回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫)

  • 講談社 (1988年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (196ページ) / ISBN・EAN: 9784061843196

みんなの感想まとめ

テーマは、他人の話を通じて自己の無力感や人生の循環を描くことにあります。短篇小説集は、「これは小説ではない」との宣言から始まり、主人公が他人の物語を聞きながらも、自らの人生の停滞を感じる様子が描かれて...

感想・レビュー・書評

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  • 短篇小説集であるが、おかしな始まり方をする。

    「はじめに・回転木馬のデッド・ヒート」と題された、最初の文章は、以下のように始まる。

    【引用】
    ここに収められた文章を小説と呼ぶことについて、僕にはいささかの抵抗がある。もっとはっきりと言えば、これは正確な意味での小説ではない。
    【引用終わり】

    すなわち、「これは小説ではない」との宣言と共に始まる小説なのである。
    なぜ、こんな回りくどい小説が書かれるのだろうか?
    主人公は、他人の話を聞くことが好きで、他人の話の中に面白みを見出す才能を持っていると自負している。従って、色々な人の話を聞くことになるが、それらは主人公の中から出ていくことはなく、主人公の中に「おり」のようにたまっていく。しかし、他人から聞いたそれらの話は、「話してもらいたがっている」ので、その「おり」を、小説ではない、「このような形のスケッチにまとめるしか手はなかった」ので、これを書いているとしている。しかし、他人の話を聞けば聞くほど、主人公は無力感に捉われることになる。「我々はどこにも行けないというのがこの無力感の本質」だと主人公は言う。自分の人生は、「定まった場所を定まった場所で巡回しているだけのこと」であり、「どこにも行かないし、降りることも乗りかえることもできない」のである、それは、まるで、メリー・ゴーラウンドのようだと主人公は感じている。
    どういうことだろう?自分の人生と他人の人生は交差することはないということを言っているのだろう。「それでも」なのか「だから」なのかは分からないが、この主人公は、別の回転木馬に乗っている人の話を語る。それは、まるで、「回転木馬のデッド・ヒート」のように、本質的に、何の意味もないことなのに。でも、それが小説だよ、ということなのだろうか?
    う~ん、よく分からない。

  • 以前も何度か読んだ作品。
    特に「プールサイド」には影響を受けて、人生の折り返しポイントをしっかりと意識しながら、今も生きている。
    私の生き方を変えた本だ。
    どの話に描かれた「心」も、じわじわと私にしみ込んでいくような思いがする。
    昔よりも理解ができる気がする。
    「理解」というより、私の中にも同じようなものがある、という感覚かもしれない。
    捨てられない本だ。


    2002.7.11
    現実におこった、とは、やや信じがたいような話もいくつかあった。
    みんな、何かしらをかかえて生きているのだなぁ、と思う。
    回転木馬。
    まさしく、そうかもしれない。
    己がつくり出した敵と、必死になってたたかっている。
    たいてい、そういったことなのかもしれない。
    ひとつ、今の私の心に残った言葉がある。
    「今は亡き女王のための」のスポイルされた彼女を妻とした男の言葉。
    「とにかく、僕は彼女を愛していました。たとえ彼女が彼女自身や僕やまわりの何もかもを傷つけまわったとしても、僕は彼女を手放す気はありませんでした。夫婦というのは、そういうものです」
    正直、私はそんな女を妻とした男をバカなだけだ、と思っていた。
    今でも、完全に疑問が払しょくされたわけではない。
    でも、彼は、この美人の自己中女を本当に愛していることだけはわかる。
    すごいなぁ、と思う。
    私はどうだろう。
    苦しい時、ちゃんと一緒にふんばろうと努力できるだろうか?
    きっとそうしよう、と思う。

  • 2002/09/18

    また村上春樹の本の話になっちゃったけど、これも短い文章を集めたものです。村上氏の前書きによると、小説でもなくノンフィクションでもなく、「人から聞いた話」を文章型の「スケッチ」として書き留めたものを集めて文庫本型の「スケッチ・ブック」として出版した様です。「本当にこれ、実際あった話なのかなぁ」と思わず怪しんでしまうところもありますが、「本当に誰かから聞いた話」ということを信じて読むと関心してしまいます。実際に聞いた話を上手く文章に直すのって、かなり難しいことですよ。やってみるとよく分かるけど。村上氏の本って大抵内容よりも「表現法」等の「文章を書く上手さ」がミソだと私は思ってるんですけど、これもまた彼の「文章を書く上手さ」のショーケースですね。

    「本当に誰かから聞いた話」という事実(設定?)があるので、『夢で会いましょう』とはまた違う感じです。「本当にこんなことあったんだろうか」「それにしても上手く書き留めてるなぁ」とか思いながら、ちょっと不思議な気持ちで読みました。でも「まろやかな面白味」という共通点はあります。基本的に村上春樹の本ではそういうのが多いのかな。それほどトゲがなくて、どことなく落ち着いた感じがする。でもそれは私が読んだだけの範囲で言えることであって、彼の文章について全般的に言えることかどうかは知りません。

  • ・レーダーホーゼン
    男への嫌悪感。おり。娘の立場

    ・タクシーに乗った男
    上の逆。母の立場。捨て去る話。

    ・プールサイド
    順調な男が老いに不安を感じる話。それを小説にする。小説とは?

