青春の門(第二部)自立篇(講談社文庫)

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  • 講談社
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感想 : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (554ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061845961

作品紹介・あらすじ

筑豊の山河を後に、1人上京した伊吹信介。大学入学第1日目の失望、そして次々に開かれていく東京という未知の世界の扉。苦しい日々のなかの熱い友情と異性への想い。信介はいま青春のただなかにいる。だが、自らの命を賭ける夢は見いだせない。青年の魂の昂揚と愛を描く大河ロマン。【1977年2月、1982年1月公開映画 原作】(講談社文庫)


青春の苦悩をヒューマンに描く大河ロマン。筑豊をあとに上京した信介。大学入学第一日目の失望、苦しい日々の中にも友情が生まれ、異性への想いがたぎる。だが、命をかけるべき道は展けてこない。第二巻。

感想・レビュー・書評

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  • 今年の2月に第1巻を読んだのに続き、第2巻を読んだ。
    主人公の伊吹信介は、大学入学のために、筑豊から東京に出て来る。初めての東京で、筑豊にはいないタイプの人たちと出会い、戸惑いながら大学生活を始める信介の姿を描いている。
    この小説の年代は小説には書かれてはいない。ネットで調べると、信介が大学に入学したのは、昭和29年(1954年)であるという記述がいくつか見つかった。正確に昭和29年かどうかは別にして、おおよそ、それくらいの年代の話であろう。
    信介が大学に入学したのは、私が生まれる前の話であるが、それでもモデルになっている大学は、私の母校であり、親しみを感じる。私自身も九州出身であり、大学に入学するために上京したのは信介と同じであり、信介の戸惑いが理解できる部分も多い。
    「青春の門」を初めて読んだのは高校生の頃だと思う。記憶が曖昧であるが、読んだのは、この第2巻までだったと思う。第3巻以降は初読となり楽しみだ。

  • 本作の時代背景はひとつ上の世代のものだがイメージできる。ストーリーは突っ込みどころ満載であるが、楽しい成長物語である。街や世相の描写が懐かしい。続きも読みたい。

  • 竜五郎の庇護のもとを離れて、一人で東京の大学へ通いはじめた信介は、大学の先輩で演劇青年の緒方という男と知りあい、彼と共同生活を送ることになります。緒方の知人で、新宿二丁目の赤線地区で働くカオルという女性や、二人が暮らしている家の大家の娘たちとの交流を通じて、信介の若い心は揺さぶられます。その後、大学の体育の実技の授業を担当している石井という講師にすすめられて、信介は彼からボクシングの指導を受けることになります。

    そんななか、故郷の筑豊から織江が東京へやってきます。しかし、東京で大学生として日々を送る信介と、喫茶店のウェイトレスとして働く織江のあいだには感情の齟齬が生まれます。

    筑豊編の男らしい生きかたを志向する信介のすがたとは打って変わって、田舎から東京へ出てきたばかりの、純朴な青年といった印象の信介が、右往左往するすがたがえがかれています。とはいえ、これも青春小説らしい内容といえるのかもしれません。

  • 学生時代、新宿のジェスパ、どん底、しょんべん横丁の信濃屋?で屯していました。
    新宿の寿司屋の大将が作った、イカの塩辛はいまでも、思い出します。 大将と良く飲んだなー、学生ですので、安酒です。

  • 面白い
    先は長いが、信介と織江の行く末が気になるところ。
    山崎ハコの織江の唄を久しぶりに聞いた。
    当時は青春の門の織江とは知らずに聞いていた。

  • やはり主人公の勝ち組っぷりがどうにもすっきりしない。もてる男というだけで、若いときは勝利者なのだろう。加えて、大学にはいって本当にやりたいことを見つけたいって、五木寛之が原点なの?と思ってしまった。大学に入るも授業もろくに受けず、かといって働いている様子の描写もない。学費をどうやって稼いでいたのか、自立編というタイトルがちと疑問。調子よくいろいろな人に出会い、幼馴染の女があとを追って上京してきて、おまけに同郷の恋心を抱いた元先生にまで遭遇する調子よさ。小説の主人公は、作者から愛されているのだなと。

  • 筑豊編より勢いがないようです。何かもやもやした感じがします。

  • 誠実に 自らの行くべき道を模索する青年の姿。伊吹信介。
    生くべきための自らの思想の確立を求めて
    あらゆる経験を得ようとする。
    プロレタリアートという言葉の響きによって、すべてを覆い尽くそうとする。
    大学が大学の本来的機能として存在するのではなく
    青年の人間集団としての存在。
    価値ある生き方への模索。
    共産党員の経験を持ちながらも、家族への失意、愛への失意
    など 不明確な失意に彩られながら
    カオルという女性にあうことによって、激しく変化し、
    新たな出発を期す人間。

    青年のくぐる門は どこにあるのか。
    青年としての体験、性であり、失意であり、誠実さだった。
    現実の社会を傍観的に見ながら、
    その渦にまきこまれず、人の生き方として描く。
    価値なき価値ある人生への確かなものへの模索。

    (再読)
    信介という個人に、スポットライト。
    宮本輝の流転の海は、松坂家族というものを、描こうとしている。
    時代の流れもはっきりしていて、時代小説となっている。
    青春の門 自立篇 を読みながら,何かが物足りない。
    時代の流れが、信介の心象のなかで流れている。
    それが,実に単純なのである。
    信介の女性の間でゆれ動く心境。
    英子、カオル、オリエ。
    それにしても,オリエは劇場型純情派なんですね。

    石井講師とであい、科学的なボクシングの訓練を受けるが、
    どうも,中途半端だね。お試しコースということなのか。
    石井講師の彼女とのなれそめや結果は、淡雪のようでもある。
    信介はどこまでもおせっかいである。田舎の人間の良さなのか。
    そして,カオルと意気投合するのである。初恋の人に似ていたということであるが、
    石井が踏み切った理由もよくわからない。

    どうでもいい と思ってしまうところに、一つの表現がある。
    ふーむ。それではねぇ。
    そういうのが、つまらなくしているのか。単調すぎる。

    梓先生にであうが、あまりにも,ドラマがなさすぎる。
    自分で生活を維持するということを成し遂げようとする信介は偉いと思うが。

  • 昔の青春。友情や異性への想いが詰まっている。新たな出会いや再会があって、展開が楽しい。
    昔の作品だけど、今読んでも楽しめる。

  • 生涯打ち込めるものを探して早稲田大学に入学。仕送りなしでバイト三昧。ボクシングから演劇へ。マルクス、弁証法、映画、文学、クラッシック音楽、コーヒーに赤線といった、学生時代にはまりやすいものが沢山出てくる。すっかり学生気分。

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著者プロフィール

作家。1932年、福岡県生まれ。朝鮮半島で幼少期を送り、引き揚げ後、52年に上京して早稲田大学文学部露文科に入学。57年に中退後、編集者、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門 筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞など受賞多数。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『下山の思想』『百寺巡礼』『生きるヒント』『孤独のすすめ』など。

「2023年 『人生のレシピ 疲れた心の癒し方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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