エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061825857

感想・レビュー・書評

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  • 暁画廊の社長、暁宏之が邸宅の自室で死体として発見される。貴重な絵画は手つかずで、閂のかかった窓には意味ありげに血が何層もに重ね塗りされていた。いわゆる「密室」状態である。

    『エコール・ド・パリ殺人事件』の副題は、レザルティスト・モウディ(呪われた芸術家たち)。被害者が著した同名の美術書の一説が、各章の始めに挿入されるのだが、それが抜群に面白い。これは作中の暁宏之の著作という体だが、まぎれもなく作者深水黎一郎氏が書いたものだ。僕はそこまで美術に詳しい訳ではないが、「エコール・ド・パリの画家たち」の解釈として非常に興味深く読み応えのあるものだった。

    事件の方は、警視庁捜査一課強行犯係第十課を中心に語られるのだが、途中個性的な探偵役が登場する。物語はこの探偵役を中心に進むのかと思いきや、意外にも地道な地取り捜査や会議など、警察小説のような過程で面白い。
    事件の表面的な真相には特に驚きはなかったが、トリックや動機などには、「呪われた画家たち」のエピソードがフィードバックされていて感心した。

    探偵役の「世界を股にかけるフリーター」神泉寺瞬一郎のキャラの今後の成長に期待。パリで創作したオリジナル拉麺の話が面白かった。

  • 気分は★2.5。
    まったくもって、美術関係とミステリーが上手く融合する小説というものは難しい。
    結局、知識の羅列。事件の全貌に関わっているとはいえ、並べているだけ、という印象。
    真相を知っても「はあそうですか」でおしまい。

    人間ドラマに魅力がないと、どれだけ調べ上げたことを並べられても面白いと感じられない。
    そういった意味では、「楽園のカンヴァス」は本当に上手い小説だったのだなあと思う。

    こういう「本格ミステリーのために作られた人物」にグダグダ言うのは野暮だと分かってはおりますが。
    被害者の最後の行動は賞賛されるとかww
    それを知った犯人が後悔したとかww
    なんつう浅い人間描写。

  • ミステリーと美術が結び付いてて面白かった!…けど、被害者の最後の心情はちょっと信じづらい…犯人が犯行に及んだ経緯を知るに。

  • 2012/10/10
    深水作品たぶん2作目。
    1作目に読んだのがよくわからなかったので、2作目を読む積極的な意識はなかったんだけど、ツイッターで好感を持ってしまったので手を伸ばしました。
    1作目よりはわかりやすいお話で安心。
    エコール・ド・パリの蘊蓄も楽しく読んだ。
    あれホントだよね?
    この人持ってる知識を語るの好きだなーとにやけました。いい意味で。

  • 以前読んだ同氏の同シリーズの作品「花窗玻璃」に比べるとかなりふつうのミステリという感じです。凝っているのは花窗玻璃のほう。 美術論とミステリが両立してはいるのですが、結局被害者の暁氏はどんな人だったのか、なんとなく最後、きれいにまとめようとしている感じが気になります。

  • 勘平が切ない。

  • 犯人は「誰だろう」と楽しみにしながら読むことが出来てよかったと思う。非常に読みやすいと思う。

  • 20110605
    芸術ミステリ一作目。
    エコール・ド・パリ、好きなので気になって。

    作中人物の美術書が面白かったー
    そこから絡めて密室殺人につなげていて、よくできてると思いました。
    種明かしなど、そんなに好きな結末じゃなかったんですが。
    読んだことある結末だし。
    そしてゾッとずるなぁ。怖いなー
    でも収拾はついていたので満足です。
    フランス窓、何度も出てきたけど、説明も出てきたけど、特に関係なかったな。あるといえばあるけれども。
    美術界の売れる絵、売れない絵、画商の才覚や売り方でもあるよね。芸術は世論で評価がうろうろするもの。
    それがまたひとつのテーマとなっていました。
    あ、物語中、密室殺人の定義や読者への挑戦状があって、
    本格ミステリらしさにあふれてました。

    文庫本とは少しだけ違うみたいですね。
    文庫本も読んでみたいなー。


    登場人物まとめ

    暁宏之 一流画廊、暁画廊の現オーナー
    暁貴之 その弟。個人画廊、オーロールのオーナー。宏之とは疎遠。
    暁龍子 その妻。旧姓小笠原。かつて天才と称された画家であったが手の怪我で筆を折る。
    暁彩菜 その娘。六歳。
    暁太一 画廊の先代。故人
    柴山医師 暁家の近所の若い医師
    執事 暁家に先代から勤めている執事
    川中裕介 川中画廊の社長。暁画廊のライバル
    杉林治雄 暁画廊の社員。宏之の秘書
    桃山小百合 お手伝い
    小田勘平 作男
    ダイアナ 暁家のドーベルマン
    小平三郎 窃盗のプロ
    広域ウ34号 連続猟奇殺人事件の犯人

    海埜 捜査一課強行犯捜査第十係の警部補、主任
    日野 同じく鑑識課長
    大癋見 同じく警部
    近藤 同じく監察医
    館林 同じく若手刑事
    橘 同じく警部補、主任
    江草 同じく刑事
    神泉寺瞬一郎 海埜の甥。亡き妹未知子の息子
    神泉寺瞬介 瞬一郎の父親。洋画家、日本画の大家、堂瞬の息子

  • エコール・ド・パリに関する作中作が面白かった。
    ミステリ部分は動機はわかるものの、創作者がそういった行為が出来るかどうかはちょっと疑問。面白かったけれど。

  • モディリアーニやスーチンら、悲劇的な生涯を送ったエコール・ド・パリの画家たちに魅了された、有名画廊の社長が密室で殺されるが、貴重な絵画は手つかずのまま残されていた。
    生真面目な海埜啓二と自由気ままな甥の瞬一郎が、被害者の書いた美術書をもとに真相を追う。
    芸術論と本格推理をクロスオーバーさせた渾身の一作!

    こちらもはじめての作家さん。他の作品を読んでいないので、たまにでてくる過去の話はわかりませんでしたが、気にせず読めました。

    被害者の暁宏之が著した美術書が作中作として登場し、間に挟んで展開されるのでこれまた少々気が散ってしまいましたが、その美術論が面白かったです。
    扱われている絵画の写真があればもっとわかりやすかったのになぁ。

    そしてそのこだわりのエコール・ド・パリをうまいこと真相に絡めていました。
    大体こういうのは作者がこだわっている美術論なりを展開したいだけで、ミステリとはうまいこと融合させられずにがっかりになることが多いのですが。
    どちらの事件も納得いたしました。
    が、どちらの真相も非常にやるせないです。
    ラストシーンでほっこりさせてくれるのが救いかな。

    謎解き前には読者への挑戦状もあり、やや冗長ぎみに感じることもありましたが「正統派」という感じで楽しめました。

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著者プロフィール

1963年、山形県生まれ。2007年に『ウルチモ・トルッコ』で第36回メフィスト賞を受賞してデビュー。2011年に短篇「人間の尊厳と八〇〇メートル」で、第64回日本推理作家協会賞を受賞。2014年、『最後のトリック』(『ウルチモ・トルッコ』を改題)がベストセラーとなる。2015年刊『ミステリー・アリーナ』で同年の「本格ミステリ・ベスト10」第1位、「このミステリーがすごい!」6位、「週刊文春ミステリーベスト10」4位となる。

「2021年 『虚像のアラベスク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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