    ・今は亡き王女のための
    スポイルされきっている彼女が子供を失くす。

    ・嘔吐1979
    レコードを交換する男に、嘔吐と電話が続く。

    ・雨やどり
    編集の仕事を追いやられた女性がお金で男と寝る話を聞く。

    ・野球場
    覗きをしていた銀行員の話を聞く。かれは小説も書いたがしっくりこなかった。

    ・ハンティング・ナイフ
    唯一、聞いた話ではない。車椅子に乗った青年とナイフについて語り合う。

  • 現代の奇妙な空間――都会。そこで暮らす人々の人生をたとえるなら、それらはメリー・ゴーラウンド。人はメリー・ゴーラウンドに乗って、日々デッド・ヒートを繰りひろげる。人生に疲れた人、何かに立ち向かっている人……、さまざまな人間群像を描いたスケッチ・ブックの中に、あなたに似た人はいませんか。

  • タクシーに乗った男
    2ページ目
    インタヴュアーはそのインタヴューする相手の中に人並みはずれて崇高な何か、鋭敏な何か、温かい何かをさぐりあてる努力をするべきなのだ。どんなに細かい点であってもかまわない。人間一人ひとりの中には必ずその人となりの中心をなす点があるはずなのだ。そしてそれを探りあてることに成功すれば、質問はおのずから出てくるものだし、したがっていきいきとした記事が書けるものなのだ。それがどんなに陳腐にひびこうとも、いちばん重要なポイントは愛情と理解なのだ。

  • 所詮、あなたと私じゃ育ちが違い過ぎるのよ。ご飯とライスの違いかな!文章は確かに美しいと思う。でも鼻持ちならないのです。此方のひがみだと重々承知の助なのですが・・・

  • 村上春樹氏の作品というと、アンニュイでアンビバレントな青年主人公が何らかの精神的傷やトラウマティックな事象をかかえ、そのストーリー進行の過程で、テロンテロンに濃ゆい性的描写が微熱的に描かれ、最終的に自己を回復する、的な展開がなかなかにある気がします。

    が、本作はむしろエッセイ・ノンフィクションに近いかと思います。

    村上氏が見聞きしたちょっと不思議な話を紙に書き起こしてみるという、言わば村上版「ナショナルストーリープロジェクト」とでも言った作品でありました。

    ・・・
    収録作品は、あらすじを語ると実に味気ない素描しかできないほど、普通のお話になりそうなもの。

    「レーダーホーゼン」は突然離婚してしまった母親の話ですし、「タクシーに乗った男」は画廊経営者がかつて米国で得た三流画家のかいた作品にまつわる話。

    内容は、ありふれた話というわけでもないですが、とても珍しい話というわけでもない。ただ、村上氏のエッセンスをスポイトで2、3滴落としたことで、お料理の味がぐっと変わってしまった、という類のお話かと思います。

    その中でも、友人の連れ合いを寝取るのが趣味?である男が嘔吐に悩まされる「嘔吐1979」や、男と別れて会社も辞めてそれでも余った時間にふと体を金で売ってみる女性の「雨宿り」、これらは何というか、惹きつけられるものがありました。

    ・・・
    「雨宿り」でもさらりと書かれていますが「僕はごく単純にセックスというのは無料だと考えていた」とあります。私が村上氏の作品についつい入り込んでしまうのは、ここなのかな。

    現実には恋人や夫婦ではそうですが、おいそれとそんなにサラリと体を重ねるなんて経験は、望んだり努力してもなかなかできないものである気がします。でも、村上氏の話の中の男性はさらりと他人と夜を共にしてしまう。

    きっと私はそういう器用な人間でないですし、そうした性的能力の行使に強い憧れを持っていたのかなあと、今更ながらに感じるところであります(文学好きではなく単なるエロ好き!?)。知らんけど。

    逆に、女性からみた村上作品の良さってのはどういう所なのか、とふと疑問に思った次第です。他の男性諸氏も村上作品のどういうところが好きなのでしょうね。

    ・・・
    ということで村上氏の割と初期のころの作品(1985年)でした。

    時に現実を幻想的な描写をするのも村上氏らしく、また性描写がさらりと描かれるのも村上氏らしかったと思います。

    短い冊子ですので、気分転換等に読んでいただくには丁度よいかもしれません。昭和の文学、などとそろそろ言われるのでしょうかね。

  • 素敵な短編集

  • (~2004大学時代の本@202012棚卸)

