御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2165
レビュー : 200
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061849433

作品紹介・あらすじ

嵐の夜、マンションの十一階から姿を消した男が、十三分後、走る電車に飛びこんで死ぬ。しかし全力疾走しても辿りつけない距離で、その首には絞殺の痕もついていた。男は殺されるために謎の移動をしたのか?奇想天外とみえるトリックを秘めた四つの事件に名探偵御手洗潔が挑む名作。

感想・レビュー・書評

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  • 本書が私の実質的島田作品初体験の作品である。それは私が大学1年の時だった。確かある月曜日の社会学の講義の際にいつもつるんでいた友達のうち、O君が読んでいた本がこの作品だった。なにげに「何、それ?面白いの?」と聞いたところ、「読んでみる?俺もう読んでるからいいよ」と云って貸してくれた。

    その授業は本書の最初の1編「数字錠」を読むことに変ってしまった。
    結論を云えば、なかなか面白かったというのが本音。それよりも文章の読み易さにびっくりした記憶がある。先にも書いたが、当時私は久々に読む推理小説にブラウン神父シリーズを読んでおり、その読み難い文章に「こんなもんなんだろう」と思いつつ、難解な文章を読み解くことがあえて読書の愉悦をもたらすのだ、と思っていたが、本書を読んでから、実はそれがとんでもない間違いだと気づいた。御手洗と石岡が依頼を受けて捜査するその過程は臨場感があり、云ったことのない東京や横浜の街並みも、異国の風景描写より遥かに理解しやすかった。
    その90分の授業で読み終わったのはこの1編のみ。「面白かった!」といって返しそうとしたら、貸してくれるというので遠慮なく借りることにした。思えばこの時既に彼の策略にはまっていたのだ。

    で、本作の感想は上の評価の通り。普通に面白いといったところ。一般的に評価の高い「数字錠」だが、私はあまりそれほど感銘を受けなかった。後で御手洗シリーズに没頭しだして、この作品以降、御手洗がコーヒーを飲まなくなったのを改めて知った。

    私にとって本書の目玉は2編目の「疾走する死者」である。これはもう御手洗の演奏シーンの素晴らしさに大いに魅了されてしまった。文字で書かれた演奏シーンから超絶技巧のギタープレイが奏でる爆音が、流麗なフレーズが聴こえてくる思いがした。いや実際頭の中では音楽が駆け巡っていた。この作品での御手洗のカッコよさは随一である。
    満足の体で読了した私は本を返す際に「他にもない?」と訊いたのは云うまでもない。そしてそのとき既にO君の手には『占星術殺人事件』の文庫が握られていたのだった。

  • 警察の捜査を撹乱させるためにわざと嘘の推理を披露したり、なぜか楽器が得意でプロ並みの演奏をしてバンドメンバーから嫌味っぽいやつだと思われたり、はじめのうちはやる気なくて事件に関わることを拒否しておいて犬が殺されたと知った瞬間急にやる気出したり、とにかく御手洗の個性が強く出ている作品でした。疾走する死者のようなバカミス一歩手前なダイナミックなトリックが好きです。

  • 新本格派の大御所 島田荘司さん初読本をブックオフで購入。今では珍しくない主人公の変人奇人ぶりの表現に当たって長く35年に渡り映像化の打診を全て断っていたが、何故か2015年玉木宏さんはぴったりとOKが出てテレビ化映画化になったそうな、玉木さん続編もよろしくです。

  • 御手洗潔の短編集。ひとつめの『数字錠』が一番好き。異邦の騎士といい、やはり私は情に訴えかけられる話に弱いです。
    『疾走する死者』と『ギリシャの犬』は両方ともロープを使ったトリックでしたが、『疾走する死者』、とんでもないトリック。死体を振り子のようにして放り投げるなんて一生かかっても考えつきません。あと御手洗、なんでやたらギターがうまい設定なんだろう。ギターを演奏する場面で異邦の騎士を思わせる描写があり、こういうのがシリーズものの醍醐味だなとしみじみ思います。こういうことされると弱い。
    御手洗の性格が好きな人にとってはかなり楽しめる短編集でした。あと私自身犬派なので御手洗の犬好きは嬉しかったです。ただ医学部中退は勿体ないなあ。

