- Amazon.co.jp ・本 (482ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061847217
作品紹介・あらすじ
学生街のビリヤード場で働く津村光平の知人で、脱サラした松木が何者かに殺された。「俺はこの街が嫌いなんだ」と数日前に不思議なメッセージを光平に残して……。第2の殺人は密室状態で起こり、恐るべき事件は思いがけない方向に展開してゆく。奇怪な連続殺人と密室トリックの陰に潜む人間心理の真実!
感想・レビュー・書評
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著者の初期のミステリー。1987年の作品。
うらぶれた学生街。大学卒業後も就職せずバイト生活を続ける津村光平の周りで、アルバイト同僚の松木、恋人の広美、身障児施設の堀江園長、と立て続けに3人が刺殺されてしまう。光平は、その全ての殺人現場の第一発見者となり、事件に巻き込まれていく。
松木は光平にプライベイトを一切語らなかった。広美も、週1日の行動を光平に隠していて、謎の一面を持っていた。広美は何故殺されなければならなかったのか、自分なりに納得したい光平は、弘美の妹悦子と共に事件の謎解きに挑む。
同僚や恋人の刺殺、産業スパイ事件、そして親友間の愛憎劇。重たい出来事を、著者は感情を排して淡々と描写していく。お陰で、(ドキドキしたり、悲しんだりといった)主人公への感情移入なしで読み終えた。純粋に謎解きを楽しみたい人向けの作品だった。とは言え、広美が殺されたマンション・エレベーター密室の謎は今一だったな。広美の過去に纏わる謎解きの方は面白かったけど。
AIの最先端技術がエキスパートシステムというところに時代を感じた。
主人公が雇い主、年配者、お年寄り等に対しタメ口なのが気になった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
'22年4月6日、読了。
グッと、きました。今まで読んだ東野圭吾さんの小説で、最も好きかも。
あえて、多くを書かずにおきます。未読の方、是非読んでみてください。 -
東野圭吾30作目。
以前から気になっていた本書を手に取る。
トリックや動機ももちろん良いが、それ以上に
主人公光平の生き方がいいなぁと思える作品。
別に褒められた生き方ではないかもしれないが、
あんな風にじっくりと自分の道を見つけるのも
良いと思う。
うどん屋の父の言葉や広美のボランティアの笑顔は、
この作品の数少ない明るいシーンで、かつ光平の人生の方向づけに強い影響を与えたシーンであり、印象的である。
陽の「卒業」、陰の「学生街の殺人」って感じやな
表紙のイラストの物々しさがたまらない
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東野圭吾さんらしい作品と言えるのではないでしょうか?ラストは映画のようで、ちょっと胸に滲みました。
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本書を読むといつも、冬の暖房が効きすぎた淀んだ校舎内の一室をイメージしてしまう。淀んだ空気を、学生街という寂れた街に滞留している光平と重ね合わせてしまうのだと思う。
気合が入ったらしいボリューミーな作品だが、犯人との対決シーンやクリスマスツリーの死体など陳腐に感じられる。殺意を簡単に持ち過ぎており、どうしても殺さなければという切迫感が感じられなかった。クリスマスツリーへの死体遺棄の理由もちょっと弱い。開かれた密室は面白いとは思う。色々思うことはあるが、東野作品なので嫌いではない。 -
登場人物の会話の中で、教訓じみたことがたくさん書かれていて、気づかされたことが多かった
1990年の作品だが、この頃からAIが出てきているのかあと思った。
コンピュータを使っても使われるな。確かにそうだな。
対照的に、障害のある子の施設の話が出てきている。
「最初は罪の償いという意識が先行していたはずなんだ。だけどやがてそのことに喜びを感じられるようになったんだと思う。生きがいを求めるのではなく、与えられた局面を生きがいに転化してしまうわけだね。そういう道もあるということだ。」
という光平の言葉が印象的だった。 -
巧みなトリック!という一冊でした。そしてこんなにたくさんの人が死んでしまうなんて…と想像を絶する物語。犯人が分かっても、なおその背景の真相まで突き止めるところが面白いです。前作の『放課後』の学生街がでてきて個人的に興奮しました。
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コンピュータソフトウェアの事で殺人が起き、それを利用して純子さんは広美を殺させてしまった。それを隠すために今度はホームの所長を殺してしまう。過去に純子と広美の二人がひき逃げをして女の子を結果的に死なせてしまったことが、広美にとっては罪悪感でホームに通い恋人の求婚を断りピアノが弾けなくなってしまい、純子は殺人を犯してしまう、悲しい話だった。そこにソフトウェアの件がはさまり上手く複雑になっている。初めは、寂れた風景を思い描いて地味な気分になってたけど、クリスマスツリーとか結婚式の教会とか、ところどころに華やかなシーンも出るのでさみしい中のアクセントになってて良かった。
著者プロフィール
東野圭吾の作品





