- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061849198
感想・レビュー・書評
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テレビ創成期の話し。景山民夫はスピリチュアルに傾倒していく。
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泣いた。
これ読むと、青島幸男と国会でコントの打ち合わせするなどといった、言わば最近の景山の各種コラムネタ体験が、上手に昭和40年代のフィクションとして導入されているのが解る。おそらく劇中のさまざまなエピソード、例えば当時、人気の絶頂を誇っていたバンド、クレイジーキャッツ(作中ではスパンク・ボーイズ)のパーティなど、単なるリサーチだけではなく、景山自らが体験した事実などを新旧交えながら、昭和40年代に置き換えて書き進められている箇所は多数あるのであろう。
物語は昭和43年から昭和49年(僕の生まれた年だ)の6年間を2年ごとに扱う。ほとんどヤクザのような切った張ったの世界で、言語道断の出鱈目な男たちが、かつてこの国にいた本当のスター俳優やエンターテイナーたちをきらびやかな舞台の上に飾り、それを電波に乗せてテレビという魔法の箱に送り込むこれはファンタジー。
同時に、テレビ局が会社として徐々に官僚化し、番組制作の熱が薄まり冷めていく様を、「エンゼル・サンデー」(明らかに現実の名作バラエティ番組、「シャボン玉ホリデー」をモデルとした作中番組)の黄金期から最終回、浅間山荘事件中継、オイルショック、ジャイアンツ長島の引退などを交えながらも、あくまで当時の世相ネタに寄りかかりすぎることなく、それ以上に熱い当時のテレビ局内のドタバタや人間関係にスポットを当て、しかも恋愛要素を限りなく排除したドラマとして書き上げるさまが素晴らしいし、そのストイックさはとても胸を打つものだ。
講談社ハードカバー、講談社文庫、集英社文庫版とありますが、景山の文庫版あとがきと大橋巨泉さんの解説が収録された、講談社文庫版がおすすめかと。すでに絶版ですが、ブックオフに100円で売ってます。
なるほど、小説ってこうやって書くのかー。
著者プロフィール
景山民夫の作品





