占星術殺人事件 (講談社文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 593
  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061833715

感想・レビュー・書評

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  • 私がミステリをここまで本格的に読むようになったのは、この島田荘司氏との出逢いがきっかけであった。つまり島田氏のミステリが私にミステリ読者の道へと導いた。だから私にとって島田氏の存在というのはかなり大きく、神として崇めているといっても過言ではない。一生追い続けると決めた作家、それが島田氏だ。
    とはいっても本作が私にとって初めて触れる島田ミステリであったわけではなく、最初は『御手洗潔の挨拶』であった。その経緯については『~挨拶』の感想に譲るとして、本作はその次の島田作品だった。
    実際私は『~挨拶』を楽しく読み、面白いからもっと貸してとその友人に頼んだところ、持ってきたのが本書。まず最初の印象は、題名に引いたというのが正直なところ。いまどき『○○殺人事件』というベタなタイトルと、古めかしいイラストが描かれた文庫表紙は、もし私が本屋でその本を見ても手を伸ばさない類いのものだったし、本屋でその友達に「この作品面白いよ。お勧め。買って読んでみて」と云われても決して買わない代物だった。ちなみにこの時借りた文庫の表紙は最近新たなイラストでノベルス版が出版されたが、今現在でもそのままだったように思う。私が後に買った文庫版も同じ表紙だ。
    ということで、その表紙とタイトルのせいもあり、実は借りるのには前向きにならなかったのだが『~挨拶』が面白かったので読んでみるかと軽い気持ちで手に取った。

    本書を途中で断念した読者の中には冒頭のアゾートの話がかなり読みにくい文章だったという人がけっこういるらしい。しかし海外の古典を読んでいた私にとってはこのくらいの文章は全然大丈夫で、むしろ読みやすいくらいだった。前に挙げたブラウン神父シリーズと比べてみれば一目瞭然だろう。
    さてこの6人の娘のそれぞれ美しい部位を繋げて至高の美女アゾートを作るというこの冒頭の怪しくも艶かしいエピソードはいきなり私の読書意欲を鷲掴みにし、ぞくぞくとした。昔乱歩の小説で読んだ淫靡さを感じたものだ。
    その後、名探偵御手洗登場。この昭和11年に起き、その後何年間も解決できなかったという事件に御手洗が挑む。

    で、この本を読んだ当初、この事件は実際にあった話だったのかというのが友達の間で話題になった。本を貸してくれたO君は実際にあったと云っていたがその真偽は今でも定かではない。その後の島田作品にはこういう虚実を混同させるような叙述があるので、私は創作だと思っている。というのもその後乱歩、海外古典を読んでいくと、本作のように「明敏なる読者諸氏ならばご存知であろう、あの世間を騒がし、国民を恐怖のどん底に陥れた忌まわしい事件」という件が続々と出てくる。さながら探偵小説ならびに推理小説の枕詞として当然付けなければならないコピーのようだ。

    さてこのアゾート事件を捜査する御手洗は当初自信満々で、京都の人形師の許を訪れたりとかなり活発な動きを見せる。しかしやがて捜査は行き詰る。この辺の相棒石岡の絶望感をそそる語り口がいい。
    そして真相に思い当たり快哉を挙げ、狂喜乱舞する御手洗にかなり笑ってしまった。
    そして挿入された「読者への挑戦状」に戸惑ってしまった。なぜなら私はこのとき犯人までしか推理できていなかったのだ。

    私は何故かトリックやロジックが解らなくても、なぜか犯人が解るということがよくある。本作もどうしてか解らないが犯人は多分こいつだろうと解った。読んでいる最中に貸してくれた友達が「犯人誰か解った?」と訊いた時に「多分○○だと思う」といった時に、感心したような顔をしていたのを今でも覚えている。まあ、軽い自慢話だが。

    二度目の挑戦状でもまだ私は解らなかった。そして明かされるトリックの美事な事。私も思わず快哉を挙げた。これはすごいと本当に思った。
    そしてその後も物語は全ての疑問を回収し、決着を付け、犯人の手記で閉じられる。哀感漂う物語の閉じ方はブラウン神父の純粋にロジックとトリックの素晴らしさから得られるカタルシスに加え、物語を読むことの醍醐味が心に刻まれる思いがした。

