陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず) (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 3249
レビュー : 301
  • Amazon.co.jp ・本 (752ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061822931

感想・レビュー・書評

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  • 『百鬼夜行 陽』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/416381230Xを見て、この人誰だっけと参照……のつもりが一気読み。
    筋だけを追った1度目よりも、細部を見られた2度目のほうがずっと楽しめた。
    そりゃそうだ。これはトリックを楽しむ「推理小説」ではない。

    最初に読んだ時はそんなに良くなかった。評価は★2か3くらい。
    薫子と伯爵の質の違う善人度が釣り合わないと感じて、流れに共感できなかったし、探偵の使い方もスッキリしなかった。

    初読の2003年には、まだ世界を把握するために視力がどれだけ大事かってことをわかってなかった。
    自分の話下手以外の理由で言葉が通じないことがあるというのもよくわかってなかった。
    だから榎さんの「使えなさ」にイラっとしたし、最後の「活躍」がしっくりこなかった。(あれは活躍じゃなくてもどかしさの発露だったか)

    今回読み直したら、異質な世界を抱えていることを自覚して適応している探偵は、異質な世界に住まうことに不都合なく適応してしまったために無自覚な伯爵に対比させるために配置されていた。
    一見普通に見えるから、同じ前提を共有しているかなんてわざわざ確認しない。
    わからない人は自分が何をわかっていないのか(わかっていないということさえも)わからないから確認できない。
    常態が不適応な関口はもとより問題なくお見通しに見える榎木津さえも認識違いの説明不足とそれにともなう状況把握の不備にさらされる。
    つまりは、いつでも誰でも多かれ少なかれ違う世界の中にいる。

    流暢におしゃべりできるから日本語を問題なく理解していると思われて教科書用の言葉を教えてもらえずに教育の場からこぼれていくニューカマーの問題を思い出した。http://booklog.jp/item/1/4326250526
    あるいは機能不全家族か。
    言うと差異に気づく。言わないから通じていると思い込める。


    京極夏彦がべらぼうに説明上手なのは、「(言語は同じなのに)言葉が通じないこと」に注目しているからなのかな。

    2012/04/07 再読

  • 読みきったー!満足。
    このシリーズを、こんなに楽しく読んだのは初めてかもしれない。
    トリックが凄かったとか、そういうことじゃなくて、気持ちの問題なんですが。
    この先は、これからこの本を読むつもりのある人は避けて下さい。
    ネタバレってわけでは無いんですが、一応。



    犯人は、冒頭で分かってしまう。トリックも真相も、京極堂の一見事件とは全く関係ない薀蓄で分かってしまう。でも面白かった。なんていうか、今までだって別に惰性で読んでいたわけじゃないんだけど、正直、京極堂の薀蓄の長さはきつかったし眠くなるし途中で止めたくなるし、関口君の鬱っぷりは、こっちにまで移ってしまうくらいウザかったし、そういう中で、榎さんの破天荒っぷりってのは面白かったから、いつも榎さん速く出てきてくれよーと思いながら読んでいました。
    本編は1度しか読まなくても(あの厚さだから手が伸びにくい・・・)番外編の探偵小説の方は定期的に読み返してた。何より番外編は、関口君が語り手じゃないから鬱々してないんだ!そういう私なので、「陰摩羅鬼の瑕」が出て購入してから読むまで時間が掛かりました。久しぶりに本編を読んで、関口君の鬱っぷりも然程気にならず、京極堂の薀蓄も面白かった・・・!薀蓄でトリックが分かって行く過程は楽しかったし、何より薀蓄の内容が面白かった。儒教と仏教とか、林羅山とハイデッカーとか、しっぺい太郎や鶴の恩返しの昔話の暗示していることとか。
    冒頭で犯人を示し、中盤の事件とは一切関係ない所で語られる薀蓄で真相を読者に分からせ、さて最後、どう落とすか。これが面白かった。堪らなかった。また京極堂の落とし方も、真相に至っていない者には凄い遠まわしなんだけど、真相に至っていた関口君や、それこそあの人には、ストレートに直撃しちゃってて。
    鶴を見たときに、日本人は縁起が良いと喜び、アイヌ人は殺されると逃げる。
    これは本編で京極堂が言っていた例えですが、まさにこの作品は、日本人の視点と、アイヌ人の視点、見解の相違を描いたものだったわけです。そこが面白かった。先に真相が分かってしまっても、十分に楽しめました。

  • 途中で犯人が薄々分かってしまうが、仕掛けはシンプルで第1作を思わせてすっきり読める。誰が悪いわけではない、悲しい話。

  • 途中犯人が分かるのと、かなりオチが予想できちゃった感がちょっと…でもこんなピュアな人が世の中にいたらって考えると、悲しいけど素敵な話。

  • 早い段階から犯人が薄々わかるけど、これをどう説明するのか京極堂のラストシーンを楽しみにしていた。死に対する各宗教の違いに丁度興味があったので面白かった。

  • 序盤でオチが読めてしまったのが残念。シリーズの中でもかなり残念な作品に。

  • 読みやすい。ビックリ。京極シリーズなのに。でも哀しいストーリー。

  • どこかせつない空気が最初からずっと漂っていた気がする。
    結末はあまりに哀しくて、少しずつ、少しずつ、最後までページをめくった。
    途中、どうも関口くんに感情移入してしまったようでとてつもなく鬱々とした気分に。
    あのひとには幸せになってほしい。

  • 登場人物や舞台の出し入れがなく、終盤までは退屈であった。「生きる屍の死」を彷佛とする前提をひねったロジックには納得。

  • 犯人と殺害理由は途中でうっすら読めてくる。しかし飽きない本、というのは珍しい。
     解 け て も 作 者 の 術 中 なんだよね、京極夏彦は(^^;)途中で読者に解けることを考慮した上で書いている。(このことは京極堂の謎解きに、語り手・関口くんが驚かない―――犯人と動機をうっすらと察している―――ことからも明らか。)
    そして、本当の焦点は「犯人当て」でも「動機当て」でも無い。頭のキレすぎる作家てほんと怖い。


      これが有栖川有栖の『乱鴉の島』だと、中盤で動機が読めちゃう上に、焦点まで動機だからガッカリでした。(有栖川有栖、好きなんですけどね。しかしミステリーに関しては、好きな作家の書いた本を全て誉めるわけじゃないよ。期待した分は酷評しますよ。)

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著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

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