  • 今年2度目。レーダーホーゼン、今は亡き王女のための、野球場など印象深く覚えている作品もあれば、ほとんど覚えていなかったものも。はじめにで著者が書いているようにこれは小説ではなく、<スケッチ>!いろんな人の話を聞いてメモッたものだそうで、実話とのこと。そしてそれが「話してもらいたがっている」ためにこの本になったとのこと。著者らしい表現だが、「わかるような気がする」!この書の題名の意味合いがこの中で書かれている。いろんな人たちの人生が回転木馬のように巡回し、通り過ぎていっているということなのだ!

  • 人から聞いた話を大筋に
    なるべく雰囲気を壊さないように
    文章にうつしたそうだが、
    それでも溢れる村上春樹感が凄い

  • 作者が人から聞いた事実の(ような?)話の短編集。面白かったが中にはありそうな話(レーダーホーゼン)もあるが、ほとんどが現実味に欠ける話(嘔吐1979とか)だったように思う。「事実は小説より奇なり」(バイロンの"Truth is stranger than fiction."の和訳らしい)と言う言葉もあるくらいだしそこは問題ではない。また作者の周りの環境は自分よりも確実に変わった話を持った人が集まってくるような気がするし。しかし他人から聞いた話を第三者にその面白さを損なうことなく話すことは自分にとってとても難しく(たとえ脚色したとしても)、それを考えると作者の技術は読んでいて感嘆をせざるを得なかった。

  • 村上さんが出会った人から聞いた話をまとめたもの。

    セックスが関連する話が多くてちょっと気が滅入りました。
    前読んだ時はそんなことなかった気がしたのに。

    ちょっと不思議というか変わった話なんだけど、「レーダーホーゼン」とかなんとなく分かる気がする話もありました。
    レーダーホーゼンだからじゃないんだけど、なぜかレーダーホーゼンを買う時に夫や今までの生活が全て嫌になってしまったことにハタと気付く感じがなんとなく共感出来ました。
    そう気付くともう元の感覚には戻れない感じとかが思い出されて、この話が一番印象に残りました。

  • 事実を基にした短編が8本入ってる
    つかみどころのない話や感情を上手く形にしている
    読みやすくて黙々と作業読んでしまった

  • 2017年01月24日読了。

  • 2016/07/24 読了

  • 「はじめに」で先制パンチ的に純な小説でなく、事実に基づくなんて言ってるが、実のところは闇の中?若しかしてシンプルに作家の言葉を信じれば良いのかもしれんが、それには歳を取りすぎたかな?当方は。
    まぁ確かに練られた風もなく、偶然の契機で世に現れた感じ。でも確かに村上春樹の手になるものという気はするところ、当たり前だがプロの仕事かな。
    個人的には『野球場』が好きかな。野球好きとは無関係に何だか普通の人間の壊れる様を見せられているようで。他作品もまぁいけると思います。

  • 現代の奇妙な空間――都会。そこで暮らす人々の人生をたとえるなら、それらはメリー・ゴーラウンド。人はメリー・ゴーラウンドに乗って、日々デッド・ヒートを繰りひろげる。人生に疲れた人、何かに立ち向かっている人……、さまざまな人間群像を描いたスケッチ・ブックの中に、あなたに似た人はいませんか。

  • 高校時代の同級生と飲んだ時に、読み返すと面白かったと薦められたので本棚から取り出して、おそらく20数年ぶりの再読。
    作者も登場人物も30代で、読み返している僕が一気にその年齢を越えてしまったことに躊躇う。村上春樹は高田馬場のジャズ喫茶で『羊をめぐる冒険』を読み耽った20代の僕が向かい合う小説家なのだ。もうじき50になる物語の主人公にも脇役にもなれそうにない冴えない男が辛うじて80年代の風俗に懐かしさを感じながら、ページを捲るべき本ではないのかもしれない。
    この中の『雨やどり』から引用すれば、自然発火のごとくセックスが生じなくなってしまった中年男ということになる。その点では、元編集者を買う中年男という脇役にはなれるのだろうか。いや、財布の中身が心許ないので、それさえも叶わないのだろう。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。『風の歌を聴け』(1979年)で群像新人文学賞を受賞し、デビュー。『羊をめぐる冒険』(1982年)で野間文芸新人賞受賞。『ノルウェイの森』(1987年)がベストセラーとなる。海外でも高く評価され、2006年フランツ・カフカ賞、2009年エルサレム賞、2011年カタルーニャ国際賞を受賞。その他受賞多数。

「2016年 『村上春樹とイラストレーター 佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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