リベルタスの寓話 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 99
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061827059

感想・レビュー・書評

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  • とっくに読み終わっている。
    御手洗くんの新作、安価な講談社ノベルズで読みたいなぁ

    愛蔵版なんて、ガラじゃないでしょーに

  • 島田荘司作品は冒頭の「こんな謎どうやって解くんだ!」読者に思わせるトンデモなさが魅力ですが、表題作でもその魅力は相変わらずです。

    とにかく起きている事態が凄まじい。猟奇殺人とひとことで言うことも憚られるほどに、これでもかというほど損壊された死体と、最有力容疑者の鉄壁のガードはどうつながってくるのか…。

    事態のメチャクチャさが、最後にひとつの真相に収斂していく手腕は、やっぱりさすが島田荘司、とうならせられます。

    特に印象深かったのは、骨髄液を背中から取るとバレるので正面から解体して抜き取った…というオチ。実に単純明快で論理的です。

    分からないのは、途中で挿入された、日本人女性をナンパする話は一体なんの意味があったんだろう、ということでしょうか。

    「クロアチア人の手」は、これもワケの分からない事態が、一気に御手洗君の剛腕でまとめあげられていく見事な作品。

    島田荘司の作品は、最近こういう「いたずらにややこしくなってしまった事件」みたいなのが多いですね。往年の「灰の迷宮」を思い出します。

    トリック自体は無茶な部分もある気がしますが、それでも納得させられます。御手洗君と石岡君のやり取りが、往年のファンには楽しくて、いつの間にか読ませられているという感じでしょうか。

    御手洗君、日本に戻ってきて早く石岡君とのコンビでまた活躍してほしいな…と今まで思っていたのですが、あんまりこだわる必要はないのかも知れません。海外にいるとはいえ、電話一本で今でも二人はつながっていますね。

  • (あらすじ)BOOKデータベースから引用
    ボスニア・ヘルツェゴヴィナの一都市モスタルで、心臓以外の臓器を
    すべて他の事物に入れ替えられるという、酸鼻をきわめる殺人事件が起きた。
    殺されたのはセルビア人の民族主義グループの男たちだが、
    なぜか対立するモスリム人の男の遺体も一緒に残されていた。
    民族紛争による深い爪痕と、国境を越えて侵食する
    オンライン・ゲームによる仮想通貨のリアル・マネー・トレード。
    二つの闇が交錯するとき、複雑に絡み合う悲劇が起こる。

    *****
    <リベルタスの寓話>
    序盤の「ブリキ人間」の挿話に謎の猟奇的殺人
    古い伝承がベースで進むのかと思いきや医療やネットゲーム等の
    現代経済のカラクリも絡んでいてワクワクしました。
    でもクロアチアがどこにあって住む人がどんな風貌をしているのか
    想像できなかったぼんやり日本人の私には社会派過ぎて
    単なる謎解き推理小説として楽しむ作品ではないなと感じました。

    民族抗争や浄化を前面に出さなくてもよかったような気もするけど
    それでは作者が届けたいメッセージが弱くなっちゃうんだろうな。

    「ブリキ人間」の伝説は元々それらしい投票方法等があって
    参考にしたらしいけど、ほんとにあると思い込んだ。
    そしてその「ブリキ人間」が動き出したのにもトリックがあって
    解明されるのかと期待してたけどただのお話で終わってた(´・ω・`)

    そうそう、途中で出てきたナンパ女子は一体なんだったのか。


    <クロアチア人の手>
    同時収録の中篇。
    序盤の色々で登場してた因縁の二人が一緒に来日?
    抗争で死んだんじゃなかったの?っていうかなんでまた俳句?
    ・・・と、序盤からハテナだらけになってしまったのと
    俳句やピラニア、特異な部屋のつくりに無理やり感があった。
    でもさすがの丸め込み方にぐうの音も「出させず」の島田節(゚▽゚)/
    義手のコード伸ばして鍵を操作するとか絶対にありえない!
    って思うんだけどその時は奇跡的に出来たんだよねって思ってしまう罠。

    あと御手洗さんが義手が木にひっかかってたのを電話の話だけで
    どうやって推理したのか、後半だっただけに一番モヤモヤしたんだけど...
    でもこれも「御手洗さんだから解ったんだね!」と納得することに。。。

    しかし今回の御手洗さんは2作共電話出演でしたが、お元気そうでなりより(笑)
    石岡先生はもう50のおっさんなのにもうちょっとしっかりして!と心配になった。
    あ、だからこそ御手洗さんのイライラ鞭があったのかも?考えすぎ?
    常人じゃ到底解けない謎だったから結局のところ
    御手洗さんの頭脳が必要だったけど石岡先生もちょっとは頑張れ!
    。。。でも情緒不安定なのが最近の石岡先生のよさでもある。。。

