志賀直哉私論 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061830301

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  • 著者自身も小説家であり、また本書の「補遺」に収められた「志賀直哉訪問記」で回想がなされているように、志賀そのひとに直接会った経験もあるということで、おそらく著者の志賀文学体験などを織り込みながら書かれたエッセイのような内容の本ではないかと思って手にとりました。しかしじっさいに読みはじめてみると、思った以上に通常の批評のスタイルにのっとって書かれた本で、志賀のひととなりと作品との関係について立ち入った考察が展開されています。

    「あとがき」には、文芸春秋社から出された志賀直哉集に収められる伝記の執筆を依頼されたことがきっかけで、著者が本書を手掛けることになったと記されています。こうした理由もあって、批評的なスタイルが採用されたのかもしれません。

    その一方で、「解説」でも指摘されているように、小説家としての著者の立場からの述懐が文章の端々に出ていることも事実です。著者は、戦前の「白樺派」の大家である志賀と、戦後の「第三の新人」のひとりである著者の置かれている文学的立場のちがいを意識しつつ、志賀がどのように小説に取り組んでいたのかを解明しています。著者の議論を通して、ともに「身辺雑記」を記す小説家として、日本の近代以降の文学的風土のなかで小説を書いてきた二人をつないでいるものとへだてているものが浮かびあがってくるように思われます。

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著者プロフィール

安岡章太郎

一九二〇(大正九)年、高知市生まれ。慶應義塾大学在学中に入営、結核を患う。五三年「陰気な愉しみ」「悪い仲間」で芥川賞受賞。吉行淳之介、遠藤周作らとともに「第三の新人」と目された。六〇年『海辺の光景』で芸術選奨文部大臣賞・野間文芸賞、八二年『流離譚』で日本文学大賞、九一年「伯父の墓地」で川端康成文学賞を受賞。二〇一三(平成二十五)年没。

「2020年 『利根川・隅田川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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