- Amazon.co.jp ・本 (824ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061824386
作品紹介・あらすじ
「殺してやろう」「死のうかな」「殺したよ」「殺されて仕舞いました」「俺は人殺しなんだ」「死んだのか」「-自首してください」「死ねばお終いなのだ」「ひとごろしは報いを受けねばならない」昭和二十八年夏。江戸川、大磯、平塚と連鎖するかのように毒殺死体が続々と。警察も手を拱く中、ついにあの男が登場する!「邪なことをすると-死ぬよ」。
感想・レビュー・書評
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シリーズの中で一番切ない…。
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うん…………。
いまいちでした。
長いのはいつものこと。
今までならありがたかったその長さが今回は辛く感じられた。
楽しい時間は早く過ぎてしまい、辛い時間は長く感じる。
そういうことなのだろう。
よくわからない話でした。 -
刊行されたばかりの時に読んだのだが、再読すると驚くほど内容を覚えていなかった。
真壁恵は望まぬ祝言から逃れてきた幼なじみを自身の名を騙らせて住まわせることで匿うが、元夫から被せられた借金の取りたてが来るにおよび偽・真壁恵の身を案じて、ひょんなことで知り合った大鷹に護衛を頼む。
さて、本作は関口巽の他に、どこか精神的に欠けたところのある3人の胡乱な男が登場する。大鷹は『陰摩羅鬼の瑕』に登場した、ひどく気の利かない若い刑事だが、まるで本作での登場を準備するためだけに動員させられたかのように『陰摩羅鬼』ではあまり必然性のない登場人物だった。『陰摩羅鬼』の事件のため刑事をやめて、逗子あたりでボッとしていたところを恵に拾われたのだ。
彼は決して知能は低くないのだが、ともかく思考がまとまらない。恵に頼まれた護衛は不審な観察者になってしまう。そのうえ偽・恵から目を離した日に偽・恵は殺されてしまう。
「私」は画家だが、ちょっと異常なほど世間知らずだ。モデルを頼んだ女性につきまとう怪しい男がいることを知るが、警察では取り締まることもできないとわかり、殺意を覚える。しかし、そのモデルはある日、来なくなり、殺されたのではないかという情報が入る。
江藤は酒屋の住み込み店員である。酒屋の店主が懇意にしている「真壁恵」におすそ分けを届けに行った際に、「真壁恵」が死んでいるのを発見する。彼は自分の関わりのないと思うことには急速に興味を失ってしまう。
ひとつの殺人事件、かよくわからないのではあるが、別の視点から語られているのだ。
しかもこれは連続殺人事件の1件と警察は見ている。それは青酸加里による毒殺だからだ。まず商社社員が殺され、次に良家の令嬢が殺されている。
ここでさらに別の視点が登場する。『塗仏の宴』での服務不遵守で一時的に交番に左遷されている青木は社員の事件に不審を抱き、そのあとを追っている。他方、探偵見習い・益田のもとには榎木津の親戚筋から、榎木津に身を固めさせようと見合いを持ち込もうとすると相手方から断られてしまい、そのうちの1件では相手の妹が殺害されており、何が起こっているか調べろと言われるのだ。視点がありすぎて全体像が見えないというのが今回のキモなのである。
邪魅という妖怪についての言及はちょっとあるが、邪魅の雫とは、戦中、京極堂が所属していた陸軍の研究所で作られた、1滴垂らすだけで人を殺せるVXガスみたいな猛毒のことである。
本作は主に青木刑事と探偵見習い益田による刑事物語といった体をとる。となると憑き物落とし京極堂の出番がなさそうで、実際、京極堂の登場はいささか唐突な感じがする。他方、場をめちゃめちゃにする役割の榎木津も今回は関係者とあって、大暴れなしで、まあ、本書の印象が薄かったか。 -
なんとなく、ずっと心許ない感じ。
登場人物が皆それぞれ少しずつ後ろめたくて、こちらの構造もぐらつく感じ。
事件そのものも謎はないのに、すっきりしない、釈然としない。不協和音。
益田くんも調子が出なくて、相対的になぜか関口くんがまともに見える。
探偵も探偵として関わっていなく、京極堂も少ししか出てこないしなー。
個人的本書の読みどころは、青木くんと郷嶋さんが対峙するところだと思います。 -
誰もが自分の見ているものは他人が見ているものと同じだと思い込む
モノは壊れていくためだけに存在する
不思議だと当たり前に言うのは、解釈の押し付けである
本にも書いてありますが、「連続殺人」ならぬ「連鎖殺人」を取扱っています。凶器の伝達と供に、殺意が伝達しています。
現代の凶器は「情報」でしょうか。誰かが特殊な犯罪を犯せば、メディアを伝ってそれに触発された誰かが同じ犯罪を犯す。例えば、先日の複数の無差別殺人事件は、その一種ではないかと思います。
小説の凶器とは違って、情報は無尽蔵に、そして残酷に広がります。現代の流れとして、小さな子供には危険な情報は見せないようにする働きかけがなされていますが、「その情報は危険だ」という判断基準を与えることの方が重要なのではないでしょうか。実体のない情報を覆い隠すことなど、不可能に近いのですから。
21世紀は「情報の時代」。使い方を誤らないようにしなければなりません。 -
このシリーズが大好きです。
なんつー読みにくい本だ!と思ってたのに、なんでこんなにハマってんだろ。
個性的な登場人物たちが魅力的だったのが一番の要因だけれど、京極堂の謎解きには毎回はっとさせられる。
まったく違う視点からの答えは、確かに世の中には不思議なことなど何もないんだと納得してしまう。
とにもかくにも、早く新刊をお願いします!薔薇十字探偵ものも好物だけども、本編を!本編の続きを! -
可もなく不可もなく。
コストパフォーマンスはいいと思う。
絡新婦の理以降はなんだか盛り下がっていってる気がする。
つまらないわけじゃないけどそれまでがよすぎたのかな。 -
山下さんかっこよくなったなあ、とか、関口先生今回よくしゃべったなあ、とか、色々あるんですが、とにかく百器徒然袋(雨)で赤ちゃんを可愛がる榎さんの可愛さに「YOUもう結婚して子作りしちゃいなYO」と思った結果がコレだよ!
いつにも増してシンプルかつ真相がわかるまではややこしい事件。事態が進展するまでは正直ダレましたが、新たな犠牲者が出てからはスピーディーでした。陰摩羅鬼で真相がわかりやすかったのは、京極堂作品は基本シンプルな事件がいくつも起きて繋がったり重なったり撹乱し合ったりで謎めくのに対し、陰摩羅鬼は事件(出来事)自体は一つだったからじゃないかなあと今更思ったり。
作中でも指摘された通り、構造自体は蜘蛛と似ているけれど、真相が明らかになったとき発覚するのは犯人の小ささ。まさに邪な雫。ちっぽけなものが人を狂わせてこの惨事。まさか百器徒然袋(雨)の最初の事件がコレの伏線というか前置きだったとは……とりあえず従兄弟殿に合掌。そんなつもりはなかったろうに切っ掛けになっちゃったんだもんなあ。
生き残った彼女のこれからがどうなるのか、榎さんに伴侶はできるのか、関口先生は作家として成長するのか、タイミング的に次は再び木場さんメインかなあとか思いつつ、いつになるかわからないけど次巻を楽しみに待ってます。 -
シリーズで名物ともいえる妖怪についての薀蓄が今回は少なめ。そのせいか、憑き物落としによるカタルシスは若干弱い感じ。が、シリーズものの強みというか、残り数ページで決める人が決めればピシリと締まる。お見事。
著者プロフィール
京極夏彦の作品





