青春の門(第六部)再起篇(講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.60
  • (13)
  • (28)
  • (37)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 241
感想 : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (554ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061846166

作品紹介・あらすじ

ぬくぬくと居心地のいい冬眠の季節はもう終りだ。人生の目的を見つける過程が青春なら、信介は、いまやそのただなかにいる。若さに賭けて、再会した織江とともに未知の芸能の世界へ踏みこんでゆく。いま信介の新天地への出発! 混沌とした現代をいちずに生きる若者の魂が、熱い共感を呼ぶ大河ロマン(講談社文庫)


50年代のいちずな青春群像を描く大河小説人生の目的をみつける過程が青春なら、信介はいまやその渦中にいる。若さに賭けて、再会した織江とともに未知の歌の世界へと踏みこんでゆく。大河ロマン第6部。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「青春の門」第6部は「再起篇」という題名がついている。第5部の「望郷篇」では、信介は、生まれ故郷の筑豊に戻り、世話になった塙竜五郎の最後を看取ることとなった。その後、ひょんな偶然から実業家の早しに見込まれ、林の家に書生的な立場で住み込むことになるところまでが、第5部だ。
    第6部では、林家を出て、プロの歌手となっている織江のマネジャーとして再出発することになる。だから、「再起」という言葉は、実業家の林の庇護のもとでの恵まれた暮らしを捨てて、再度、自分の力で世間と渡り合っていこうという意味合いとなる。普通、再起と言えば、失敗とか挫折とかといった状態から、再び立ち上がって元の状態に戻ることを言うと思う。信介が林家にいたことは、別に失敗でも挫折でもないので、最初、再起という言葉は大げさかなと思った。
    しかし、五木寛之にとっては、青春の只中にある者が、誰かの庇護のもとでリスクの少ない生き方をすること自体が、失敗であり、挫折になるのであろう。そういう風に解釈した。

  • ブルジョアとプロレタリアートなんて言葉が流行った時代の懐かしいお話。
    林みどりさんとの会話の中で、一杯の飯を涙を流して食べたことのある人間と、そうでない人間、という表現が刺さった。

  • ふーむ。
    林三郎の書生となって、飛躍するかと思ったら、
    林みどりとの間だけに 縮小してしまった。
    おい。おい。
    それで、オリエのマネージャーになると言うのは、
    ふーむ。なんじゃそれ。
    という感じだね。

    ブルジョアジーとプロレタリアートという図式のなかで
    今の時代の流れをつかみきれないものがあるのだろう。
    それで、再起 なのだろうか。

    信介の行動原理は、敵が明確であれば、立ち向かう時に、
    勇気をふるい、たたかう。
    歴史の中の個人、歴史との関わり合い、
    貧乏であったという過去の生い立ちから、
    プロレタリアート意識なるものに、そぐわない何かがある。
    食べて、生活するだけでは、物足らない。
    オリエは、そのことに満足する。
    好きな歌を歌って、自分で生きていければ、良しとする。
    ずっと、信介のことを想い続けてきた。
    しかし、信介は、オリエだけを見るのでなく、
    遠くを見ている。また、別のオンナに魅力を感じたりする。

    タエ、オリエ、梓先生、英子、カオル、トミちゃん、
    五木寛之は、オッパイの大きな女が好きなようである。
    そして、お見舞いに登場したミドリ。
    結局は、母親への思いが深く横たわる。
    クラシックというのが、知的素養なのだろうか。
    むつかしい本を読むということ。

    英治と英子。
    カオルと石井。
    信介とオリエ。
    緒方とトミちゃん。

    それにしても、信介はなぜ緒方に魅力を感じたのだろう。
    理論的とは言えず、明確な主張があるとも言えない。
    図式的な階級闘争論。

    五木寛之が 挫折した 理由が この再起篇にはありますね。

  • 相変わらず都合良すぎる出会いと再開、窮地脱出が繰り返される点が時に興覚めだが、無理やりにでも話が転がってゆき面白い。半世紀前の世相も懐かしい。

  • 信介とヤクザのケンカには、うんざりする。 林家のみどりさんは、ドラマでは、誰が演じるのかと想像する。上白石萌音さんか? 兎に角、織江の新曲がヒットしてくれ!と祈る。

  • 実業家の林三郎のもとで働くことになった信介は、歌手として成功する夢を追いつづける織江と再会します。彼女は、いまの芸能事務所から独立することを決意し、信介はマネジャーとなって、彼女の夢を支えようとします。信介の話を聞いた林は、驚きながらも彼の申し出を受け入れ、信介は彼に好意を寄せる林の一人娘のみどりと別れて、織江と共同生活をはじめます。

    故郷の筑豊に別れを告げて東京へ出た信介ですが、作者が彼になにをさせようとしているのかということがあまり見えてこないように感じてしまいました。長期にわたって連載されてきた小説なので、やむをえないところもあるのかもしれませんが、金朱烈の再審についてのかかわりなど、放り投げてしまった主題もいろいろあって、構成の粗さが目についてしまいます。

  • 悩み続けながら人生を歩む信介。今後どうなっていくのか楽しみである。また、織江は歌手として成功するのか、第7部も期待したい

  • ぬくぬくと居心地のいい冬眠の季節はもう終りだ。人生の目的を見つける過程が青春なら、信介は、いまやそのただなかにいる。若さに賭けて、再会した織江とともに未知の芸能の世界へ踏みこんでゆく。いま信介の新天地への出発!

    御年84歳の五木寛之が年明けから23年ぶりに週刊現代で「青春の門」の連載を再開した。第九部からということだが、私はどこまで読んだか全く記憶がないので、適当なところから読み始めてみた。30分もあれば100ページ以上読み進めてしまうこの軽さが懐かしい。
    (B)

  • 552

  • 二人が同じ目標に向かっていく姿に、応援したくなる。完結するかと思ったが、まだまだ続きそうな雰囲気。

全18件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

五木寛之の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×