憶喪失になっていた日本から来た名探偵近松林太郎
    〇 この作品はプロローグから第1章に当たる「幕間の口上」までは一本道だが,そこから3つに分岐し,3人の探偵の捜査がそれぞれ描かれる。主人公である記憶喪失の「私」が選んだ探偵の捜査する姿が描かれると言う趣向であり,もともとゲームブックだった作品の名残ともいえる。途中でのゲームブックにおけるゲームオーバーを迎える話の描写がいくつか出てくる。
    〇 3人いる名探偵のうち一人はヘンリー・ブル博士。事件を密室という観点から捜査・解決しようとする。本格ミステリ寄りの名探偵。解決編では密室談義を行う。密室トリックとしては被害者が密室の内と外のボーダーラインで襲われ自ら密室を作る。凶器は死体発見の混乱で犯人が持ち去ったと推理。犯人はベヴァリー・ルイスだとする。
    〇 3人の名探偵のうち一人はマイク・D・バーロウ。ハードボイルド風の雰囲気で,事件を掛かっていた音から捜査し,麻薬関係の部分へと進む。話の中で被害者であるクリストファー・ブラウニング郷が麻薬密売組織のボスであることが分かる。暗号を解いてヘンリー・ブルがクリストファー・ブラウニング郷から麻薬を買っていたことを知り,ブルが犯人だったと推理する。
    〇 3人の名探偵のうち一人はベヴァリー・ルイス。女性探偵で,事件をダイイング・メッセージから捜査・推理する。話の中でダイイングメッセージ談義がある。リーチ兄弟という兄弟への捜査があり,バーロウが兄弟の3つ子のうちの1人であると分かる。そして,犯人がバーロウであると推理する。ダイイングメッセージはラテン語で家猫の意味。家庭的の意味でバーロウを意味すると推理。密室トリックは機械的なトリックだと推理するが上手くいかない。
    〇 探偵士100年祭で,シャーロック・ホームズジュニアの死体が発見される。これは,殺害される前にクリストファー・ブラウニング郷が殺害していた。同様殺人の順番どおりに殺人がされたと思わせる読者へのトリックになっている。
    〇 真相は,ダイイングメッセージは「CATIS」の後ろに窓ガラスで塗料で書かれた部屋の主の名前が映るというもの。クリストファー・ブラウニング郷が自分がキャットであることを示すためのメッセージを残していた。
    〇 シャーロック・ホームズジュニアが口内炎で熱いものが飲めなかったことをクリストファー・ブラウニング郷が知っていて,シャーロック・ホームズジュニアの席が冷たいスープになっていたというところが,クリストファー・ブラウニング郷がキャットで既にシャーロック・ホームズジュニアに会っていた(殺害していた)の伏線になっている。
    〇  近松林太郎が母親がイギリス人で外国人に見えることの伏線は,とじ込みの新聞の写真のところにある。
    〇 複数の探偵に依頼をしたり,ゲームオーバーに当たる選択肢を選んだような記憶があることについては,バーチャルリアリティ装置の経験だったという設定となっている。主人公は実際は誰かの探偵に捜査を依頼したのかは誰にも分からない。そもそもの解決すらバーチャルリアリティかもしれない・・・というオチ

  • 世紀末探偵御伽草子(神話じゃないよ)

  • ミステリー作品は多く読んでいますが、これはなかなか面白いことを試みた作品です。この小説では選択肢があり、その選択によって前に行ったり戻ったりします。
    まるでゲームのような作り。小説としてはそこまで面白くはありませんが、主人公になりきってミステリーを楽しめます。

  • あ、もともとはゲームノベルだったのか。なるほど。いろんな読み方があるみたいだな。ちなみに私は普通に頭から順番に読んだけど、それが一番スムーズに繋がるよねえ。
    マザーグース見立て殺人……すべての事件が描かれていなかったのが個人的には非常に残念。だけどこの山口さん創作のマザーグースも雰囲気抜群。マザーグースフェチにはもうたまりません。ああ、メロディ聴きたい~。

  • これは凄いミステリを読んだという感じ。密室、ミッシングリンク、ダイイングメッセージ、謎の凶器、記憶喪失サスペンス、アリバイ、そして謎の連続殺人犯。その上「解決」から始まり「発端」で終わるミスディレクション。さらに被害者が探偵なら関係者も探偵、探偵役はもちろん探偵。詰め込むだけ詰め込んだという感じ。しかもそれが歪になっていなくて綺麗にまとまっている。

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