新世界より (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
4.17
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本棚登録 : 763
感想 : 117
  • Amazon.co.jp ・本 (960ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061826601

作品紹介・あらすじ

1000年後の日本。「呪力」こと、念動力を手に入れた人類は、「悪鬼」と「業魔」という忌まわしい伝説に怯えつつも、平和な社会を築いていた。しかし、学校の徹底した管理下にあった子供たちが、禁を犯したため、突然の悪夢が襲いかかる!崩れ去る見せかけの平和。異形のアーカイブが語る、人類の血塗られた歴史の真実とは。

感想・レビュー・書評

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  • 1週間ほどかかって読了。
    分厚さと濃さは、京極作品にも匹敵しそう。
    とにかくいろんな要素がてんこ盛りで、エンタメ作品として上々の仕上がりだと思う。

    ただ、これを一つの作品としてまとめる意義がよく分からなかった。
    幾つかのエピソードごとに分冊することは充分に出来たはず。
    これだけのボリュームを一気に読ませる筆力は素晴らしいと思うのだけど、だからこそ、要所要所で冊自体を分けることによって、明確な区切りを付けた方が、メリハリがよりしっかりと付けられたのではないかと思う。

    あと、壮大な世界観の割に、それを充分に活かし切れていなかったような気がする。
    前半の勢いというか、多彩性が中盤以降ではあまり見られなかった。
    スピード感はぐんぐん増しては行くのだけど、その速度に「物語」がついて行けていない感じ。
    それは、物語の方向性が大きく変わったからに他ならないのだと理解は出来るのだけど、であればこそ、やはり分冊するべきだったんじゃないかなと思う。

    と幾つかケチを付けてはみたものの、大作であり秀作であることは確か。
    きっちりと骨太で、何より「読ませる」手法の見事さに感服した。
    何より、勘所で見せる「演出」の巧みさが素晴らしい。

    随所に見られる粗々しさを、魅力として馴染ませることが出来るかで、さらに大きく化けるような気がする。

  •  夕方、子どもが帰る頃の時間となると、ドヴォルザークの「家路」が放送される。私が子どもの頃、それは「夕焼け小焼け」だったけれど、「家路」が流れる町に住んでいたこともある。そんなちょっと昔懐かしい町、神栖66町に住む渡辺早希が千年後の人々に当てた手記、という体裁の小説。ところが、神栖町という町名に異物のように差し挟まれた「66」が示すように、ここはちょっと昔懐かしい町ではない。千年後の未来である。

     人類の中から超能力者が現れ、マイノリティとして迫害され……といった話はヴァン・ヴォートの『スラン』以降、最近なら映画『Xメン』にまで引き継がれているSFのおなじみのテーマだけれど、超能力者(あるいは新人類あるいはミュータント)と人類との抗争の末の遙か未来を書いたSFというのはこれまであったのだろうか? 生き残った超能力者たちが結界に囲まれた小さなコミュニティを作っている、それが神栖66町であり、ここには超能力者たちの社会はいかにして可能かという思考実験が周到に凝らされている。
     神栖66町では超能力(といってもそれは念動力、サイコキネシスである)は呪力といわれ、学校で子どもたちは呪力を制御することを学び、呪力を使ったスポーツ(?)大会の様子なども描かれる。つまり、SFに抵抗のある読者は貴志版『ハリー・ポッター』だと思って読むといい。ハリー・ポッターのように魔力を使う人間のダークな面もこれでもかと描かれている。かなりの部分は冒険小説であり、また主人公の成長物語であり、そして「超能力者たちの社会はいかにして可能か」という回答が徐々に明かされていくミステリーでもある。他方、呪力をサイコキネシスと呼ぶSFの層も保たれており、SFの読者をも満足させるだろう。ちょっと言及されるだけだが、人間原理的宇宙論さえ臭わせている。呪力が物理的に世界を動かす力に限られ、認知系の超能力(読心力、未来予知、透視力)などを含まないのは、現代の物質文明のアリュージョンとも読める。

