占星術殺人事件 (講談社文庫)

  • 講談社 (1987年1月1日発売)
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  • 本 ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061833715

感想・レビュー・書評

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  • とっても面白かったです。御手洗潔の人間模様が自分的にどタイプで、やることなすことすべて面白かったです。やっぱり登場人物に惹きつけられるものがあると、物語がグッと面白くなります。またミステリー性も抜群に面白くて、とってもいい本だなと思いました。続編も楽しみ。

  • 御手洗シリーズ1作品目。
    確かに今の技術があれば通用しないトリック。
    もっと警察ちゃんと調べようよ。
    昔はこういう捜査だったのかな。
    動機なんて後付けに過ぎないし、
    加害者以外の人間が納得しなければ真実にはならない。
    変人キャラは好きです。

  • 私がミステリをここまで本格的に読むようになったのは、この島田荘司氏との出逢いがきっかけであった。つまり島田氏のミステリが私にミステリ読者の道へと導いた。だから私にとって島田氏の存在というのはかなり大きく、神として崇めているといっても過言ではない。一生追い続けると決めた作家、それが島田氏だ。
    とはいっても本作が私にとって初めて触れる島田ミステリであったわけではなく、最初は『御手洗潔の挨拶』であった。その経緯については『~挨拶』の感想に譲るとして、本作はその次の島田作品だった。
    実際私は『~挨拶』を楽しく読み、面白いからもっと貸してとその友人に頼んだところ、持ってきたのが本書。まず最初の印象は、題名に引いたというのが正直なところ。いまどき『○○殺人事件』というベタなタイトルと、古めかしいイラストが描かれた文庫表紙は、もし私が本屋でその本を見ても手を伸ばさない類いのものだったし、本屋でその友達に「この作品面白いよ。お勧め。買って読んでみて」と云われても決して買わない代物だった。ちなみにこの時借りた文庫の表紙は最近新たなイラストでノベルス版が出版されたが、今現在でもそのままだったように思う。私が後に買った文庫版も同じ表紙だ。
    ということで、その表紙とタイトルのせいもあり、実は借りるのには前向きにならなかったのだが『~挨拶』が面白かったので読んでみるかと軽い気持ちで手に取った。

    本書を途中で断念した読者の中には冒頭のアゾートの話がかなり読みにくい文章だったという人がけっこういるらしい。しかし海外の古典を読んでいた私にとってはこのくらいの文章は全然大丈夫で、むしろ読みやすいくらいだった。前に挙げたブラウン神父シリーズと比べてみれば一目瞭然だろう。
    さてこの6人の娘のそれぞれ美しい部位を繋げて至高の美女アゾートを作るというこの冒頭の怪しくも艶かしいエピソードはいきなり私の読書意欲を鷲掴みにし、ぞくぞくとした。昔乱歩の小説で読んだ淫靡さを感じたものだ。
    その後、名探偵御手洗登場。この昭和11年に起き、その後何年間も解決できなかったという事件に御手洗が挑む。

    で、この本を読んだ当初、この事件は実際にあった話だったのかというのが友達の間で話題になった。本を貸してくれたO君は実際にあったと云っていたがその真偽は今でも定かではない。その後の島田作品にはこういう虚実を混同させるような叙述があるので、私は創作だと思っている。というのもその後乱歩、海外古典を読んでいくと、本作のように「明敏なる読者諸氏ならばご存知であろう、あの世間を騒がし、国民を恐怖のどん底に陥れた忌まわしい事件」という件が続々と出てくる。さながら探偵小説ならびに推理小説の枕詞として当然付けなければならないコピーのようだ。

    さてこのアゾート事件を捜査する御手洗は当初自信満々で、京都の人形師の許を訪れたりとかなり活発な動きを見せる。しかしやがて捜査は行き詰る。この辺の相棒石岡の絶望感をそそる語り口がいい。
    そして真相に思い当たり快哉を挙げ、狂喜乱舞する御手洗にかなり笑ってしまった。
    そして挿入された「読者への挑戦状」に戸惑ってしまった。なぜなら私はこのとき犯人までしか推理できていなかったのだ。

