決壊石奇譚 百年の記憶

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061828421

作品紹介・あらすじ

同級生の大(だい)地(ち)に誘われて地学部に入部した、高校一年生の徹(とおる)。
鉱石の話になると途端に饒(じょう)舌(ぜつ)になる彼と過ごすうちに、
徹は大地が持つ不思議な「力」を知ることに。
特定の石に触れると、前の所有者の記憶を読むことができるのだ。
大地は、同じ力の持ち主である祖父・伝(つたえ)から記憶を受け継ぎ、
昔、祖父が親友と交わした、当てのない約束を守り続けていた。
話を聞いた徹は、大地を約束から解放したいと願い、ある決意をする――。
水晶、瑪(め)瑙(のう)、琥(こ)珀(はく)、翡(ひ)翠(すい)……、鉱物が照らし出す真実とは?

感想・レビュー・書評

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  • 近頃、なんだか石づいてます。
    呪いのかかった殺生石、火星からの隕石、ときて、今回は「決壊石」。

    人が強い想いを抱いて石に触ると、その想いが石に流れ込む。
    それが石の器としての容量を超えて溢れ出したときを石が「決壊」したといい、その石は決壊させた人の強い想いを記憶として宿す。

    決壊石の記憶を読むことができる特殊な力を持ち、祖父から石と記憶を引き継いだ大地。
    舞台である北国の田舎に越してきた徹は、駅に降り立ったときに感じた一陣の風に似た大地と、彼の語る石(鉱石)の話に惹かれる。

    徹と大地の話を中心に、良治(りょうち)と伝(つたえ)、航(わたる)と賢一という彼らの祖父や父親の世代の話がそれぞれの決壊石を通して、絡みあいつながっていく。
    石の記憶は読み取るだけならまだしも、後悔などの感情までも自分のものとして受け継いでしまうので不条理というか、厄介……。受け継いだ子たちが自分のものではない苦しみに囚われて不憫です。

    読者目線だから思うことだとわかっていても、徹も良治も航も、もっと自分と相手の信頼関係に自信を持ってほしいと思うことが度々。
    相手を大事に思うあまり、嫌われること・赦されないことを怖がり、一人で秘密や罪の意識を抱え込んで、苦しむ姿がもどかしくて、見ていて悲しい。
    徹と良治と航。血のつながりなんて関係なく、真面目すぎて優しすぎるところがとても似ている。

    闇に囚われた徹が、大事だと想い・想われている人たちのもとへ還ってきますように。

    明治~昭和の中期頃と思われる時代がお話ととても合っていて、きれいで少し哀しいけれど優しい世界でした。
    三木笙子さん、次は帝都シリーズを読んでみよう♪

    • 九月猫さん
      まっき~♪さん、こんばんは!

      うわあ、うれしいコメントありがとうございます(*´∇`*)
      表紙、キレイでしょう~。この表紙、内容とす...
      まっき~♪さん、こんばんは!

      うわあ、うれしいコメントありがとうございます(*´∇`*)
      表紙、キレイでしょう~。この表紙、内容とすごく合っているんですよ。
      やわらかい世界と、優しい男の子とまっすぐな男の子の友情♪
      しかもかっこいい! ←コレけっこう重要ですよね(笑)
      友情といっても、新選組みたいに熱くはないのですが、
      お互いを思いやりすぎる心に、読んでいてもどかしかったり切なかったり。
      もし、興味を引かれたらお手に取ってみてくださいね♪

      本棚・・・わたしの本棚って統一感ナシでとっちらかってるなぁと
      思っているので、ステキなんて言ってくださってすごく嬉しいっ(〃▽〃)
      2013/07/22
    • macamiさん
      九月猫さん、こんにちは♪

      わたしも表紙きれいだなあと思いました。
      そして!
      >しかもかっこいい! ←コレけっこう重要ですよね(笑)
      重要で...
      九月猫さん、こんにちは♪

      わたしも表紙きれいだなあと思いました。
      そして!
      >しかもかっこいい! ←コレけっこう重要ですよね(笑)
      重要ですよね。(笑)

      表紙に人が描かれている場合、内容としっくりくるかどうか
      (自分のなかで)
      見過ぎしにくい気がします。
      2013/08/04
    • 九月猫さん
      macamiさん、こちらでもこんにちは♪

      表紙きれいでしょう~(*´∇`*)
      自分で描いたわけではないのに、自慢したくなるキレイさで...
      macamiさん、こちらでもこんにちは♪

      表紙きれいでしょう~(*´∇`*)
      自分で描いたわけではないのに、自慢したくなるキレイさです(笑)

      ですよねですよねっ!「かっこいい」は重要ですよね!
      しかもこれ、本当に内容と表紙がすごくぴったりなんですよ。
      柔らかい世界観がお好きでしたら、ぜひお手にとってみてください♪
      登場人物が男の子ばかりのせいか、
      BLではないのにうっすらBLっぽさも漂ってますが(^-^;)
      「愛情」ではなく、飽くまでも「友情」のお話です♪
      2013/08/14
  • 石の持つ記憶を受け継いだ人々の物語。
    それぞれの友情が美しい。
    終わり方が少し物足りない感じ。

