愛の徴 -天国の方角 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 55
感想 : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061828803
#SF

作品紹介・あらすじ

絵画、建築、神学、図像学、そして……
ヨーロッパの叡智の結晶たちに
新たな解釈と発見とを見出す「知」と「心」の旅。
その橋渡しは「最新科学」――
17世紀のヨーロッパと近未来の沖縄。
それぞれの時代に生きる二人の女性が探し出した
驚愕の真実とは――!?

感想・レビュー・書評

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  • 集中できないまま読み終わってしまった。主に自分の問題。集中してもう一度読む機会があれば、もっと楽しめるかも。

  • 第48回メフィスト賞受賞作。量子コンピューターの開発現場に翻訳者として招かれたリサーチャー(超文系)が、量子論について考えたりする話と、ルイ14世が子供の時代のフランスの孤児の女性が「狼の魔女」として暗躍?する話が交互に語られます。
    現代(に近い未来)パートでは文系が量子論について文系として考えることを口語体で語るのが楽しくて、過去パートでは狼と魔女の少し浮世から浮いた感じが面白くて、分厚い本を持ち歩くのが苦にならないくらい楽しんで読めました。いずれのパートも、「女」からの目線であるがため、女としての理論で量子論、そして「愛」の物語が語られます。ちょっと「……」が多いなあと思いましたが、物語のちからで読ませてくれました。

  • 『真実は言葉がなぜ紡がれるのかというその理由、なぜ語られたり綴られたりするかというその理由にあるのではないでしょうか?

    言葉自体やその解釈ではなく、何かを語ろうとする心の側に真実がある・・・

    言葉はどうして、どこから生まれるのでしょう?私にはその答えはわかりません。でも言葉が真実をそのままに表現しているものだとしても解釈するべき象徴だとしても、何かについて伝えたいと思ったからこそ言葉は生まれるのではないでしょうか?

    そしてきっと詩も音楽も絵画も、同じところから生まれるのだと思います。』

    難しい。これは難しい。

    大切なことを言っているような気がするんだけど、正しく読み取れた気がしない。

    解釈に囚われた作品世界がゆえに、その解釈に迷う。

  • 全600頁の内、起(300頁)承(100頁)転(100頁)結(100頁)と、かなりのスローペースな構成。

    17世紀のフランスを舞台にした主人公アナの物語と、2031年の沖縄で量子コンピュータ『にらい』でフランス国立文書館に収蔵されているすべての情報を解析する物語。2つの物語が交互に描かれる。

    <オチ>
    量子コンピュータが出力した結果を見てみたら・・・
    (以下482Pから抜粋)
    中身を見ると、魔女アナだとか、狼とか指環とか瞠目する他ない内容で、こんな文書は日記を装った偽書に違いないけど、、、
    『にらい』の中で働いているアルゴリズム、主幹の奥さんの意識モデルに基づくネットワークが”想像力”を自発的に働かすことができるのだとしたら?
    これらのデータは・・・
    リロードされたんじゃない。
    起きたことはきっと逆。
    偽造されたんだ。
    ログやナンバリング自体もそうだ。
    それらは後から創り出されたものだ。
    欺くため?・・・そうじゃない。ありえる可能性を出力するため、”世界”とはそのようでなくてはならないという、主幹の奥さんの意識の”信じる真実”を実現するためにこそ、それは創り出されたのだ。

  • 忙しい時期に細切れで読んだ+量子論の小難しい理屈のせいか内容が全然頭に入ってこなかった(^p^)
    同じメフィスト賞を受賞した図書館の魔女がもー、滅茶苦茶クオリティ高かったからハードルあげすぎたのかもだけど、それにしても。
    すごい新人が出てきた!と絶賛する気にはなれないかなぁ。

  • 未来の沖縄で行われている量子コンピューターでの研究と、フランス革命期の話。
    二つの物語をこういう風に繋げるとは!!

    言いたいことを完全に理解したとは言えないけど、
    確かに感じ取ることは出来たと思う。
    何よりこの作品が醸し出す雰囲気が最高に素晴らしいです!!

    絵画に疎い私ですが、言われてみれば確かにその通りですね。
    当たり前なことなのに、そこに気付かないとは恥ずかしい限りです。
    今すぐ美術館に行きたくなりましたw

    あと、226頁あたりの量子論の解釈の仕方が面白い。

  • 素晴らしい!!泣きはしなかったけど,実に良い物語を読ませて貰いました。
    「文学でもって宇宙を語る/数学でもって神を語る」というのは個人的に大好きなアプローチです。
    量子コンピュータの吐き出したデータを文学で翻訳することで何が起こっているのかを解き明かすというのですから,ワクワクしてしまいました。
    これでデビュー作とは凄い才能が出てきましたね。「姑獲鳥の夏」以来の衝撃です。
    同じ密度の物語が描けるのであれば(もちろん大いに期待しています)素晴らしいですね。

  • 第48回メフィスト賞受賞作。17世紀ヨーロッパで繰り広げられる中世ファンタジーであり、2030年代の沖縄を舞台にした近未来SFであり、両者を繋ぐ歴史ミステリであり、そして何より400年間に渡る壮大な「愛の徴」。ジャンル的にも内容的にも、何ら関連性の見出せないふたつの物語がひとつの流れを編み、そこに込められた想いの深さが顕現される美しさには思わず息を呑むほどでした。一見、メフィスト賞の本流から外れているようにも見えますが、高田崇史の「QED」シリーズを髣髴とさせる謎解きは、確かにメフィスト賞の枝葉の上に成り立った作品であることを再認識させてくれます。ノベルス版は書き下ろし掌編も付いてお得です。

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著者プロフィール

2012年『愛の徴 -天国の方角』(応募時タイトルは『黄金の蛇 緑の草原』)で、第48回メフィスト賞受賞。

「2015年 『永遠の眺望 (仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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