    この作品で私は島田作品をもっと読みたいという衝動に駆られた。そして再び友達に次の島田作品を所望した。
    もし本作を読んでいない方、もしくは途中で諦めた方は是非とも読んで欲しい。彼によって新本格は作られ、今の本格ミステリの隆盛の創世となったのが本作なのだから。

    その方々に老婆心ながら注意点を云っておく。
    まず無造作にパラパラと本書を捲ってはいけない。本書の肝であるトリックの図解が目に入ってしまうから。
    そしてこれが一番重要なのだが、マンガ「金田一一の事件簿」は決して読んではいけない。なぜなら本書のトリックを丸ごとパクっているからだ。私はあの時大いに憤慨したものである。幸いにして本書を読むのが先だったが。
    しかし私が島田氏を神と崇めるようになったのは本作ではない。それについてはまた別の機会に。

  • 現代ミステリーの人気投票では必ず上位に来る作品。私も『十角館の殺人』からのAmazonさん紹介で購入。

    発刊当時、隆盛を極めていた社会派サスペンスに一石を投じる形でトリック重視のミステリーという新たな潮流を作った。こうした超名作ミステリーの宿命として漫画『金田一少年の事件簿』で「アゾート殺人事件」のトリックがオマージュ(まんま?)されていたので衝撃は少なく、むしろ世間の評判で期待値が上がってしまっていたため「これがトリック?」とやや物足りなさを感じてしまった。(本作品のせいではない)

    本書は御手洗の(一瞬だけの)鋭い切れ味もさることながら、石岡の素っ頓狂な行動描写に多数を割いているところも面白い(御手洗が「それは関係ない」と言い放つ件は石岡と我々読者の努力を一蹴する小気味よさがある)。またプロローグとエピローグの構成が良く、最後はミステリー特有の哀愁で締めくくられる。

    トリックが有名になり過ぎた弊害は否めないが、ミステリー作品として非常に面白かった。

  • 「異邦の騎士」に続く御手洗潔作品。やっぱり御手洗潔はいい。
    40年前に起きて、今まで誰も解くことができなかった「梅沢家・占星術殺人事件」の謎を石岡さんと解いていこうとする御手洗さん。威張った態度の竹越刑事に1週間で謎を解いてみせると言ったものの、強度のうつによりスタートでつまずいていた御手洗さんはなかなか推理が進まず・・・。
    梅沢平吉の手記が読みにくくて時間がかかったけど、二人の友情がよくわかり、犯人にまた竹越文次郎氏に対する御手洗さんの優しさもよくわかる素晴らしい作品でした。

  • 画家の梅沢平吉が自宅のアトリエで密室のなか殺された。その遺書には若い処女から体を一部分づつ切り取り、それらを合成して完璧な肉体を持つ女性「アゾート」を作成する旨の内容が書かれていた。その後梅沢の娘である6人の姉妹が体の一部を切り取られた状態で遺体となって各地で発見される。猟奇的かつ怪奇的で不可解な点も多い「占星術殺人事件」。数多くのミステリー好きが40年来真相が解けず、迷宮入りとなっていたこの事件に、占星術師の御手洗潔とその親友の石岡和己が挑む。

    1つの事件を中心に謎が謎を呼び、どこか鬱蒼とした重苦しさに包まれた全体と、事件が交錯したような怪奇な事件の数々に、頭を整理しつつも先の読めない展開が続く。なんといってもみんな怪しい。そんな暗然とする事件に挑むのは変わり者の御手洗と生真面目な石岡の2人。憎まれ口を叩き合いながらも少しづつ核心へと迫っていく2人は作品のなかで良いクッションになった。
    テレビドラマなど他作品にも影響を与えたミステリー。切なさもあるが、最後の最後まで気が抜けない。
    島田荘司氏デビュー作。

  • 島田先生は読者に一緒に謎を考えてほしいみたいですが、推理する気のまっくない私には、前半の長さは正直辛かったです。が、後半のトリック解決では、なるほどね!と納得。あんなの絶対思い付かない!!この解説のために300ページがあったのね!と前半の辛さが一気になくなりました。犯人当てたるぞと思って読む人はもっと楽しめてるんじゃないかと思います。めげずに読みきってよかった。探偵役の御手洗さんの奇人っぷりもよかったです。犯人当てとかできないけど、続きも読みたいです。

