放課後 (講談社文庫)

  • 講談社 (1988年7月7日発売)
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本 ・本 (353ページ) / ISBN・EAN: 9784061842519

作品紹介・あらすじ

校内の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒で死んでいた。先生を2人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女・剣道部の主将、先生をナンパするアーチェリー部の主将――犯人候補は続々登場する。そして、運動会の仮装行列で第2の殺人が……。乱歩賞受賞の青春推理。

感想・レビュー・書評

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  • 単なる偏見なのだが、学園が絡むミステリはあまり好みでは無い。読まず嫌いしていたこちらの作品。
    てっきり 平穏な学園生活に降りかかるサスペンスを想像していたら、初っ端から命を狙われるお先生。ズンズン読み進める事になる。

    動機に大きく納得。〇って凶器になるんだなぁ。
    そして「捨て石トリック」。
    繊細なトランプタワーを完成の途端にぶち壊す芸術家しかり、なんと大胆な破天荒ぶり。その流石の発想力に私のお口はあんぐりだった。

    最後にずっとスタンバっていた爆弾が盛大に破裂する、もうこの全てを無駄にしないトリックと伏線に
    面白いを超えて「凄い...」と脱帽しっぱなしだ。

  • 結末を全く覚えていなかったため再読
    そう来たかと思う反面、予想通りという部分もある。
    東野圭吾のデビュー作ということだが、今とは結構作風が違う感じ。
    東野圭吾も成長したんだなと上から目線で読了笑

  • 真相を知って苦しくなりました。
    高校生という若さ、女性の弱みにつけこむ事件、
    どんどんエスカレートしていく被害。
    全然犯人も理由も気づけず、最後にやられた…という感じ。

  • 東野圭吾さんデビュー作『放課後』
    第三十一回江戸川乱歩賞受賞作

    物語の舞台は私立精華女子高等学校
    主人公である数学教師の前島はクールで生徒に干渉しないことから「マシン」と呼ばれている。

    ある日、校内の更衣室で生徒指導の教師の死体が見つかった。密室で起こった青酸中毒の犯人は一体誰なのか・・・

    喫煙で停学処分になる生徒や、
    文武両道で剣道部の主将。
    前島を誘惑してくる洋弓部の主将もいれば
    独身で男遊びの好きな女教師もいる。
    疑わしき犯人候補が次から次へと登場する。
    そんな中、第二の殺人が起きる・・・


    いやぁ、面白かった!
    舞台が女子高とあって生徒と教師が続々登場する。
    これだけ沢山登場させても読み手が混乱しないのは、キャラクター分けと主人公との関係性の描き方が巧みだからと思う。

    それぞれに個性豊かな面々と学園風景が相まって、読み進める内に犯人予想がコロコロ変わり、しまいには全員怪しく思えてくる。笑
    東野圭吾さん作品には珍しく、時折挿絵でトリックの図解を見せてくれるのも新鮮だった。まさに推理しながら読み進めるという醍醐味を十分に楽しめる作品だった。

    随所に細かく丁寧に張り巡らされた伏線と、その回収に至るまでの構成力は流石の一言。最後の最後に、実は学園だけが舞台ではなかったんだ!というオチの付け方も捻りが効いていた。この最後の一撃が見事だった!
    どうしてタイトル『放課後』なんだろう?
    が胸にストンと落ちてきた。

    全体を通してスケールの派手さは無かったが、青春推理小説ならではの犯罪心理がとてもリアルに響いた。犯人の動機の発想力にも驚いたが、高校生という多感な時期ならではだろう。確かに想像してみれば納得のいくものだった。
    これがデビュー作とは・・・
    東野圭吾さん、凄すぎる!

    今から約40年前の1985年の受賞作品。
    時代背景が現代と異なる部分に、時々懐かしい気付きや発見をする方も多いと思う。これを違和感と感じるとちょっと寂しい。
    東野圭吾さんを初めて読む方にも、既に沢山読まれている方にも是非お勧めしたい作品。



  • 今、一番読まれている作家といえば東野圭吾さん。そんな非常に有名な方のデビュー作は未読だったので、読んでみた。
    これがデビュー作かと思わせるほどのトリックと伏線の散りばめ方。大胆な伏線ではないが、トリックが明かされると「そういえばそんな会話があったな」と思わせる伏線の数々。
    そして女子高が舞台となっている点も良かった。思春期の難しい年頃ならではの動機。理解し難いような、理解できるような複雑な感情を抱いた。
    事件が起こるたびに、個人的な犯人候補はどんどん変わり、誰が怪しいかも分からなくなった。明かされて、納得という感じ。

  •  デビュー40周年の年に、長らく積んでいた乱歩賞受賞のデビュー作を読んでみた。

     登場人物の背後関係やさり気ない描写が伏線となり、収斂する快感が堪らない。
     なんとか密室のトリックを解こうと脳ミソをフル回転したが、あえなく完敗した。

     女子高に漂う空気感の描写力も濃密で、世界観への深い没入を促してくれた。前島の周囲の教師―村橋、麻生などや、生徒たち―ケイ、陽子などの、個性的で一癖も二癖もあるキャラづけが上手く、登場人物たちの織り成すドラマも読み応えがあって面白かった。

