魔球 (講談社文庫)

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レビュー : 422
  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061849310

作品紹介・あらすじ

9回裏二死満塁、春の選抜高校野球大会、開陽高校のエース須田武志は、最後に揺れて落ちる"魔球"を投げた。すべてはこの一球に込められていた…。捕手北岡明は大会後まもなく、愛犬と共に刺殺体で発見された。野球部の部員たちは疑心暗鬼に駆られた。高校生活最後の暗転と永遠の純情を描いた青春推理。

感想・レビュー・書評

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  • 全く先が見えない、予想もつかない、メークドラマが私は大好き。
    どれ程に実力があって、
    敵う者など無い、と誰もが認める強豪が相手だとしても、
    『球』の行方だけは最後の最後までわからない。

    九回二死満塁。
    ピッチャーの手を離れた瞬間、その『球』にどんな奇跡が起こるのか?
    序章からぎゅっと心を鷲掴みにされてしまった。
    すでに物語の中心である、
    ピッチャーマウンドに立っている天才『須田武志』は
    眩しいほどの光を輝き放っている。

    東野さんは、
    ここからどんな魔球を魅せてくれるのだろう?
    そう期待し始めた途端、
    天才が死んでしまった。

    筋書きの無いドラマが好き、と言いながら、
    まさか、ここで主人公級のエースの存在を失うなんて予想だにしていなかった。

    序章はスカッと晴れた爽やかなゲームで上がった幕であったが、
    読み終えてみると、
    ぽつり、ぽつりと振り出した雨が、
    最後にはどしゃぶりにでもなっていた様な、
    あまりにも悲しい結末。

    することがなくて、
    でも、何か考えたくて、
    表紙をじっ…と見つめ続けていたら、
    『魔球』のなかに潜んでいた
    『鬼』を見つけてしまった。

    (こいつが、真の犯人じゃないか?)

    私はそう思う事にした。

  • アニキはいつも一人だった。
    なんて悲しい言葉なんだろう。
    それでも、最後の弟の日記に、少しだけ救われた気がします。

    推理小説のネタバレ記事は気がすすまないけど、私の心の整理のために書きます。
    以下ネタバレ。

    選抜高校野球に出場した高校球児(野球部捕手の北岡)が殺された。
    同じ頃、ある会社で爆弾事件が起き、社長の誘拐騒動が起きる。
    警察はふたつの事件をそれぞれ捜査する。

    しばらくすると第二の事件が起きる。
    北岡とバッテリーを組んでいた天才投手と呼ばれている須田が死体で発見される。
    須田は右腕を切り落とされ、右腕は見つからない…。

    須田は母子家庭で、母、弟と暮らしていたが、本当の親子ではない。
    須田は、現在の母の亡き夫の妹が産んだ子供だった。妹は未婚のまま須田を産み、4歳頃まで一人で育てていた。
    その須田の本当の父親というのが、爆弾事件、誘拐騒動のあった会社の社長だった。
    この会社の社長は、須田の実の母と結婚するつもりでいたが、仕事で世話になっている人から娘婿にと可愛がられ、須田の実の母とその子供を結果的に捨てることになった。
    須田の実の母は、須田家に子供共々引き取られた後に自殺して死んでしまった。
    須田は、そのまま須田家の長男として育てられた。
    しかし、須田家の大黒柱である父親は職場の爆発事故で死亡。母子家庭として貧しい生活を送っている。
    須田兄弟は、母を助けるために、兄は野球で、弟は勉強でお金を稼ぐことをきめる。

    須田が魔球を練習していたことをキッカケに、警察は爆発事件があった会社の野球部に所属していた男に行きつく。
    その男は、会社の事故が原因で足が不自由になり野球ができなくなっていた。その上、その事故の原因も会社に隠蔽された。
    男は、会社に復讐するためにダイナマイトを持って会社に特攻しようと考えた。しかし、須田にそんなことはしなくていい、俺が爆弾をしかけてやる、と言われる。
    しかし、須田は爆弾が爆発しないように細工をして仕掛けた。結果、爆発せずに大騒ぎになって終わっただけ。男の復讐心について、須田は、「自分のせいでだれかかわ死んだらどうしようって思ったなら、その程度ということ」と。
    爆弾騒ぎの真相はこういうことだった。

    殺人事件の真相はというと、北岡殺しの犯人は須田だった。
    須田は「約束を破る人を許さない」という強い考えを持っている。
    これは、須田の実の父親が「必ず迎えに来る」と言ったのに結局迎えに来ることはなかったこと、須田の実の母はこの父の言葉を信じ、須田を連れて毎週駅で終電まで待ち続けたという幼い頃の記憶が深く影響しているのだろう。
    須田自身、プロ入りして育ての母を助けることを目標にしていたが、須田の体はプロ入りに耐えられないほどに故障していた。そして北岡は、須田の故障に気付いていた。
    須田は北岡に強く口止めして、北岡も口外しないことを約束するが、北岡は須田の故障について監督の教師に相談しようとした。
    須田は、北岡の大切なもの(愛犬)を殺すことで、約束を破ろうとした北岡への報復を果たそうとした。
    しかし、愛犬を殺した時に北岡と須田がもみ合いになり、結果的に北岡も殺してしまった。

    須田は、その後、実の父である会社社長に会い(これが誘拐事件の真相)、自分と母がいかにつらい思いをしたかをぶちまける。
    そして、その社長に、育ての母への援助を約束させる。
    その翌日、須田は自ら命を絶った。
    須田は、弟に、自分が死んだら右腕を切り落として発見されないようにしろと指示を出していた。弟は、兄の指示に従った。
    これが、ふたつの殺人事件の真相です。