  • 石の持つ辛い記憶を受け継いだ少年たち。彼らなら、過去を乗り越え、あったかい記憶へと生まれ変わらすことが出来るでしょう。
    それなのに、このラスト!この想像する事しかできないこの終わり方には悶絶しちゃいますね。彼らのその後はもちろんだけど、良治さんの書いた手紙を伝さんは結局読んだのよね?とか、芦原家の迷信をあまりにも深く信じてるところとか、芦原くんの想いとか、伝さんの銅鏡とか、気になるとこがいっぱいあるんだけど、本当にこれで終わっちゃうの?もったいないですよ~
    でも、航の怯えようは、良治の後悔からだけではなくて、自分が事の原因である久守の子孫だからってのもあるんじゃないでしょうか。過去の理から逃れられないのが、石の記憶を読むことができる人間の宿命なのでしょうか。この若い2人が断ち切ってほしいものです。

  • 何冊かこの著者の作品を読んだが、どれも人間関係が上手く語れていない。
    大地が忌避されている描写が薄いので、徹との親しさが≪特別≫に思えない。

    ラノベで1冊毎に鉱石にまつわる事件やら話やらをつなぎながら
    5~10冊くらいの時間をかけて「実は……」
    とやるべきあらすじを、それほど枚数のない1冊にまとめてしまった印象。

  • 思わせぶりな物語の〆方!どーしてくれんのよ?この悶々と切ない気持ちを。ハッピーエンドを想像できるからまだ良いけど。世代を引き摺る程の後悔の念を継承していながら(主人公の父)、逃げの一手ばかりと言うのは解せないな。それ程強い後悔なら「どうぞ気の済むようにしてくれ」って潔くならないものかな。守りたいもの(主人公)があるからかな。ところで三木さんの作品って、どれもそこはかとなく何気にビミョーに腐センサーの針を反応させる様な気が…。

  • 石に刻まれた「人の記憶」を読み取り、その想いを引き継いでしまう能力が招く、哀しいすれ違いと優しい友情の物語。登場人物に根の悪い人が出てこないため、アクはない。むしろ誰も彼もが相手を思いやっているので、きれいすぎて逆にやや落ち着かない気も(苦笑)。展開としては切ないが、ドロドロした愛憎劇がお腹いっぱいでちょっと心を休めたいという時には、ちょうどよいかもしれない。描かれていない事件の結末は予想のつく形ではあるものの、余韻を残すというよりは物足りなさを覚えたラストなので、できればもう少し引っ張ってほしかった。

  • 石に宿す記憶、想いがある量を超えると決壊石というものになる、という設定
    村で天狗とも言われ恐れられる大地に誘われて地学部を廃部させないために入部した徹は、大地が持つ世界観や決壊石を体験し、理解したいと望む。大地の血の繋がらない祖父の待つ人や、自分を引き取って父となった人が逃げたがる記憶からも。

    この作者は状況描写?下手かな、ふわふわしてわかりかねるところあって苦手。読解力の問題といわれるとそれまでだが、世界観を‬もっとはっきり描写してくれんとわいのような理解力ない人間にはむずかしかった。こういうYA系の編集者読解力ありすぎてわいのようなアホな読者は置いてく文体選び方すんのかな、とかたまに思う

  • 文庫とタイトル違っているけど、同じだと思う

  • 同級生の大(だい)地(ち)に誘われて地学部に入部した、高校一年生の徹(とおる)。
    鉱石の話になると途端に饒(じょう)舌(ぜつ)になる彼と過ごすうちに、
    徹は大地が持つ不思議な「力」を知ることに。
    特定の石に触れると、前の所有者の記憶を読むことができるのだ。
    大地は、同じ力の持ち主である祖父・伝(つたえ)から記憶を受け継ぎ、
    昔、祖父が親友と交わした、当てのない約束を守り続けていた。
    話を聞いた徹は、大地を約束から解放したいと願い、ある決意をする――。
    水晶、瑪(め)瑙(のう)、琥(こ)珀(はく)、翡(ひ)翠(すい)……、鉱物が照らし出す真実とは?

  • 石に刻まれた記憶を受け継ぐ三世代に渡っての物語。江戸時代、野見伝と柿崎良治ふたりの友情がうまれ、そして相手を思うが故に起きたすれ違いが、約100年の時を経て解かれようとしている…。 ラストいいところで終わるんだけれど、ラスト云々に限らず、この本には胸に優しく残る文がいくつかあってよかった。
    2人の友情は、時を超えても続き、2人だけのものではなくなって、人と人を結びつけた。

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著者プロフィール

1975年生まれ。秋田県出身。2008年、第2回ミステリーズ!新人賞最終候補作となった短編を改稿、連作化した短編集『人魚は空に還る』(東京創元社)でデビュー。他の著書に『クラーク巴里探偵録』(幻冬舎)、『百年の記憶 哀しみを刻む石』(講談社)などがある。

「2019年 『赤レンガの御庭番』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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