    馬車道時代の回想録でいいから御手洗&石岡もの読みたいです。
     

  • 『リベルタスの寓話』
    御手洗潔シリーズ

    NATO監視下のサラエボで起きた殺人事件。民家で殺害された内戦中に虐殺を働いたセルビア人民族主義者クラバッシと2人の遺体、モスリム系のクルポの遺体。腹を裂かれ内臓を取り出された遺体。セルビア、モスリムと対立するクロアチア人の犯行か?NATOに協力を求められたハインリッヒ。容疑者は末期がんで入院中のクロアチア人ディンコ。しかし犯行現場に残された犯人の血痕の血液型とディンコの血液型は別。攻めよせるオスマン軍を撃退したある少年の内臓を詰めた人形・リベルタスの寓話に隠された秘密。ネット世界で取引された仮想の金貨の秘密。

    『クロアチア人の手』
    御手洗潔シリーズ

    クロアチア内戦中に親友であったボジョビッチの密告で妻と娘を殺害され片腕を失ったイヴァンチャン。内戦終了後日本の俳句協会に招かれて来日したボジョビッチとイヴァンチャン。泥酔した2人を部屋に送り届けた俳句協会の委員。隣り合った2人の部屋。翌日密室のイヴァンチャンの部屋で発見されたボジョヴィッチ。顔と腕をピラニアに食われた遺体。ボジョビッチが見た動く腕の夢。同じ朝交通事故に会い爆死したイヴァンチャンと思われる男。静寂恐怖症と周囲に漏らしていたイヴァンチャンの腕に隠された秘密。

  • 表題作と「クロアチア人の手」の中編2作。
    御手洗さんは遠く外国からヒントをくれて、石岡くんががんばる回。

  • 「自由」「手」「戦争」。トリックが強引すぎるような。御手洗、石岡くんに冷たすぎる。

  • 御手洗が最後の方だけ活躍する感じ。

    ストーリー、トリックともに、なんか現実味がなかった。
    私には合わず、でも島田氏の文章はとても読みやすい。

  • 久しぶりに読んだ御手洗シリーズ。中編2本立て。

    「リベルタスの寓話」
    寓話のラストは想像通り。
    血液型についても想像通りだったので、謎ときとしては古典的。むしろ、背景の描写に力がこもっていると感じました。戦争とか、民族紛争とかニュースでは聞くけれど、本当に現代にこんなことが起きているのか、と思います。

    「クロアチア人の手」
    現代的なトリックといえばそうなのかもしれませんが、古典的なパズルゲームが好みなので微妙…。密室以外はよかったと思います。
    ただ、高校からの親友に殺意を抱かせたのは、やはり戦争が原因だということを思うと、暗欝たる気持ちになります。

  • 2010/05/04 読了。

  • 表題作「リベルタスの寓話」に、「クロアチア人の手」が挿入された、御手洗作品。共に中編。2つとも御手洗不在の石岡氏のもとに連絡が入り、連絡を取った御手洗が全ての謎を解き明かす。

    「リベルタスの寓話」
    ボスニアで怪事件が発生する。
    その事件とは、男性器が切断された4つの死体のうち、3つの死体は頭部が切断され、さらに内1つの死体は胴体を縦一直線に切開され、内臓が全て取り出され、代わりに携帯電話や電球等の各臓器の形状に似た物が詰め込まれていたのだった。
    そして作中語られる寓話。雑多な人種の集合体であったクロアチアで、総督の選挙で使われた「リベルタス」という子供が中に入るブリキの着ぐるみがあったこと。そして物語の最後には、神の奇跡なのか、人間の臓器に似た物品と少年の心臓をリベルタスに突っ込んだことにより、リベルタスが動き出し、オスマン帝国による侵略から民を救ったことが語られていた。
    果たしてボスニアで起きた事件は寓話を元にした見立て殺人なのか?犯人の真の動機とは?

    「クロアチア人の手」
    芭蕉記念会館で発生したクロアチア人の密室殺人事件。
    俳句の国際コンクールで優秀賞を取った2人のクロアチア人を日本が招待し、芭蕉記念会館に宿泊させたのだが、一人は扉は鉄扉で閉ざされた密室で、ピラニアがいる水槽に浸かった状態で溺死体として発見され、もう一人は、会館前の道で車に跳ねられ爆死したという。
    しかも密室で殺されたクロアチア人の右手は、ピラニアに食べられてしまったのか、肘から先がなくなっていて・・・。


    作者のあとがきで2つの作品が補完された感じ。特に「リベルタスの寓話」の設定が何か微妙だったので、読んで納得。
    「クロアチア人の手」のトリックはちょっと強引だと思ったけど、まぁ中編だからいいかって感じで。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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