    須田は、自分の体が野球に耐えられないこと、チームメイトの北村を殺してしまったことに絶望しながらも、母と弟を助けるために、自分がいなくなった後のことまで考えて。
    高校生の男の子に、ここまで背負わせるか…って、すごく悲しい気分になった。

    うまく言えないけれど、現実の世界でも、若い天才アスリート達は同世代の若者とは比べられない様々なものを背負っていると思う。
    そして、きっと凡人達には理解できない感情も持っている。
    この物語に出てくる須田少年は、何度も「天才」と形容されている。
    須田少年の考え方や、自ら死を選び弟に腕を切り落とさせたことについては、多くの読者には理解の範疇を超えているだろう。
    須田少年が「天才」と何度も形容されていることは、その点に対する筆者の伏線なのかもしれない。

  • 爆発事件と野球、どんな接点があるのか深読みしながら自分で裏の裏まで考えながら読んでいる時間が楽しかった。これこそ読書の醍醐味なんて舞い上がっていたけれど物語を読み進め
    蓋をあければ思いも寄らない展開に激しい切なさがこみ上げてきた。
    すごい内容が隠されていて衝撃だった。
    一途ということへの狂気すら感じるお話。

  • 高校野球を舞台にしたミステリー。将来を嘱望された投手と捕手が遺体となって見つかるという、そしてそこに魔球というフレーズが隠されていて事件との絡みはどうなるかという話。エースと呼ばれた投手は孤高の男という存在感を醸し出していて、投球なども見て儚く切ない最期だった印象。学校からへの爆破予告、誘拐、犯人とされた人物はじつは濡れ衣を着せられていたという事実、投球のあの一球は魔球だったのか、部員らの思う気持ちはどうなのか、緻密な犯行計画の真意は果たしてどうなのか隠された真実が見え、そして物悲しい終わり方が残る。

  • 最後の武志の手紙の内容が感動的(T_T)

  • 「魔球」はちょっと仰々しくないか…?ただ揺れて落ちるボールに。そして、その魔球はどれだけ物語の中核を担っていたのか…それと、お兄ちゃんの性格の歪みっぷりが残念だ。約束を守ることは美徳だけど、固執しすぎれば病気だ。でも様々な要素が一つに集約していくときの高揚感は流石です。一度物語を分解して、並び替えて、配置して、俯瞰してって作業なんだろうな。その作業はやっぱり理数系の脳の動きなんだと思う。

  • 9回裏二死満塁、春の選抜高校野球大会、開陽高校のエース須田武志は、最後に揺れて落ちる“魔球”を投げた。すべてはこの一球に込められていた…。捕手北岡明は大会後まもなく、愛犬と共に刺殺体で発見された。野球部の部員たちは疑心暗鬼に駆られた。高校生活最後の暗転と永遠の純情を描いた青春推理。

  • とある高校球児の話。

    スポ根ではない。
    なにも殺すことなかったんじゃないかな。
    しかしやっぱり小説に図説はいらない。

  •  1988年に刊行された『魔球』は、『放課後(1985年)』で江戸川乱歩賞を受賞してデビューした東野圭吾さんが30歳の時の作品である。

     私が読んだことのある作品の中では『卒業(加賀恭一郎シリーズ/1986年刊行)』に次いで古い作品なので、近年の『祈りの幕が下りる時(加賀恭一郎シリーズ)』のように、読者を序盤から物語の中に引きずり込んでいくような力強さはなく、まるでスタンドから観戦させられているような疎外感を感じる。しかし、後半になると並行する二つの筋の中で、素性があいまいだった登場人物たちの関係が徐々に紐解かれ、紛れもない東野作品であることが判明するのだ。

     血のにじむような努力を重ね、運命を切り開こうとした兄を襲った不運とは何か、改めて書くまでもないことだが、東野圭吾さんの作品は、悲しい生い立ち、苦しい経験、辛い結末の3拍子が揃った作品が多い…読んでいる時は結末を知りたくて緊張しているので感じないが、読了後は、その場に居合わせたかのような疲れが出る。

     私は、故障した投手が魔球を編み出そうとする設定から、横山秀夫さんの『出口のない海』を思い出した。

  • 切なく、哀しいミステリー。
    テーマは家族愛。

    東野圭吾の初期の作品(1991年の作品)。やはり東野圭吾はこのような人間模様や泥臭い感じのテーマの作品のほうが好きです。
    題名のとおり、野球がらみの物語です。
    魔球を投げた高校野球の天才ピッチャー。そしてそのキャッチャーが大会後殺害されます。また、時同じくして、ある企業での爆弾騒ぎ。そして、また次の殺人事件が起こります。一連の殺人の犯人は誰なのか?企業での爆弾との絡みは?天才ピッチャーの野球へのこだわり、魔球とは?とさまざまな謎とその伏線が回収され、最後その背景には、哀しい物語が隠されていました。

    犯人やトリックがわかってスッキリというミステリーではなく、野球にかける思いや高校生らしからぬクールさと非情さを持ち合わせた主人公、そして複雑な余韻を残すミステリーはさすが東野圭吾だと思います。

    時代設定が昭和39年だったり、主人公の「約束」へのこだわりが異常だったり、そもそも右腕を切断された殺人などなど、ちょっと違和感を覚えるところはありますが、それらすべてがひとつのテーマにつながっていくところがすばらしいと思います。

    あっという間に読みきってしまいました。

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著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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