築山殿(つきやまどの)無残 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061838635

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  • 徳川家で天正七年(一五七九年)に築山殿事件が起きる。徳川家康が武田勝頼への内通を理由として正妻・築山殿と嫡男・信康を殺害した。織田信長が家康に殺害を命じたとする見解と、徳川家内部の浜松衆と岡崎衆の内部抗争とする見解がある。

  •  徳川家康の正室・築山御前の半生を描いた歴史小説。
     今川家の後ろ盾を失った築山殿こと瀬名姫と、嫡男・信康の許に嫁いだ織田信長の娘・徳姫との軋轢が導火線となり、母子の粛清を引き起こした悲劇を描く。
     家康との婚姻自体、今川と松平の紐帯であり、政略結婚が歴とした政治である以上、瀬名姫が素性と家柄を重視するのは無論のことだが、今作の彼女の帰属意識は殊に強い。
     今川一門に属する自負と美意識を抱き続ける瀬名姫と、後進の新興勢力である織田家の子女である徳姫との、女主人としての擦れ違いや葛藤が丁寧に描写されている。
     そのきめ細やかさは、現代の嫁姑間の不和にも通じており、理解しやすいがあまり、読み手の苛つきを誘引するだろう。
     一方で、育ちに恵まれた環境ではなかった徳姫の未熟さ、振る舞いのガサツさ、讒訴に陥る幼稚さが酷く目につく。
     こういう女が妻なら、そりゃあ男は寄り付かなくなるだろうと納得せざるを得ない。
     政略結婚の『駒』としては、難しい相手に嫁がせるには抜きん出た才覚が必須だが、本編の織田陣営は徳姫の愚かさも材料の一部とし、徳川方を切り崩す一助としたのではないかと勘繰りたくなってくる。
     身分ある女性の周囲には、取り巻きの侍女が多くいるのが自然であり、黒子の彼女たちの思惑や裁量も込みで、互いに真意が届きにくい距離が生まれるもどかしさも含めて、当時の言動を読み解く必要性も感じられた。
     築山御前と信康母子の処刑は、作中でも冤罪とされ、乱世の政略が渦巻く渦中に、スケープゴートとしての役割を振られた者たちの悲運が重い。

  • タイトルで察せられる通り、家康の正室築山殿暗殺と信康自刃に至る経緯を徳姫の嫁入りから描いたものです。説は様々ありますが、これは英邁信康説を採っています。従来の築山殿や五徳像とは若干毛色を異にしたものであることも特筆するに価するかなと。小さな擦れ違いが小さな亀裂となり、それが取り返しのつかない広がりを見せる、その過程が繊細に描かれていました。こんな風に様々な人の想いや思惑が混ざり合い重なり合った結果辿り着いてしまった悲劇だったのかもしれないなぁとしみじみ思いました。我が静岡県での出来事でもありますので、また訪ねた事のある浜松城や二俣城などが舞台となっていることもあり感慨も一入です。

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著者プロフィール

1932年、長崎市に生まれる。54年佐賀大学教育学部卒。高校教師を経て編集者となり、のち作家活動に入る。著書に『龍馬の妻』(ちくま文庫)、『西郷家の女たち』(文春文庫)、『濃姫孤愁』(講談社文庫)、『秀吉の野望』(光文社時代小説文庫)など多数。

「2016年 『真田幸村の妻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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