日本共産党の研究(二) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 203
感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061830424

作品紹介・あらすじ

強大な国家権力をまえにして、党幹部たちはどう行動し、党はなぜ崩壊していったのか。特高やスパイとの闘い、銀行ギャング事件、なだれを打って続々出てくる転向者など──厳しい弾圧の戦時下で革命をめざして闘った日本共産党の激動の歴史を追う。人と事件を中心とした画期的な通史。全3冊。

感想・レビュー・書評

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  • #3243ー66

  • 第二巻は、「スパイM」が暗躍した「非常時共産党時代」と、熱海事件以降の野呂栄太郎および山本正美を中心とする共産党再建の試みがえがかれます。

    スパイMこと飯塚盈延について著者は、関係者への取材を通してスパイとしての活動を終えたあとの彼のすがたについても明らかにし、このたぐいまれな活動をおこなった人物の陥った人間的な苦悩をのぞき込むような叙述も見られます。本作の主要なテーマは日本共産党の歴史ですが、その歴史を動かしてきた人間たちの素顔にせまってみたいというのも、著者の関心のひとつにあったのかもしれません。

    また本書の最後では、佐野・鍋山の獄中転向声明がとりあげられます。彼らの転向も、人間に対する関心をかき立てるものではありますが、このテーマにかんしてはこれまでも数多くの評論がなされているためか、著者の叙述はやや控えめなものにとどめられている印象を受けます。

  • 本巻の中心は共産党と当局との攻防だが、スパイMをはじめとするスパイの活動に紙幅が割かれている。

    日本共産党の歴史を語る上でスパイの果たす役割は大きいと立花は考えているのだろう。

  • 1930年代初めの共産党。
    弾圧はますます強まり、スパイがますますはびこり、ついには組織の責任者がスパイだったり、最高指導部5人のうちの2人がスパイだったりという、まともな非合法組織だったらありえない状態になってしまう。

    ここまでくると、悲惨というよりほとんど喜劇だ。スパイである幹部がスパイである別の幹部を立場上査問しなければならないなんて不条理な出来事も出てくる。

    「これではまるで官製共産党ではないでしょうか」(p188)

    と特高側の職員が語ったほど、戦前の日本共産は完全に警察の監視下に置かれていたわけである。命がけで活動していた労働者たちは、とんだ馬鹿を見たものだ。

    最後の一撃、戦前の共産党運動の息の根をとめた事件の詳細は、次の第三巻。いよいよクライマックス。

  • 全3巻中の第2巻。戦前の日本共産党の栄枯盛衰を論じたノンフィクション。本巻は、非常時共産党との成立から、熱海事件によるその消滅、スパイMの跳梁跋扈、転向声明の続発までを論じる。

  • 2011 読了

  • 全三巻中の二巻。白眉とされているリンチ事件の記述などなど。別に僕は日本共産党やマルクス主義自体というよりもそれらの歴史的経緯、さらには歴史の"おおまかな"構造、そしてそこから何を自分の糧にできるかということに興味があるのでリンチ事件は別にどうでもよかった。内ゲバの一種としてね、理解して。それよりもラディカルな転向というものの重さ、人間らしさ、合理性、非合理性云々。うまく表現できない。人間が変わるということ、それは僕の中では重たく、理解しきれていない。転向と聞いて思い返すのは自己の変遷以外では遠藤周作の「沈黙」ぐらいだ。自分がラディカルに変わってきたこと、それに対応するものがあったこと。

    本を読むことは自己の対応物を世界に見出すことだと思う。そしてそこでとどまるのではなくて。

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著者プロフィール

ジャーナリスト、作家。1940年長崎県生まれ。1964年東京大学文学部仏文科卒業後、文藝春秋新社入社。1966年退社し、翌年東京大学文学部哲学科に学士入学。在学中から文筆活動を始め、宇宙科学から生命科学、宗教から政治まで、幅広い執筆活動を続けた。主な著作に『田中角栄研究』『宇宙からの帰還』『青春漂流』『臨死体験』など。東京大学や立教大学では教鞭も取った。2021年4月30日、急性冠症候群のため死去。享年80。

「2022年 『いつか必ず死ぬのになぜ君は生きるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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