- Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061848344
感想・レビュー・書評
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犬との思い出を通じて、椎名誠さん自身の子供時代を振り返る。生と死、家族とのわだかまりや関わり合いなど、切なくも忘れられない思い出が記されている。
一言では言い切れない様ざな感情を呼び起こされる。椎名さんにしかない子ども時代だけど、私にも感じたことがあるなぁと思える、不思議な感覚になる。
勢いよく読み終えてしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読んでおいて損はない
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内容紹介
私といっしょに世田谷から千葉の海べりの町に引っ越して来た初代パチ。2代目ジョンがいなくなり、父が死に、兄が結婚して母は陽気になった。モップみたいな3代目チヨが死んで、我が家の犬の系譜もとだえてしまった。家族の転変を3代の犬を軸にいきいきと描いた自伝的長編。吉川英治文学新人賞受賞。
椎名さんの本かなり読んでいる自負はありますが、何故か読まずにいた一冊。これも私小説だったのですね知らなかった。結構複雑な家で産まれたんだなあというのは、他の本で薄っすら知っていたのですが、本当に面倒な家ですね。昔は多かったのかな?
犬の描写があまり可愛らしくないのが妙にリアルで、哀しそうな顔だったり貧相な姿だったりと様々。最近は可愛らしい犬しか見ませんが、昔は雑種が沢山いて、コヨーテみたいな奴だったり、顔だけチワワっぽくて体ががっちりしていたりと妙に味のある不細工な犬が沢山いた気がします。 -
時代の移り変わりというのは、悲しいほどに早い。この本を読んでいるとなにか懐かしいかんじががする。
大人にはいろいろな事情がある。この本でいうと、「僕」が異母兄弟についてよく分からないが薄々何かが違うことに気づいていたこと、父親と母親の弟との間であった何か、近所の友達の家庭の事情など。昔は家族や近所がうまく支え合って生きていたので、それは子供にとって救いだっただろう。よく家に来て歌を歌ったり家の修理や改造をしてくれるおじさんがいて、初めて海に連れてってくれた近所のおじさんもいて、たくさんの兄弟やお嫁さんと同じ屋根の下で暮らし、育っていく。 -
椎名誠版『スタンド・バイ・ミー』といったらかなり語弊があるかもしれない。
しかし、読みながら常に頭にあったのはスティーヴン・キングのそれだった。
死体を捜しに旅に出るわけでもないし、家庭内暴力があるわけでもないけれど、
小説に漂っている少年時代の懐かしくも切ない雰囲気が両作品に共通しているように思えた。
椎名さんが少年時代によく幕張の海で遊んでいたのは有名な話。
どのように海辺で過ごしていたか、幕張の海への愛着がしっかりと伝わってくる。
その海辺は現在幕張メッセになっているそうな。
その後の私小説作品群にもつながっていく重要なヒントが多く詰まっているので、
ぜひおさえておくべき作品といっていいだろう。
ところが、残念ながらこの本は絶版になっているらしい。
なぜ?
後世に末永く受け継がれて欲しいと思う作品が、
ことごとく手に入りにくくなっている現状に悲しくなってくる。
日本の出版界は、いや、日本の将来はホントに大丈夫か??
吉川英治文学新人賞受賞作品。 -
1998年12月15日読了。
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愛犬家に。
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椎名誠お得意の自伝的小説。今作は主人公の家で共に暮らしていた3匹の犬の、それぞれの時系列に沿って家庭での出来事が繰り広げられています。今では犬も猫も家の中では家族のような扱いをされていて、寒かったら服を着せ、少しでも体調に悪い変化が起こればすぐさま病院へ、みたいな感覚ですが、この本の中では一切そういう記述は出てきません。ジョンがいなくなった時も本気で探すことはなく、チヨがフィラリアにかかった時も具合が悪いって察していながら、病院に連れていくまでだいぶ時間かかっていたし。でもまあ、昔はそうだったんだろうな。今が過保護すぎるのかもな。椎名氏自身もあとがきで「鎖などに繋がれず好きなところを走り回れたあの時代は犬にとって今よりずっと幸せだろう」的な事、書いていたし。一体何が動物にとって幸せか?っていうのは考え始めるとキリがなくなるからイヤなのですが、でも、やっぱりちょっと考えずにはいられなくなってしまいました。
著者プロフィール
椎名誠の作品





