異邦の騎士 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 765
レビュー : 92
  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061850446

作品紹介・あらすじ

失われた過去の記憶が浮かび上がるにつれ、男はその断片的"事実"に戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺した男なのか?そしていま若い女との幸せな生活にしのび寄る新たな魔手。記憶喪失の男を翻弄する怪事の背景は?蟻地獄にも似た罠から男は逃げられるか?希代の名探偵・御手洗潔の最初の事件。

感想・レビュー・書評

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  • 島田荘司の第1作目の小説とのことです。
    いまさらの読了ですが、実は「御手洗潔」物ということで勝手に本格推理小説と思いこんでいたら、全然そんな感じはなくて、ミステリーというよりはハードボイルド・タッチのサスペンスという趣でした。ご本人の「あとがき」によると、当時のプーのような生活の中からそれをイメージして生み出された小説だったようです。
    記憶喪失となった主人公が事件に巻き込まれ、ひたすら葛藤する内面の心理を描写しながら、怒涛のように突き進んでいく展開に目が離せなくて面白かったです。衝撃的な出だしから始まり、緩急をつけた物語進行、そして中盤の「日記」のあたりからの圧倒的な展開につい引き込まれてしまいました。著者も「あとがき」で語るような詩的な表現があるかと思えば、読者を一気に物語へ誘う力強く重厚な展開と筆致に大いに魅せられました。
    しかし実のところを言えば、中盤の「日記」のあたりからおぼろ気ながらプロットが察せられてしまって、まあ、「異邦の騎士」御手洗の颯爽たる登場のところではすでに予定調和的な感じとなってしまっていたのですが(笑)、しかし、そうとはわかってはいても、そのとてつもない安心感に胸をなでおろした次第です。(笑)
    ちょっと普通ではあり得ないような状況展開はストーリーありきとしてまあ許容範囲でないかと思います。
    著者はその後、『占星術殺人事件』で新本格物の旗手として一世を風靡しますが、その前段階の邂逅という意味でも思わず微笑んでしまうラストでした。
    その後の短編でもたびたびジャズ音楽が登場しますが、本作でも登場するジャズ音楽に浸ってみたくなりました。

  • 今まで焦らすように引っ張ってきたが、本書が私を島田信奉者にした作品である。そしてこの作品は私の読書人生の中で未だに永遠のベストとして燦然と輝いている。
    私が読んだのはハードカバー版で、確か講談社の何十周年かの記念書き下ろしシリーズの1冊として刊行されたらしく、えらく豪奢な装丁だったのを覚えている。
    特に西洋画で描かれた馬上の騎士の表紙絵が飛び出してきそうなほど迫力があり、果たしてどんな物語かと胸躍らせた。

    しかしこの表紙とは全然無関係の話が展開される。物語の舞台は騎士が出てくるような西洋の街やお城ではなく、関東の公園で記憶喪失の主人公が目が覚めるところから始まる。その後彼は周辺を彷徨い、紆余曲折を経て知り合った石川良子という女性と同居するようになる。そしてこの2人の生活が語られるのだが、これが実に私の心をくすぐった。当時学生だった私にとって彼らの年齢が近いこともあり、そう遠くない将来の生活のように見えたからだ。そしてこの2人の生活は貧しいけれど小さな幸せというありきたりなモチーフながら、私の願望を具現化したような形だった。

    そして、物語は意外な方向に進む。それは・・・いや詳細を語るのは止めておこう。思いの強さゆえ、微に入り細を穿つように述べてしまいそうで、これから読む方々の興を殺ぎそうだから。ただ颯爽と現れる御手洗の姿にはきっと快哉を挙げるだろう。これは今でも私には全てのミステリの中でも最高のシーンである。そしてなによりも謎解きを主体としたミステリでこれほど胸を打ち、感動するとは思いもよらなかった。本作で御手洗ファンとなった女性が増えたように、私もこれで御手洗、いや島田ファンになり、こんなミステリを書く人はきっと素晴らしい人に違いないと信奉するまでに至った。これは今でも同じだ。

    ただ惜しむらくは「何か面白いミステリない?」と訊かれたときに、本書をお勧めできないことだ。既読の方はご存知のようにこの作品を存分に楽しむにはシリーズに関する予備知識が必要で、この本の前にせめて2作は御手洗シリーズを読まなければならない。
    だから私はよく「島田荘司の御手洗シリーズがお勧めです。『占星術殺人事件』、『斜め屋敷の犯罪』、(『御手洗潔の挨拶』、)『異邦の騎士』をとりあえず読んでみて下さい。これが刊行順で、ぜひともこの順番で読むことをお勧めします」という風に勧めている。『占星術~』が面白いこともあって、幸いにしてこの勧め方で感謝される事が多くなった。今はそうでもないが、かつては多くの島田信者を作ることが私の悦びでもあったようなふしがある。

    本書で教えてくれたのは人を愛することの温かさ、苦しい時にこそ助けてくれる友人を持つことが人間にとってかけがえのない宝石だということだ。それを教えてくれた島田荘司こそ、私にとって異邦の騎士その人だと思うのである。

  • 刊行は4番目ですが、御手洗潔の最初の事件。
    なんとも悲しい話。

  • 悲しい結末だったが、主人公が記憶が戻って救われたと思ったので、読んでる方も救われた。

  • 全く前情報無しに読んだから吃驚した!!
    まさか彼が彼だとは・・・後半はもしかしたらって気にもなったけど思いもよらなかった。
    でもこのタイミングで読んだから自分としてはより面白かったかも。
    これから見る御手洗モノも楽しみだ。

  • そうだろうなと思ったらやはりそうでしたか。
    こんな始まりだったんですね。
    読み手の推理をことごとく打ち砕く結末が面白い。

  • 写楽、アルカトラズが面白かったから、昔の作品をと。
    御手洗シリーズは読んだこと無い。

    記憶消失者が自分の記憶を探す話。
    設定が面白い&読みやすい。
    結末は若干無理があるけど、引き込まれる文章でした。

  • どちらかというと叙情的でサスペンス風。
    「俺」 が誰なのかに気付いて、シリーズの “エピソード0” 的位置付けだと分かった。
    http://blogs.yahoo.co.jp/rrqnn187/13055984.html

  • 記憶喪失になっていることに気づいた人物の視点で進んでいく、ミステリっぽくない形式のミステリ。過去の断片が明かされる度に、主人公と一緒に怒ったり悲しんだり、感情を揺さぶられ続け、すべての真相が明らかになるころにはもうヘトヘトになっている。

  • 解説に処女作であり、当時の生活の風景がすべて詰め込まれている、そしてもうこのようなものは書けないとあった。素直なのに尖っていて自信に満ちている。変わった人だなぁと思った。小説もまさに、という感じで、後半の解決部分はものすごく引き込まれた。

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著者プロフィール

1948年広島生まれ。武蔵野美術大学卒。『占星術殺人事件』での衝撃的なデビューから現在まで日本ミステリー界の旗手として傑作を多数刊行。同時に新人の発掘にも力を尽くしている。現在その読者は世界に広がる。

「2020年 『改訂完全版 毒を売る女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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