- Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061844131
作品紹介・あらすじ
不倫の恋におちた娘と、娘の恋愛により深く傷つく"父親"という孤独で哀れな存在を切々と描きつくす恋愛大作。スタイリストの仕事に打込む純子は、妻子ある青年実業家の強引な情熱に動かされ、道ならぬ恋におちた。新製品開発競争で苦境に立つ化粧品会社重役の父・菊次の複雑な思いを絡めて描く傑作長編。
感想・レビュー・書評
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結局、けじめは他人を傷つけることによって自分に生まれる罪悪感を生じさせない為のものなのかなと。それを取るか、どうなろうと自分の幸せを取りに行くのか、そこが集団思考か、個人思考かの時代における変化だと思う。内容的には割とサクサク読めた。
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まぁ普通の小説と言いますか何と言いますか。
当方の勝手な感想ですが、この作家は分かりやすい構図を好んでいるようです。そこは全く問題ないけれども、そこから如何に曖昧さを描きこむかがその小説の質に繋がるんだと思います。残念ながら、本作は分かりやすいままに終始しているかなぁ。
世代の感覚の違い、それは間違いなくあるんでしょうが、そこで留まっているだけではなぁ、、、 -
59点。不倫の恋におちた娘と、娘の恋愛により傷つく父親という孤独で哀れな存在を切々と描く。うちの親父がこの本にハマったらしい。
戦中派の私の価値観はこう。そして君ら世代の価値観はこう。みたいな世代論で輪切りしようとする父親が、娘に対してこのように言う。
君ら世代の最大の弱点は自分の考えだけが正しいと思い込む点だ。自分勝手な正しさのために引き起こされる他人の迷惑や悲しみをまるで考えもしない、と。戦中派の父親世代はそうではなく、道義的な責任を重んじ、必要とあらばけじめをとるんだそう。だから不倫などは論外だと言う。
対して娘は、自分の幸せのためには多少他人を不幸せにしてもいいじゃない。好きな人と幸せになる方が大事。と反論する。
じゃあ現代思想世代(!?)の自分としてはどうかといわれたら、そこに正しさなんてないし、正しいとするその正しさを導く正しさなんて見当たらないと考える。自分の意志に忠実なのはいいけれど、自分の意志ってなんですか、みたいな。
他人に対して責任をとるというのもどこまでが責任なのかわからなければ、とったといって取りきれるもんだとも思えない。そもそも誰かを不幸にしない生き方があると思うのも傲岸不遜な態度だと思う。父親みたく己の守備範囲を自分で決めるのだって傲慢じゃねーかよ、と。
他人の悲しみを想像せよ、という筆者の倫理観の根底にあるのがキリスト教的な隣人愛だとしたら、
それはちょっと違う気がして。ルカ14章26節的には隣人愛とは家族を捨てることを意味し、隣人とは家族ではなくむしろどうしようもないようなやつのほうだ。
つまり恋人や家族を愛するのは自然感情であってそれ自体がエゴイスティックな振る舞いでしかない。父親だって利己的なのだ。父親から漂うどうしようもない哀愁は本来そういったところから生じると思うんだけど、どうもストーリーがあまりに、あまりに単純明快すぎて、そりゃないぜ、みたいな。キリスト教の論理をもっと突き詰めた考えさせられる内容ではなかった。まぁ、そんなこといったら姦通罪は重罪なんだけどもさ。 -
父親の感情が伝わってくる。
よくある話ですが、それぞれの心がよくわかりさずが遠藤周作先生だと思う。 -
不倫の恋におちた娘と、戦争を生き抜いた父親との関係。「けじめ」を信条とする父親は娘の不倫に深く傷つき『父親』という存在を考える。
なんだろ、泣けた。周りが見えなくなってしまって妻子ある人との恋愛に走ってしまう娘の気持ちもわかるし、それを許せない父親の気持ちもわかる。 -
けじめ。そして、善魔。
父と娘のそれぞれの想いがとてもよく伝わった。きっと、今の自分だからこそ余計に感じる部分が多い気がする。学生時代の自分だときっとこれほど印象に残ることはなかったと思う。
自分の道を突き進めば進むほど見えなくなる身近な人のこと。身近な人、そしてその周りの人たちのことを大切に思いながら、生きて行きたいと思った。 -
「深い河」は越せず。
でもよい。遠藤周作はよい。 -
6点
遠藤周作の隠れた名作です。主人公の父親はとにかく娘が心配。何てったって娘の彼氏は妻子もち。この時点で「ありそうな設定だよな」って感じですが、なんだかお父さんの味方したくなるんですよね、男って。「何で父親の言うことが分からんかなあ、この娘は・・」って何度も突っ込みいれてました。女性が読んだらどう思うんでしょうね?「こういう父親はイヤ!」っていうのかな?
著者プロフィール
遠藤周作の作品





