愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫 む 3-11)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (542ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061847408

作品紹介・あらすじ

世界恐慌を迎えた1990年、世界には奇妙な動きが相次いだ。日本でもパニックとクーデターが誘発する。暗躍する巨大金融企業集団「ザ・セブン」に全面対決を挑む政治結社「狩猟社」が企てたのだ。若きカリスマ、トージの意識が日本を動かし始める。この危険な小説に描かれた世界はすでに現実である。

感想・レビュー・書評

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  • 凄すぎて引く
    特に下巻は登場人物も多い上に展開も目まぐるしく、ついていけなかった箇所も多数ありましたが、それでもページを繰る手は止まりませんでした。これが自分が生まれる前に書かれた作品であるということにただただ驚くばかりです。

    読了して、「人間関係は化学反応」というユングの言葉を思い浮かべました。
    トウジも、ゼロも、フルーツも、みんなそれぞれに一貫していても、「一度作用し合ったら、もう元には戻れない」のだなと。

  • システムに抗する主人公
    しかしながら、そのシステムに抗する為に作られた
    政治結社「狩猟社」は主人公を中心にシステム化されている。その事に気づき愕然とする主人公。
    「ザ・セブン」という明確な敵があるにも関わらず、ラストは主人公が一体何を目指すのかが良く分からなくなった印象。

    あとがきで著者が経済書の類を大量に読んだと述べていたように、読み応えのある作品だった。著者は以前からシステムに対して憎悪のようなものを感じておりそれがメインテーマとして経済とともに書かれたのが本作品。
    らしいが、単純な自分の感想では著者はアメリカがとても嫌いなんだなと思った。それとも経済の中心はやはり、アメリカということでアメリカ=システムということだったのだろうか。
    経済に関する人・金などの様々な動きにも興味を持ったが、それ以上に人が一人の人間として生きている意味というか、理由というか、価値というか・・・主人公の極端な発言を読んで深く考えた。


    日本はアメリカやソビエトと対等にものが言える国ではない。(中略)アメリカは強者だ、その強者のアメリカに気に入られようと愛想笑いをして、冷たくされるとヒステリーをおこして、アジアの同盟だと声高に叫ぶ、弱虫のやることだ


  • 村上龍の作品はやはりゴールが上手く掴めず難解。
    ただ本作のもつ圧倒的な熱量とボリューム、緻密なリサーチに基づいた社会学・政治描写に(所々SFか?と思ってしまいつつも)、文壇に埋もれない独自性を感じた。
    何といっても独特の長尺セリフ体に慣れると読んでいて楽しい。

  • この小説は危険だ。。

    この小説読んでから、自分もシステムに嫌気がさしてきてしょうがない。

    読了後に臨んだ新人向けの社内全体研修なんて、まさにシステムの奴隷そのもので、ほとんど吐き気を催しそうになった。


    とりあえず気が短くなるのと、YouTubeでヒグマとか動物の動画をみたくなる。そしてハンティングしたくなる。

    主人公の言葉はまるで麻薬みたいに働きかけて、自己陶酔してしまいそうになる。

    あまりに危険。。

    冒頭のカナダ・イヌヴィックのシーンと北海道での狩猟のシーンが好きや。

  • 弱肉強食・適者生存がどうだとかという話は置いといて、相田剣介つまり、ゼロのみに視点を置いた感想にしたい。(大きい作品なので全体を捉えるのは難しく部分的にしか考えられないので…)