    私は何故かトリックやロジックが解らなくても、なぜか犯人が解るということがよくある。本作もどうしてか解らないが犯人は多分こいつだろうと解った。読んでいる最中に貸してくれた友達が「犯人誰か解った?」と訊いた時に「多分○○だと思う」といった時に、感心したような顔をしていたのを今でも覚えている。まあ、軽い自慢話だが。

    二度目の挑戦状でもまだ私は解らなかった。そして明かされるトリックの美事な事。私も思わず快哉を挙げた。これはすごいと本当に思った。
    そしてその後も物語は全ての疑問を回収し、決着を付け、犯人の手記で閉じられる。哀感漂う物語の閉じ方はブラウン神父の純粋にロジックとトリックの素晴らしさから得られるカタルシスに加え、物語を読むことの醍醐味が心に刻まれる思いがした。

    この作品で私は島田作品をもっと読みたいという衝動に駆られた。そして再び友達に次の島田作品を所望した。
    もし本作を読んでいない方、もしくは途中で諦めた方は是非とも読んで欲しい。彼によって新本格は作られ、今の本格ミステリの隆盛の創世となったのが本作なのだから。

    その方々に老婆心ながら注意点を云っておく。
    まず無造作にパラパラと本書を捲ってはいけない。本書の肝であるトリックの図解が目に入ってしまうから。
    そしてこれが一番重要なのだが、マンガ「金田一一の事件簿」は決して読んではいけない。なぜなら本書のトリックを丸ごとパクっているからだ。私はあの時大いに憤慨したものである。幸いにして本書を読むのが先だったが。
    しかし私が島田氏を神と崇めるようになったのは本作ではない。それについてはまた別の機会に。

  • 館シリーズの島田潔の名前の元となる島田荘司先生の推理小説をいつか読みたいと思っていた。やっと読めた。

    冒頭の平吉が書いた(とされる)アゾート殺人計画は、読むのがめんどくさかったー笑

    御手洗潔のホームズ論面白かった。

    トリックは、脳トレパズルみたいだなと思いました。

  • いや~、私には文章難しかった。20ページ/日ペースで辛かったのですが、読友さんから「200ページ目以降は一気に動くよ」と教えていただき、頑張りました。本当に一気に行きましたね。何度も行ったり来たりして、読破まで1週間。トリック・動機については、「うむ!」と納得。しかし、実行可能性は「?」。もう一つ、御手洗のパーソナリティ、好きになれないなー。ちなみに私は「張宿」(有形無形の「援助運」に恵まれた宿。 小さなことにはこだわらず、周囲からの好感度は抜群、でも自信過剰で嫌われる)。うーん、でも気に入った!

  • トリックも伏線回収も素晴らしく大満足な傑作です。ただアゾートのトリックは、金田一で見たような…と思って調べたら過去に色々あったんですね。とりあえず最高な一冊でした!

  • 再読。だが記憶なし。40年前に起き迷宮入りになった殺人事件を解決!ある訳ない感じだが、関係者の手記がでてきた事により進展を遂げる。全ての証拠材料を見せて、さあ、説いてみなさいと…
    結局分からず。真相がわかってみればなるほど、トリックも面白くまあまあでした。

  • 43年間、熟成させてあったチーズをテーブルに載せる助手。
    それをズバッとまっぷたつに切る名探偵。

    さながらこんな感じでしょうか?

