- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061823617
作品紹介・あらすじ
二年間の昏睡から目覚めた少女・両儀式が記憶喪失と引き換えに手に入れた、あらゆるモノの死を視ることのできる"直死の魔眼"。浮遊する幽霊の群れ。人の死を蒐集する螺旋建築…。この世の存在のすべてを"殺す"、式のナイフに映る数々の怪異。非日常の世界は、日常の世界と溶け合って存在している-。-あの伝説の同人小説の講談社ノベルス化が満を持して成就。
感想・レビュー・書評
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以前から直死の魔眼というワード自体は知っていたがその元が全然知らなかった。
ラノベかと思いきや重量感もあり、描写も丁寧に描かれており非常に読み応えがあった。感覚的に京極夏彦を読んだ時と似たような読了感があった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
たまたま、図書館で見付けた本。
題名と表紙の絵、そして裏表紙の「あらすじ」にあった「伝説の同人小説」という文言から、興味が湧いて読んでみようかと思い借りた。表紙の絵から当然、ライトノベルだと思っていた。が、途中で普通のライトノベルではないなと感じ、読み終わって最後の笠井潔の「解説」を読んで、この小説は「伝奇小説」と知った。でも、「伝奇小説」ともちょっと違うような気がする。イメージ的に。
この小説は、説明が多く長い。例えば、自殺の際の「遺書」に関しても、また「無痛症」患者の「生きている実感」についても、主人公の二重人格と殺人衝動やその他の事に関しても。この「説明」の内容は、「普通の小説」ではちょっと無理すじだが、「伝奇小説」では無理の無い理屈。ただ、場合によっては屁理屈になっている。
とは言え、この「説明」「理屈」が、この小説の基になっている。つまり、登場人物の存在理由から登場人物の能力、その能力による怪奇現象、事件、出来事(殺人、暴力、自殺その他諸々)がこの「説明」「理屈」で理由付けられている。そして、この「説明」「理屈」が、結構面白い。
また、「ライトノベル」的な要素もある「伝奇小説」だから奇怪的、ホラー的、猟奇的な描写も当然あるが、アクションシーンもあり、圧倒的に強い主人公と、もしかしたら主人公より強いかもしれない敵。主人公に徹底的に惚れ込んでいる人のいい相棒。「説明」「理屈」で、出来事を解説してくれる魅惑的な女性所長。などなど数は少ないが魅力的な登場人物も良い。
ただ、「伝奇小説」と唱うのであれば、幻想的、耽美的な描写がもう少しあっても良かったかなと思う。勿論、谷崎潤一郎の背筋が凍るような美しさ、江戸川乱歩のような毒々しい美までは要らなくても、半村良の「伝承に基づいエロチズム」くらいは。
まぁ、いろいろ突っ込み処はあるが、結構面白い小説だと思う。 -
「傷は耐えるものじゃない、痛みは訴えるものなんだよ、藤乃ちゃん。」
自己の中に他者を持っていたから、人間が醜い物だと知っていた。 -
二年間の昏睡から目覚めた少女・両儀式。記憶喪失とともに手に入れたのは、物の死を視る眼だった。あらゆる物を殺す力は、似て非なる怪異たちと巡り会う。正常と異常の境界で紡がれる新伝奇小説。
同人版で発売された当時ぶりの再読。内容がちょうどよく頭から抜けていて、楽しめつつも初見のように惑いながら読んだ。章ごとに時系列がバラバラ。ちゃんと読まないとわからない仕掛けも最初から張り巡らされていて、ついて来れない奴は置いていく!と言わんばかりの展開。
物の死を視る眼、魔法と魔術など一見すると中二病っぽいキーワードだけど、圧倒的な知識で組み上げられた世界観、哲学性には唸らされる。年齢を重ねた自分でも読みにくさを感じる。それを補って有り余るほどの密度と魅力は凄まじい。難解さをわかっていてもお薦めしたくなる作品ではある。
異能バトル、伝奇小説、哲学、ミステリ、サスペンスなど、様々な要素を凝縮させたブラックコーヒーのような味わい。改めて今読み直すと、ブギーポップからの影響を感じたり、矛盾螺旋のマンションは館シリーズっぽくて面白いとか思った。
最後にお気に入りの言葉を引用して終わります。セリフの投げかけがナイフのように鋭くて好き。
「だがもし君が罪の意識でどちらかを選ぶのなら、それは間違いだぞ。我々は背負った罪によって道を選ぶのではなく、選んだ道で罪を背負うべきだからだ」
「子供の頃は自分しか見えないから、他人のどんな悪意だって気付きはしない。たとえ勘違いだとしても、愛されてるっていう実感が経験になって、誰かに優しくできるようになるんだ」
「馬鹿だな、君は。いいかい、傷は耐えるものじゃない。痛みは訴えるものなんだよ、藤乃ちゃん」
或る一つの無駄を愚かと蔑み、或る一つの無駄を芸術と持てはやす。一体、その境は何処にあるというのだろう。
境界は不確かだ。定めるのは自分だというのに、決めるのは外側になっている。なら初めから境界なぞない。世界はすべて、空っぽの境界でしきられている。だから異常と正常を隔てる壁なんて社会にはない。
──隔たりを作るのはあくまで私達だ。 -
実は初めての奈須きのこ作品。頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。美しい言葉運びで彩られた鮮やかな描写と陰鬱な心象に心奪われ、同時に自分との才能の差を思い知らされたというのが率直な感想。スゴすぎる。
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繋がりが分かりづらいところもあったが、これは私の読解力の問題。
最初からぐいぐい引き込まれた。 -
やっぱ奈須きのこって天才やなって。
読むの三回目くらいやったけど、久々に読み返すとトーコさん言ってること難しくてまだまだ読み込みが足らんなと思う。
矛盾螺旋はやっぱり最高だ -
いつ読んでも褪せない。
出会ったのは発売当初。
教えてくれた旧友に感謝です、
その後自分でこの作品を手に取ったかと思うとわからない。
文体は好みが分かれるのだろうなと思う。
内容も。
ジャンルが何かと改めて考えてみると、
SF?ファンタジー?哲学?
などひとところにに収まらなさすぎて、なんとも形容しがたい。
あまりライトノベルを読むことなない自分がこの作品は例外的に読めるのが不思議。
そして今も。
当時は「矛盾螺旋」の大掛かりさ、トリック的なものに圧倒され印象が強すぎたのですが、
改めて読んでみると「痛覚残留」がもう苦しすぎて
なんでこの章の印象が薄かったのだろうと思うほど。
おそらくは、当時まだ耐性のなかった自分には描写が耐えられなかったのでしょう。
今は、藤野の痛みが辛い。
映画を見て読み返してみるとなるほど、頭で映像を構築しやすいです。
「俯瞰風景」の戦闘シーンはアニメの方が躍動感があり、
見ていて楽しかった気がします。
小説は割とあっさりとしている。
無駄なものを削ぎ落とした、といった風でもある。
再読はいつ以来なのだろう。
正直自分の価値観や見方に影響した作品というのは
なかなか出会えるものではないと思うが、
間違いなくこれはその一つに入る作品です。
自分にとって。