     ゼロは最終的にトウジが作り上げた制度(システム)にパーツとして組み込まれた。ゼロはトウジの一部となったせいで、他人の中の自分を確認して自分を認めるという正常な人としての手続きを飛ばして、システムとして働いた。これはゼロにとって大きな変化である。自分を確認するためには、他人の中の自分を見る必要があるということを前提にすると、ゼロはトウジやフルーツの中の自分の確認をやめ、自分を愛することをやめ、狂人へと変化してしまった。ゼロはトウジの一部となった、つまりトウジから見たゼロへと完全に自分を同期させたと考えることができる。これで作中でフルーツがゼロへの不信感を募らせているのに対し、トウジがゼロの変化に鈍感であったことも説明がつくのではないかと思う。
     1つ気になることとしてゼロがシステムに組み込まれた理由がよくわからなかったことが挙げられる。大まかな流れとして、小さい頃にGIが日本で快楽を貪っているのを見て育つ→ミュージカル映画のプロデュースをした際に快楽を得ることを諦めている日本に絶望する→トウジと出会い具体的なことはわからないが日本を変えられるかもしれないと希望をもつ→狩猟社が大きくなるにつれて現存のシステムを破壊するために別のベクトルのシステムを構築していることに嫌気がさす(システムを作ってしまうと快楽は得られるかもしれないが、それ以外が排除されてしまう…)→自らを芸術家とし、システムに対抗できる別の何かを探したが、何も出来ずに自分の才能のなさに絶望し、希死念慮を抱く→トウジと狩りにいきシステムの一部になること決意するというという感じだと思う。最後トウジと狩りにいっただけでシステムになることを決意したのがわからない。システムに入るか死ぬかの決断ができる最後になぜシステムを選んだのかが曖昧な気がした。
     大まかな流れの途中で時田を殺した後にゼロが人間を分類するのに強者・弱者ではなく、実業家と芸術家という物差しで分類しようとしているのは、芸術家が煩雑で面倒な事象を跳躍し、象徴として事柄を伝えることができるという点でシステムに対抗する力を持っているのではないかと考えたからだろう。ゼロに芸術家としての才能はなく心を殺して実業家になるしかなかったのは寂しいことだが。
     ゼロは召集令状を突きつけられた若者だった。誰も向き不向きを考えてくれないような状況で民主主義を捨て、差別を認めてシステムに組み込まれるか、死ぬかという二択を迫られ続けられたのは苦しいことだったと思う。(すごい安っぽい感じになっちゃった…)

    久しぶりに感想を書いたので、頑張って考えようとするのに、何かを少しだけ考えて、別のことを少しだけ考える、みたいな感じで結局何も考えられなかった。でも逆に何も考えたくない時に、何かをほんの少しだけ考えて、空中に放るようにしたらいいのではないかと思いつき、新しい発見がありました。

    フルーツと付き合った男は死ぬ、トウジがゼロを殺す夢を見たに関してのチェーホフの銃がギリギリ最後に実現されていて安心した。

  • 米トランプ前大統領が口にしたディープステートの存在。歴史を遡ると、ジャクソン大統領暗殺未遂事件やケネディ大統領暗殺事件、ニクソン大統領の失脚をも、官僚組織や軍産複合体が主導したという説がある。

    だが、村上龍は30年以上前からその存在を見抜いていたようだ。ジェローム・ウィッツ率いるグローバル企業組織体「ザ・セブン」とトウジとの闘い。狩猟社やST班の暗躍。テンポアップする展開。ラストの鮮やかさ。資本主義でも社会主義でもない、システムに対峙する第三の道。

    上下巻で1000ページもあるうえ決して読みやすい小説ではないが、日本や世界がどこに向かうか、その確かな目を持ちたいと思える傑作。政治経済、薬学、軍事など多方面にわたる膨大な知識量がベースになっており、下手な経済書を読むより遥かに大きな洞察を得られる作品。

    文句なしに星5つ。こんな小説書ける人は他にいないだろう。

  • バイブル

  • 村上龍の作品中No.1だと思う。

  • 面白いしかない

  • 物語にリアリティを持たせる意味で政治経済や軍事、IT関連の事柄について、説明が長くなってしまうのはある程度仕方ないにせよ、全くの門外漢の自分には読み進めるのが苦しい箇所が少なからずあった。
    登場人物はみな、一癖二癖ありながらも有能で魅力的。政治、資金繰り、法整備、広告、軍事と各方面でのプロフェッショナルを揃えた狩猟社が一番魅力的に思えたのは狩猟社が大きくなる過程ではなく、千屋、洞木、山岸、ゼロなどの核となるメンバーが初めて出てきた時かな。アベンジャーズみたいな感じで。

    色々あったけど狩猟の描写だけでもやっぱり読む価値はあるかと。一番好きなのは最終盤のこのセリフ。(狩猟の描写ではないかも。)
    「だが俺はセンチメンタルになることはなかった。放たれた弾丸はすでに過去なのだと俺は知っている。狙われた獲物にってその弾丸は未来だ。幸運か、それとも死か。」

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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