変調二人羽織 (講談社文庫 れ 1-2)

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  • 講談社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061832961

感想・レビュー・書評

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  • 『夜よ鼠たちのために』で、すっかり連城三紀彦の短篇ミステリにやられてしまいました。『夜よ〜』に比べてこの『変調二人羽織』は筆致がやや硬いかなと思いつつも、中身の濃い物語とトリッキーな仕掛けを短篇で成立させる腕は凄いです。
    文庫の解説の読むと、単行本としての刊行は二冊目だが収録作品の発表年はこちらの方が早いらしく、それを鑑みるとこのクオリティーの高さには驚きます。

    表題作を含む五篇を収録。
    お気に入りは『ある東京の扉』と『六花の印』

    『ある東京の扉』
    出版社の編集室にミステリのネタを持ち込んだ男。至急金が必要なので買ってくれという。一応なじみなので話だけは聞く編集者。
    東京という大都市を密室に見立てた殺人事件。論理の穴を埋め、互いにプロットを練り上げてゆく二人。果たしてその結末は。
    出版社も三流、作家も三流という設定なので、ダメミスの香りがプンプン漂うのですが、最後にやられた。

    『六花の印』
    明治三十八年、新橋駅から発った人力俥夫と女。
    そして現在、空港から発った運転手と会社社長。
    二つの話が微妙にシンクロしながら進む構成が、不思議な幻惑を起こす。
    真相のサプライズはもちろん、ラストの意外な伏線もよかった。

    連城さんの短篇ミステリ、もっと追っかけたいです。

  • デビュー作の短編集です。
    表題作「変調二人羽織」は大晦日、東京の空に鶴が舞った奇妙な事件から物語は始まります。
    時を同じくしてTホテルの鶴の間で行われた独演会で伊呂波亭破鶴が不可解な死を遂げます。
    そんな怪死事件を現役の刑事が引退した若い刑事に手紙で語って聞かせるという形で話が進みます。
    読者はその語りの中で青年と共に事件の真相に迫っていく訳なのですが、実はその語りそのものに仕掛けがあるという凝った作品です。
    気に入った作品は「六花の印」と「メビウスの環」です。
    「六花の印」は時代を異にする2つの事件を交互に進行させつつ、最後に交わらせる手法が鮮やかで綺麗です。
    「メビウスの環」は結局、最後はどちらなのか分からないまま終わるのですが、その終わり方が心地よいです。

著者プロフィール

連城三紀彦
一九四八年愛知県生まれ。早稲田大学卒業。七八年に『変調二人羽織』で「幻影城」新人賞に入選しデビュー。八一年『戻り川心中』で日本推理作家協会賞、八四年『宵待草夜情』で吉川英治文学新人賞、同年『恋文』で直木賞を受賞。九六年には『隠れ菊』で柴田錬三郎賞を受賞。二〇一三年十月死去。一四年、日本ミステリー文学大賞特別賞を受賞。

「2022年 『黒真珠 恋愛推理レアコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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