- Amazon.co.jp ・本 (550ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061845985
作品紹介・あらすじ
人間は生き、人間は堕ちる──春浅い北海道をあとに上京した信介の、重く澱んだ倦怠の日々。歌手を目ざす織江は去り、学友たちは政治運動に青春を賭ける。訣別の哀しみと熱い屈辱感のなか信介は限りない虚無を見つめていた。苛酷な運動に翻弄される青春の苦悩を描く大河ロマン。(講談社文庫)
青春の苦悩、魂の苦悩を描く大河ロマン。 北海道を後に帰京した信介の重く澱んだ倦怠の日々。歌手を目ざす織江は去り、学友達は政治運動に青春を賭ける。が、信介は限りない虚無を見つめていた。第四部。
感想・レビュー・書評
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北海道での短い織江との暮らしの後、信介と織江は北海道を後に上京する。織江はプロダクションに所属し、歌手を目指すことになる。信介は大学に戻る。大学に戻った信介は政治運動の団体に入り、筑豊を後にして以来、初めての充実感を感じるが、それも長くは続かず、盛り場のチンピラや水商売の女たちとの関りを深めていく。
主人公の伊吹信介は、「直情径行」型の人間という紹介のされ方を、物語の中でされている。その直情径行型人間像を強調するために、出身を九州、それも気性の激しい筑豊とされている。が、実際に物語で描かれている伊吹信介は、どちらかと言えば煮え切らない男だ。行動力はあるが、あれこれ悩み、なかなか腰が据わらない。また、物語とは言え、かなりなドジをしてしまう男でもあり、悩みは、実際の暮らし面での困難に変わっていく。
ただ、この巻の終わりあたりから、信介はやや破滅型の行動をし始めており、物語は少し違う展開を見せ始めるのではないか、という期待がある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
やっと東京に戻り、大学生活を始めた途端に、学生運動にのめり込む、悲惨な生活だと思う。 中核、革マル、民青などで、大学がロックアウトになり、休講が続き下宿でモンモンとし、小田急でバイトしてました。
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織江の歌が、芸能事務所のプロデューサーの耳にとまり、彼女は東京へ出て歌手をめざすことになります。信介も東京へもどり、大学生として生活を送りますが、緒方たちの影響を受けて、しだいに左翼運動にのめり込んでいきます。こうして、二人の距離はしだいに離れていくことになり、信介はすさんだ心をもてあますようになります。
そんななか、信介の所属する運動家たちのグループの女子学生が、対立するグループのスパイであったことが発覚します。彼女に対する「査問」がおこなわれ、信介は仲間の男たちが一人の女性に暴力をふるうことに違和感をおぼえますが、そんな彼の甘さは仲間たちから糾弾され、さらに信介の監視から逃れた女子学生が仲間を引きつれて信介に復讐をおこなおうとし、彼は政治的な対立のなかに巻き込まれていきます。
舞台はふたたび東京に移り、信介のあたらしい生活がはじまりますが、織江をはじめとするヒロインたちとの交流はやや控えめとなり、学生運動のなかで葛藤する信介のすがたが中心にえがかれています。若干ストーリーが間延びしているような印象を受けてしまいました。 -
第三部はちょっとトーンダウンした感があった。今回は読者として信介の行動にイライラさせられることも多々あり、第5部が楽しみに思えた。
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青春の門 堕落篇 五木寛之(著)
北海道の演劇活動が失敗し、緒方、トミちゃんも東京に行った。
オリエは、ホステスをしながら、歌をうたっていたが、
その歌いぶりに、井原プロのオトコにスカウトされる。
オリエは、東京に行くことを決意する。
信介も、英治にあったりして、オリエのピンチを
助けてもらう。
英治は、意外とお茶目。手先が器用だね。
そして、北海道から、東京に舞台が移る。
トミちゃんのたくましさ、旺盛な勉強しようとする意欲。
それに、圧倒されながら、信介は、学校に通うことにする。
オリエの自分で切り開こうとする、しっかりした姿勢に、
信介は、ヤキモチを焼き、喧嘩さえしてしまう。
梓先生は、歌声喫茶のリーダーとして、生き生きしていた。
オリエの歌と比べて、信介のなかでは、
歌声運動の方が希望があるように見える。
デモを見ながら、取り残されていると思う信介。
東京での生活。
学校に戻り、緒方に誘われて、基地反対闘争に参加する。
その闘争の学生リーダーであり、成田にあうことで、
信介は、何か充実感をあじわう。
しかし、スパイに対する査問で、信介は、疑問に思う。
そのうえ、信介は見張りをする役を受け持つが、
疲れで、眠ってしまい、逃げられる。
探しに行くが、スパイをしていたグループに叩きのめされる。
ボクシングの竜に助けられるが、早稲田の竜は右翼とされ、
信介は、緒方に、詰問され、緒方と別れることに。 -
堕落編ということで、信介の苦悩している姿が印象的。人間らしくて、これから信介がどう成長していくのか楽しみ。
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福岡、江差などを舞台とした作品です。
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悩み、揺れながら自分が進むべき道を模索する主人公、反共、反米、学生運動の高まりに身を投じて存在の意義を見出したかに思えたのもつかの間…。
時代背景やそこから生まれる主義、思想、そういったものは今となっては響いてくるものは無いが、主人公のぐるぐるとまわり混乱する思考は共感。
理性と本能、正義感と同時に湧きあがる残酷な欲望は男としてはよくわかる。 -
学生運動に徐々にのめり込む主人公の信介。梓先生との再会と一夜の情交。組織の暗部と誤解と裏切り。
個人的には梓先生との描写をもっとじっくり楽しみたかったのに。残念。 -
2009/11/10
著者プロフィール
五木寛之の作品