     単行本が出てから1年半ほどで、2巻本を京極夏彦張りの分厚い1巻の新書にしてしまった版で私は読んだ。ただただ、その厚さで買ってしまった私としては、文庫版がせこせこと3巻本で出ているのはちょっと寂しい。

  • よく練り込まれた、すっごい長い物語で、読み終わってみると主人公側が勝ったにもかかわらず苦味のある後味と途方もない疲労感。未来の人間が“呪力”という魔法の力を手に入れて、より便利に快適に暮らしていても良さそうなのに逆に疑心暗鬼に縛られてかえって不幸に感じられる。そして自分達がその不幸にも傲慢さにも気付いていない愚かしさ。早希の世代から人間は変れるのだろうか。バケネズミの犠牲をいつか理解してもらいたい。未来の架空の話だけれど現代の人類にも置き換えられそうな重いストーリーでした。

    • はこちゃんさん
      途方もない疲労感、すっごく同感です。購入して再読に備えていますが、要する気力とその後のひきずり感を思うと、なかなか…σ(^-^;)
      途方もない疲労感、すっごく同感です。購入して再読に備えていますが、要する気力とその後のひきずり感を思うと、なかなか…σ(^-^;)
      2013/09/27
    • 【静】さん
      おおっ、再読する予定なんですか?時間・気力ともに私にゃ先ずムリだな~w
      おおっ、再読する予定なんですか?時間・気力ともに私にゃ先ずムリだな~w
      2013/09/27
  • この本は厚さが5㎝近くありかなりの長編、当然持ち運びに不便なこともあり、通勤の合間に読む派の私としては、他の本と並行して読まざるを得ない事情で、結局読了するまで3~4か月かかりました。そういう訳で、一気に読んで「新世界」という異次元の世界に浸りっぱなしとはいかなかったのは残念なことです。
    もしも・・の世界なのですが、作者の想像力と生物学に長けた動植物の描写には驚くばかりです。私たちのいる今の時代が先史時代と表現される、1000年後の世界で起こった出来事を、ひとりの女性が自分の少女時代を回想する形でお話が進みます。人間が「呪力」という超能力を持ったとしたら、その世界はどうなってしまったのか・・
    想像の世界とはいえ、そこに登場する「怪物たち」の気味の悪さは不快感や恐ろしさを増強させます。そして、何より特殊な能力を持った一部の人間が、それ以外の人たちに施したことは、まさかの世界だけでは済まない差別思想の深淵をのぞかせていてぞっとするのでした。

  • 壮大な化け物ストーリー。
    呪力を得た人間達に対して、ミノシロモドキの情報と悪鬼を手に入れたバケネズミは、神交代の侵略戦争を開始する。でも本当はミノシロモドキの話した人間同士の戦争の続きだったのかな。

    中でも野狐丸(スクィーラ)の、人間の子供を捕獲し、バケネズミの奴隷として育てるという戦略には驚いた。

    これが未来の話だっていうんだから、ナウシカを思わせる。

  • 「文字通りドキドキした」

    <マイ五ツ星>
    大冒険:★★★★★

    <あらすじ>-ウラ表紙より
     1000年後の日本。「呪力」こと、念動力を手に入れた人類は、「悪鬼」と「業魔」という忌まわしい伝説に怯えつつも、平和な社会を築いていた。しかし、学校の徹底した管理下にあった子供たちが、禁を犯したため、突然の悪夢が襲いかかる!崩れ去る見せかけの平和。異形のアーカイブが語る、人類の血塗られた歴史の真実とは!?

