エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス)
- 講談社 (2008年2月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061825857
感想・レビュー・書評
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暁画廊の社長、暁宏之が邸宅の自室で死体として発見される。貴重な絵画は手つかずで、閂のかかった窓には意味ありげに血が何層もに重ね塗りされていた。いわゆる「密室」状態である。
『エコール・ド・パリ殺人事件』の副題は、レザルティスト・モウディ(呪われた芸術家たち)。被害者が著した同名の美術書の一説が、各章の始めに挿入されるのだが、それが抜群に面白い。これは作中の暁宏之の著作という体だが、まぎれもなく作者深水黎一郎氏が書いたものだ。僕はそこまで美術に詳しい訳ではないが、「エコール・ド・パリの画家たち」の解釈として非常に興味深く読み応えのあるものだった。
事件の方は、警視庁捜査一課強行犯係第十課を中心に語られるのだが、途中個性的な探偵役が登場する。物語はこの探偵役を中心に進むのかと思いきや、意外にも地道な地取り捜査や会議など、警察小説のような過程で面白い。
事件の表面的な真相には特に驚きはなかったが、トリックや動機などには、「呪われた画家たち」のエピソードがフィードバックされていて感心した。
探偵役の「世界を股にかけるフリーター」神泉寺瞬一郎のキャラの今後の成長に期待。パリで創作したオリジナル拉麺の話が面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ミステリーと美術が結び付いてて面白かった!…けど、被害者の最後の心情はちょっと信じづらい…犯人が犯行に及んだ経緯を知るに。
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以前読んだ同氏の同シリーズの作品「花窗玻璃」に比べるとかなりふつうのミステリという感じです。凝っているのは花窗玻璃のほう。 美術論とミステリが両立してはいるのですが、結局被害者の暁氏はどんな人だったのか、なんとなく最後、きれいにまとめようとしている感じが気になります。
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犯人は「誰だろう」と楽しみにしながら読むことが出来てよかったと思う。非常に読みやすいと思う。
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エコール・ド・パリに関する作中作が面白かった。
ミステリ部分は動機はわかるものの、創作者がそういった行為が出来るかどうかはちょっと疑問。面白かったけれど。 -
モディリアーニやスーチンら、悲劇的な生涯を送ったエコール・ド・パリの画家たちに魅了された、有名画廊の社長が密室で殺されるが、貴重な絵画は手つかずのまま残されていた。
生真面目な海埜啓二と自由気ままな甥の瞬一郎が、被害者の書いた美術書をもとに真相を追う。
芸術論と本格推理をクロスオーバーさせた渾身の一作!
こちらもはじめての作家さん。他の作品を読んでいないので、たまにでてくる過去の話はわかりませんでしたが、気にせず読めました。
被害者の暁宏之が著した美術書が作中作として登場し、間に挟んで展開されるのでこれまた少々気が散ってしまいましたが、その美術論が面白かったです。
扱われている絵画の写真があればもっとわかりやすかったのになぁ。
そしてそのこだわりのエコール・ド・パリをうまいこと真相に絡めていました。
大体こういうのは作者がこだわっている美術論なりを展開したいだけで、ミステリとはうまいこと融合させられずにがっかりになることが多いのですが。
どちらの事件も納得いたしました。
が、どちらの真相も非常にやるせないです。
ラストシーンでほっこりさせてくれるのが救いかな。
謎解き前には読者への挑戦状もあり、やや冗長ぎみに感じることもありましたが「正統派」という感じで楽しめました。