     途中でなんとなく犯人が分かったので動機はなんだろうと考えながら読んでいたが、さらに二重三重の仕掛けがあり、犯人の察しがついたからと言って決して天狗になってはいけないのだと思い知らされた(笑)。

     デビュー作の時点でこんな傑作を書かれただなんて、東野先生はやっぱりすごい。

  • 東野圭吾さんのデビュー作⭐︎読む前に自分の生まれた年でなんだか嬉しくなり少しにやける。
    前半あんまり好きくないかもーと思いながら読んでたけど。。後半になるにつれやはり楽しい。伏線にしろトリックにしろ、これがデビュー作なんだとビックリ!!文章も安定の読みやすさ。本当にすごい人だ。。

  • ザ推理小説。今回は学園が舞台で登場人物が学校という閉鎖空間の中での複雑な思いが入り混じった内容。

    年齢もそうだが、学校という空間は今なお閉鎖的な印象を受ける。
    その閉じられた中で何百人もの人がいるのだから、その人間関係も複雑になるだろう。

    最後のどんでん返しは題名の回収のように思えるが、何なとなく隠し球を投げられた気分で腑に落ちない。

  • 東野圭吾氏のデビュー作にして乱歩賞受賞作品。私にとっても東野作品初体験である。
    第1作にはその作者の全てが盛り込まれているというが、この瑞々しさや感傷的な文体は単に女子高を舞台にしただけに留まらず、この作者の特色と云えるだろう。

    一読しての印象は、非常にバランスの取れた作品だという事。
    実に無駄がなく、力みすぎず、落ち着いており、淡々としているのだが、色々なエピソードが散りばめられていて飽きさせない。事前に知っている作者の経歴から、この前島の人物像は作者の人と成りが色濃く反映されているのは間違いない。
    この作品を読むだけで東野氏に作家としての何かがあるのは十分に感じられ、今の活躍も納得の出来映えだ。

    物語は女子高を舞台に2つ(3つ?)の殺人事件が語られる。そのうち最初の1つは密室殺人で、しかも2つの真相を用意しているという凝りよう。2番目の殺人は体育祭という衆人環視の状況下での殺人。特にこの殺人シーンへの持って行き方は読み進むに連れて不安が沸々と募り、淡々とした文体が却って凄みを増す。

    この文体はその後の事件解明シーンにも十分な効果をもたらしており、ページを繰る手を止まらせなかった。

    そして主人公を取り巻く登場人物も非常に印象的だ。
    教師仲間の村橋や藤本、キーパーソンとなる麻生恭子、そして生徒の高原陽子やケイこと杉田恵子、剣道部主将の北条雅美などキャラクターの描き分けが非常に上手く、混同する事が無かった。
    前にも述べたが、彼らと主人公前島とのエピソードが非常に効果を上げている。

    これらが学校という特殊な閉鎖空間で繰り広げられるその独特の雰囲気を実によく醸し出していると感心した。
    体育祭の準備風景、体育祭の生徒たちの躍動感、放課後の部活の雰囲気など、教師でない私がもはや二度と体験できない空気を十二分に堪能させてくれた。そして、主人公の口から語られる学生にとって憎悪の対象となるきっかけについての説明は、正に的を射ており、郷愁をそそられた。

    とまあ、賞賛の言葉ばかりだが、やはり今の時代ではちょっと古めかしさを感じずにはいられない。これは仕方の無い事なのだが、宮坂恵美の手首のサポーターの真相、村橋のポケットに入っていたコンドーム、麻生恭子の男癖の悪さ、殺人の動機となったエピソード―オナニーの件―などは全てが多様化した今(正確には“乱れた”今)、珍しい物ではなく、衝撃の度合いは低くなっている。
    この前に読んだクーンツの言葉を借りるならば、狂乱の90年代を経た現在では当たり前のようになっているのだ。
    連日報道される教師の猥褻事件、女子高生のリストカット、援助交際などなど。これを減点の対象にするのはアンフェアかもしれないが、読後のカタルシスという点で見ればどうしても落ちてしまう。

    あと、やはり主人公前島が妻に堕胎を促すシーン。かなりの時代錯誤感覚を覚えた。
    低収入が理由とは云え、教師がああいうことを云うだろうか?
    これは最後に繋がる重要なエピソードなのだが、どうも腑に落ちない。ラストシーンは納得できる。しかしそこへ繋がるキーパーツに粗雑さを感じてしまった。

    色々書いてきたが、本作が水準以上の作品であるのは間違いない。2005年に直木賞を獲って以来、ますます勢いに乗る東野圭吾氏の作品をこれからどんどん読んでいくのが非常に楽しみだ。

  • 30年以上前の作品ということもあり、時代を感じる。
    特に女子高生の言葉遣いが20年ほど前に女子高生だった私にはなんとも違和感あり。
    「~だわ」「~ようね」「問屋が卸さないわよ」あたりが気になって仕方なかった。
    でも解説が高校教師をしていた方で、言葉遣いがまさにこのとおりと書かれていたので、驚いた。

    それはさておき、私はある人物を最初から疑っていた。
    でもなかなか前面に出てこないまま終盤にさしかかり、別の人物の犯行であることが明かされた。
    殺人の動機もいまいちに感じていたところ、最後の最後にその人物がやってくれた!
    だよねーだよねー、明かされた犯人の動機より、こちらの人物の動機のほうが断然理解できると思った。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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