    <お気に入り>
     瞬は口の中で真言を唱えたようだった。
    「いい? 波を消してみるよ」
     流れのままに川を下っているハクレン四号の周りから、同心円状に波紋が広がっていった。さらに今度は、その内側から、いっさいの波が消えていく。
    「ああ。すごい……」
     まるで、わたしたちを中心に周囲が急速に凍っていったように、水面から凹凸というものがなくなった。今や、水面は磨き上げられたガラスのように滑らかで、満天の星を映し出す漆黒の鏡面だった。
    「きれい。まるで、宇宙を旅してるみたい!」
     この晩のことは、わたしは終生忘れないだろう。
     ハクレンⅣ号が旅していたのは、地上の川ではない。無数の恒星が輝いている、天の川だった。

    <寸評>
     SFはその独特な世界に慣れて入り込めるまで時間がかかるが、本作も同様であった。だが入り込んでからはどっぷりと浸かってしまい、ラストは文字通り胸をドキドキ鼓動させながら読むという体験を久々に味わった。
     舞台は、現代文明が世界戦争によって滅び、「呪力」という超能力を持った人類が生きる未来の日本。同じ滅びの歴史を繰り返さぬよう、巧妙に仕組まれた教育の庇護下にある少年少女。
     彼らが偶然過去の凄惨な歴史を知るようになり、人類は再び大きな転換期へ。いなくなった友人、消される記憶……。愛したという断片的な記憶に不審を募らせる中、伝説の「悪鬼」が現れ、大量殺戮を開始する。果たして人類は平穏を取り戻すことができるのか…。

     本作で語られるのは、人間の限りなき業である。他の全ての生物世界を、自分たちを脅かさないように創り変え、薄氷の上に立つような一時の平穏。そこに安心しきった人々に、強烈なしっぺ返しが。
     生き残りを賭けた闘いに身を窶す少年少女の健気で懸命な姿に、興奮と感動を覚える。

     2段組み950ページ強という大ボリュームが、後半は嘘のようにページをめくる手がとまらない。
     地底や暗闇を進む場面が多く、真昼間に読むには適さない、かも(笑)。

  • 1000年後の日本、呪力、悪鬼、しゃべるねずみ・・・などなど
    あまり好みじゃない世界観のはずが、読み始めると一気でした。

    本当にこういう世界があるんじゃないかと思えるような
    リアル感が伝わってきて、ドキドキしっぱなし。
    描写が上手だなぁ~と感心します。
    もう一度読み返したいです。
    長編ですが絶対オススメ!

  • めちゃくちゃ面白い!
    ハードカバーが高すぎて我慢してたけど、新書で買ってやっと読めました♪
    この人は、なんて発想なんだろう!
    1000年後の世界・・・・。
    絶対お勧め!

  • ジャンルでいえばSFなのかホラーなのか。もうひっくるめて「エンターテインメント」で充分か? とにかく、わくわくしながら引っ張られ続けた長大な物語。案外さくさくとは読めましたが、読み応えはものすごーくありましたよ。
    悪鬼だとか業魔だとかの要素は、人間の本質的な「悪」の問題にも迫っていますね。「愧死機構」の設定が一番凄い。ちなみにこの「愧」ってのは、「はじる」という意味だそうです。なるほど。
    バケネズミの真実にも驚き。でも驚きながらも納得できてしまうこの設定が恐ろしいです。こんな未来、絶対にないとは言い切れませんからね。こんな「新世界」がありうるとしたら、それは果たして本当に平和な世界になりうるのか。疑問です。

  • 1000年後の日本、念動力を得た人類の話。現代よりもかなり人口を減らし、現代の文明どころか面影もわずかになった社会とか、超管理社会とか、洗脳的教育とか、デストピア感満載。でも機械文明じゃないせいか、ファンタジーっぽい……でもやっぱりSF。
    意外性はないし、先読みできちゃう部分も多いけど、読みやすい。分厚いわりには読破時間は短め。ちょっと生物が気持ち悪い。
    図書館AIは多分、陣営によって開示する情報を選んでるよね。バケネズミの成り立ちについてとか。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2020年 『コロッサスの鉤爪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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