  • 御手洗潔にがっちりハートを掴まれてしまい、お行儀良く占星術殺人事件から順を追って読んできましたが、ここにきてようやく“御手洗潔という男”についてフォーカスされたような気がします。特に数字錠における御手洗の苦悩と選択はお見事でした。明晰な頭脳と強い信念、そして人の名前は憶えないくせに生年月日はけして忘れない変わった特技。数々の謎を鮮やかに解き明かすその手腕は素晴らしいけれども、読者として一番謎に思っているのは御手洗潔という男そのものについてだったりする。

  • 占星術殺人事件から入りました。
    王道推理ものらしい事件内容、登場人物の関係。
    それ以外でも言葉に還元できないレトロな雰囲気が気に入り、継続して
    読み進めることにしました。

    そんな二冊目。
    御手洗潔シリーズ短編集。

    『挨拶』と名がつくとおり、これを読めば後は予備知識もいらない(かも)!
    偏屈家で変人で気まぐれで人のことなんて爪の先ほども考えていない、
    探偵・御手洗潔についてすぐに把握することができます。
    もちろん、ワトスン的ポジションの石岡君のことも。

    短編なので、トリックには重厚感はありません。
    本当に人となりに注目して読む方が面白いかと思います。
    ギター演奏が神がかり的に上手いトコとか、なかなかのグッと来るポイントかも。

    私は『数字錠』のストーリーが一番良かったです。
    何故探偵と相棒はコーヒーを飲まなくなったのか?
    これを読めば納得。
    終盤、偏屈奇人な探偵の見せた意外な表情と心境を思うと、
    つい涙腺が緩んでしまいました。

  • 御手洗潔の魅力全開の短編集。
    人間の本質を鋭く見つめ、弱者に優しく、自分に厳しい御手洗。
    天才的なギタリストで、友人を愛し、人生を楽しんでいる御手洗。
    自信家で、行動的で、犬好きで、どんな強者にも阿らない御手洗。
    推理の鮮やかさは言うまでもない。
    後年の様々な長・短編でも繰り返し描かれる御手洗像の原点が、この一冊にある。
    「無人島に持って行く10冊」の中に入れるべき作品だと思う。

  • 自信家で気分屋、奇麗なヒーロー像では決してないものの、表現は不器用ながら(←僕にはそう見えてしまう)その優しさは底抜けに深い…

    御手洗潔モノはこの本で3冊目ですが、現状僕の目に彼はこう↑映ります。
    占星術殺人事件で僕に届いた御手洗潔像は、上の文章の前半部分。
    それで、ぼくは彼に惚れました。それはロックスターに惚れるような感じ。

    今回本書『御手洗潔の挨拶』を読んでみると、今度は上の文章の後半部分が加わって、僕は御手洗潔像を更新しました。

    読んでいて、まったく息つく暇もないほどスリリングな推理小説であることは間違いございません。
    加えて、探偵さんが上記の通りこれまたまったく魅力的なのです。

  • 「数字錠」
    無邪気に謎を解くことを楽しんでいた御手洗が、謎を解くことで壊れる世界があることを知る。
    このはなしが、御手洗の犯人や事件に対する向き合い方を決めたのだな、と納得。

  • 数字錠良かった…本当に良かった、このあと続けて異邦の騎士読んだからますます良さが増した

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著者プロフィール

1948年広島生まれ。武蔵野美術大学卒。『占星術殺人事件』での衝撃的なデビューから現在まで日本ミステリー界の旗手として傑作を多数刊行。同時に新人の発掘にも力を尽くしている。現在その読者は世界に広がる。

「2020年 『改訂完全版 毒を売る女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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