    この推理小説は、なんの予備知識もなく読み始めたもので、
    肝心の事件自体はすでにとうの昔に終わり、ほぼ、その時点での
    未解決事件の読み語りと二人の問答で進行していくスタイルで
    全編を描ききっているところに、作者の潔さを感じました。
    御手洗『潔』だけに!(笑)

    肝心の内容としては、題名で『占星術』を謳っているにもかかわらず、
    本編で小難しい占星術のうんちくはそれほど語られていない点が
    肩透かしを喰らったような、ホッとしたような、
    何とも言えないライトな感じです。

    それだけならいいんですが、話が進んで明白になってくる
    トリック・犯人の動機・密室構築・殺害方法と、
    大事なものがどれをとってもカジュアルな上に穴だらけで
    言い方は悪いですが、その辺りはB級品というか、
    場当たり的に見えてしまいました。

    そして極めつけは『殺人事件』と銘打ってありながら、
    作中のリアルタイムで被害者は誰ひとり発生せず、
    物語の最後で犯人が1人自殺により死ぬ幕切れです。

    これは、占星術殺人事件というより、
    正確には、占星術殺人事件・後日譚、と言えるのではないかと。
    未解決事件を事件そのものにまったく関係ないふたりが解き明かす。
    王道ミステリーとは似ても似つかない邪道っぷりですが、
    それでいて息の通った等身大の登場人物の織りなす人間模様が、
    なんともコミカルでいつつ、血が通ってるように感じられる面白さで、
    最後の最後まで思わず゙集中してしまいました。

    ここから、島田荘司氏が多くの人から支持される魅力の理由が、
    自分にもほんの少し伝わった気がします。


    作中には夏目漱石の作である草枕の引用がありますが、
    知に働けば〜・情に棹させば〜、の二つが挙げられているだけで、
    意地を通せば〜←のくだりは省かれています。
    ここがぼかされているのは、犯人である時子ないし、
    竹越刑事を暗に指したい作者なりの気持ち、と、自分は受け止めました。

    それをベースに読み解いていくと、
    犯人時子は日本の緯度経度をバックに、ここまでスケールの大きい見立て殺人を
    考える頭脳があったら、合法的に家族の支配から逃れる妙案に
    リソースを割くほうが、はるかに合理的なのではと思いますし、
    そこに意地を張るより、もっと違う道はなかったのか?という話であり、
    竹越文次郎の息子、竹越刑事に関しては、登場時には自分の信じる倫理観と
    職権を使えば大抵のものは強引に押し通せる、と、歪んだ考えを持っていますが、
    最後にはその意識に変化が表れる、と、こういうふたつの形です。

    意地を通して窮屈な結果を得るか、それとも目的に対して柔軟に対峙するか。
    大枠で作者は、このふたりの心の行き先のチェンジとして
    御手洗潔の存在有る無しで読者に提示したかったのかなと、
    うまく言葉にはできないんですが、そんな風に感じました。


    現代では、スマートフォン等の情報伝達の技術がない方が面白い、と、
    あえてそのへんを不可能にしたり、少し前の時代を描かれたり、
    市井のミステリー作家さんたちは、不自由さをどう自然に演出するか、
    目線の位置を色々考えていらっしゃいますが、なにもそれは
    まんざら今はじまったでもなく、昭和のこの占星術殺人事件の時代は、
    当時なりの最新があったわけで、この時代からも、
    『不便で思い通りにならないもの』に対する欲求があり、
    分からない事、に対する神秘性が守られた世界って、どんな時代にも
    存在する感情なんだな、と改めて痛感しました。

    久しぶりにミステリーを楽しく読めました。
    また島田荘司氏の同シリーズを読んでみたいですね。

  • 悔しい!

    読書に対してもフェアに情報が提供されており、真相が明かされたときは「悔しい!」と声をあげてしまいました。
    本作品が名探偵御手洗の初登場とのことですが、いまいちキャラ設定がよくわからないのと、ワトソン役の山岡とセリフ回しが似ていてどちらのセリフが区別がつかず読み辛さを感じたこと、冒頭の手記が非常に読みづらかったのは残念でした。

    ただ、それを払拭できる、シンプルだけど難解というトレードオフを見事に成し遂げた非常に完成度の高いトリックでした。

    名作だと思います!

  • 約30年振りの再読。冒頭の手記の読み辛さ...懐かしい。
    トリックは忘れてしまっていたので楽しめた(某作品でモロパクリでしたね...)。たまにはこうして過去の名作に触れるのもいいものですね。切ないラストも好みです。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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