ジェイムス・ジョイスを読んだ猫 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 90
感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061847354

感想・レビュー・書評

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  • 著者の比較的初期のエッセイなどを収録している本です。

    本について書かれた文章が多いのですが、ときには音楽やマンガ、テレビCMにも触れられています。どこまで本気で書かれているのか判別しがたいエッセイですが、現代詩の直面している困難に触れたり、橋本治と吉本隆明の共通性を指摘したりと、ときおり示される鋭い著者の批評眼に目を開かされます。

    「わからない方の現代詩が、世界と自分との関係のわかりにくさを表現していることがわかるのに、わかる方の俳句が、そんなにも直ぐわかってしまう作者の心像がわからない」という鋭い指摘に一瞬虚を突かれたようになってしまいますが、そのあとに「俳句を詠む人口が凄まじい勢いで増えているという話を聞く時(詩や小説などものの数ではなく)、ぼくが思いうかべるのは、無数の無名の作者たちによって清算される膨大な句の左側にある筈の(見えない)鑑賞文の存在である」と解説がなされているのを目にして、桑原武夫の「第二芸術論」以来の例の批判か、と安心させられたのもつかのま、「それはどこか、全ての軍人の魂が休むことになっている靖国神社を連想させる」という危険な言辞がつづけられるところなど、著者の面目躍如といった感じがします。

  • 面白い人の書く与太話は間違いなく面白い、といういい例。多少冗長かつ自己満足気味なところはあるけれど。

  • 〜人がある「流行語」に到達する経路には二通りある。一つは、自らの意思と欲望でたまたまソコへ到りつくことであり、もう一つは、それが流行語であることを知って、わざわざやってくることである〜  紛れもなく本物は前者であるのだが、「流行語」という言葉自体は後者によって作られるという逆説が同時におこっている。

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著者プロフィール

1951年、広島県生まれ。作家。1981年「さようなら、ギャングたち」で第4回群像新人長篇小説賞を受賞しデビュー。1988年『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞、2002年『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞、2012年『さよならクリストファー・ロビン』で第48回谷崎潤一郎賞を受賞。他の著書に『一億三千万人のための『論語』教室』『「ことば」に殺される前に』(河出新書)、『これは、アレだな』(毎日新聞出版)、『学びのきほん 「読む」って、どんなこと?』(NHK出版)など多数。

「2022年 『NHK「100分de名著」ブックス 太宰治 斜陽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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