  • 島田先生のデビュー作にして、代表作の一つ。でも、小生はトリックを見破り、犯人も当てました!(ちょっと自慢です)

  • 島田荘司が名探偵御手洗潔とともに世に問うた新本格物の扉を開く傑作。
    アゾートを作りあげるための連続殺人とその驚くべき結末とは。
    ホームズを彷彿とさせる御手洗潔のキャラ設定とワトソン役の石岡さんとの会話、そして、衝撃的なトリックという古くて斬新な設定が、ミステリー界の新潮流を感じたものでした。
    かなり前の話だが、とある有名漫画がそのプロットを無断借用したとして、とある週刊誌で島田荘司が憤っていたっけ。(笑)
    ミステリーのロジカル面で初期御手洗物を超える驚きに、最近出会わなくなったなあ。

  • 本格ミステリー界の巨匠・島田荘司のデビュー作。

    久々に本格ミステリを読みたくて古本屋で購入したけど、読み始めてすぐに「改訂版を買えばよかったかも…」と思ってしまいました。

    時は昭和十一年、梅沢平吉の遺書から始まるのだけど、これがまた読みにくい。
    平吉は自分と弟の娘たちの身体の一部分を占星術になぞらえてつなぎ合わせるアゾート制作の計画を思いつく。しかしその前に密室で何者かに殺され、娘たちもそれぞればらばらに死体が遺棄される。
    事件から40年後、探偵・御手洗潔と友人の石岡くんがこの謎に挑むのだけど、占星術やら錬金術やらの話が飛び交って、娘たちが遺棄された場所の緯度や経度の説明とかなんのこっちゃ…。
    でもきっとこれも重要なヒントなんだからとじっくり読み込む。
    そして生前の平吉を知る人物を探そうと京都へ捜査に行くところから、あちこち振り回してくれて徐々に面白くなってきます。
    後半は本格ミステリの醍醐味!犯人の正体とトリックの種あかし。

    綾辻行人もそうだけど、この作品も時代や登場人物の醸し出す雰囲気が独特で「そんなバカな」とか「いやいや無理でしょ」とか思わせない。
    作品にもよりますが、私は犯人当てにはそんなに興味はないので、するすると謎が解明されていく様子にスッキリします。
    最後、犯人の手記で感慨深さを残すあたりもさすがだなぁ。
    こういう動機は本当にやるせない気持ちになりますね…。
    しょうもない理由じゃなくてよかった(笑)

    御手洗シリーズは「星籠の海」が映画化されたようでこちらも気になります。

  • 発売当時(30年以上前?)の読者たちが羨ましい。
    この謎解きに度肝を抜かれただろう。

  • 裏表紙のレビューには「怪事件は、ひとりの画家の遺書から始まった。その内容は六人の処女から肉体各部をとり、星座に合わせて新しい人体を合成するというもの。画家は密室で殺された。そして一か月後には、六人の若い女性が行方不明!奇想天外の構想、トリックで名探偵御手洗潔をデビューさせた、衝撃的傑作。」と書かれています。

    と、まあ 文体としては読みながら、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ調だと薄々感じながら、巻末には著者がシャーロック・ホームズに書かれている とあります。やっぱり、と思いながら読了しました。
    乱歩・横溝といい、海外の古典本格推理小説の手法を踏襲しています。なんだか、初めて読んだ作品なのに懐かしい感じがしました。「ベーカー街に住むイギリス人は・・・」なんて出てくると、おのずと連想されますね。
    勿論、古典探偵小説をざっくり読んだ経験から分かることかもしれないが、初めて読む人にも十分楽しめる作品だと思う。

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著者プロフィール

島田 荘司(しまだ そうじ)
1948年、広島県生まれ。武蔵野美術大学卒。
1981年、『占星術殺人事件』でミステリー界に衝撃的なデビューを果たして以来、累計600万部に達した名探偵・御手洗潔シリーズや、刑事・吉敷竹史のシリーズを中心に数々の傑作、意欲作を発表。
2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。
「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の立ち上げ、選考を務めるなど、新たな才能の発掘と紹介にも積極的に取り組み、名実ともに現代本格ミステリーの旗手となっている。
近著に『アルカトラズ幻想』(2012年 文藝春秋)、『星籠の海』(2013年 講談社)、『幻肢』(2014年 文藝春秋)、『新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険』(2015年 新潮社)がある。

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