眠りの森 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061851306

作品紹介・あらすじ

美貌のバレリーナが男を殺したのは、ほんとうに正当防衛だったのか?完璧な踊りを求めて一途にけいこに励む高柳バレエ団のプリマたち。美女たちの世界に迷い込んだ男は死体になっていた。若き敏腕刑事・加賀恭一郎は浅岡未緒に魅かれ、事件の真相に肉迫する。華やかな舞台の裏の哀しいダンサーの悲恋物語。

感想・レビュー・書評

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  • バレエ団で起きた殺人事件の謎を追うミステリー。
    加賀恭一郎シリーズ第2弾、だそうです。

    バレエの描き方に時代を感じました。

    「バレエを楽しもうというのは、精神的にも金銭的にもゆとりのある人だけです。しかし残念ながら、大部分の国民はどちらも持っていない。皆、疲れ果てています。」(P139)

    この作品が発表された1989年当時は、国民は「一億総中流」で、ジャパン・アズ・ナンバーワンと評価され、バブル経済により、日本が最も華々しい時代。

    そんな豊かな時代なのに、バレエは上流階級が嗜む娯楽で庶民からは縁遠いものとして描かれていることを興味深く感じました。


    コロナ禍が去り再び劇場でバレエを楽しめる日が来るのを祈りつつ、読了。

  • 加賀恭一郎シリーズ第二作。
    バレエを題材にした内容は知識のない自分でも楽しめる内容だった。
    また、加賀の恋物語の側面を持ったストーリー仕立てであったことも更に楽しめた作品であった。

  • 加賀恭一郎シリーズ第2作目。卒業から3年後、89年の作品です。古さはそんなに感じませんでした。
    バレエ団で起きる殺人事件、犯人とその真相を突き止めていく、いわゆる王道路線のストーリー展開です。しかし、相変わらず東野さんのわかりやすい文体と内容、伏線と後半に畳み掛ける回収、毎度ですが最終段階に至るまで犯人・真相も私はわからず、、本作も楽しませていただきました。ただ、加賀恭一郎のキャラ設定がその後刊行されていく作品達とは少し違う印象ですね、本作女性にかなり積極的!本当は毎回作品毎にマドンナ的な女性を出して、加賀恭一郎の恋模様も追いかける設定だったのかな?本作、特番ドラマ化もされていますが見てなかったのでHuluとかで見ようかなと思います。

  • 加賀恭一郎シリーズ2作目。
    バレエ劇団より発生した殺人事件の真相を追う物語。
    どことなく気障な表現が目立つのは発表された時代にもよるのかな(1992年発行)。
    このシリーズは人間関係が複雑で気を付けないと見失う事もしばしば。
    真相がやはり意外なものでした。
    読み終わった後改めて最初の場面を読むといい感じのループで。

  • 加賀恭一郎シリーズ2作目。
    バレエ団で起きた事件を若き刑事・加賀が真相を追うストーリー。事件の真相を追う中で、事件の関係者である女性に惹かれていくというストーリーが、ガリレオシリーズの【聖女の救済】と似ているなぁと思いましたが、また違った内容で楽しめました。バレエに人生をかけ、愛していたからこその事件。切ない読後感でした。

  • ミステリーなのに、最後で思わず感動してしまうって、どーゆーこと?
    安定のミステリー。なのに、最後はまさかの!

    読むべし!

  • 【感想】
    少し言い方に語弊があるかもしれませんが・・・・
    メジャーな団体スポーツではない特殊なスポーツをしているプロフェッショナルは、どこか天才肌ながらも世間とズレている人が多いよなーと共感しながら拝読。
    本作品のスポーツは「バレエ」だが、「体操」然り、「フィギュアスケート」や「水泳」然り、プレイヤーというかそのジャンルそのものが浮世離れしているイメージが個人的にある。
    その原因は完成度への飽くなき執念であったり、貪欲さやこだわり、プロ意識などが高さなど、多岐に渡る。
    ちょっと古いが、「あしたのジョー」の登場人物のようなストイックさをこのジャンルのスポーツのプレーヤーには感じる。

    閑話休題のつもりが些か長文になりましたが、、、
    さて、大好きな加賀恭一郎シリーズを読み進めていくにあたって、特にさしたる理由なく「読まず嫌い」だった本作品に初めて着手。
    (読んでいる途中で、「あ、この本なにかで目にしたことがあるなぁ」と思っていたが、石原さとみ主演でTV放映していたなと読み終わってから思い出した。)
    優秀な頭脳を持ち、気遣いや人情味あふれながらも、どこか他人と一線引いている。そんな加賀恭一郎には珍しい、彼の切ないラブストーリーが主題の一作。
    結果、刑事と犯人という立場で悲恋に終わってしまうのだが、加賀恭一郎の人間性が素晴らしすぎて、2人の恋愛がどこか綺麗なもののように映った。

    あと、終わり方がまたニクイというかキザだね~
    加賀恭一郎シリーズでやはり目を引くのは、いちいち加賀恭一郎が吐く台詞がキザで素敵すぎるところかもしれない。
    男前すぎる。。。男なのに惚れそうだ。。。

    ただ、一つマイナスのことを言うとすれば、同シリーズである「悪意」「赤い指」「新参者」「麒麟の翼」「祈りの幕が降りるとき」と比べたら、少し作品のクオリティは下がるかな・・・
    (この5作品はいずれも後作だし、完成度が凄すぎるから仕方ないが。)

    次の加賀恭一郎シリーズは、本作品と同じく読まず嫌いで敬遠していた「どちらかが彼女を殺した」と、「私が彼を殺した」を読もうと思います。


    【あらすじ】
    美貌のバレリーナが男を殺したのは、ほんとうに正当防衛だったのか?
    完璧な踊りを求めて一途にけいこに励む高柳バレエ団のプリマたち。
    美女たちの世界に迷い込んだ男は死体になっていた。

    若き敏腕刑事・加賀恭一郎は浅岡未緒に魅かれ、事件の真相に肉迫する。
    華やかな舞台の裏の哀しいダンサーの悲恋物語。


    【引用】
    p149
    加賀は結局マンションの前まで送ってくれた。そして時間が遅くなったことを、さかんに詫びていた。気にしないでください、と未緒はいった。
    「どうせ帰っても一人だから。今夜は楽しかったです」
    「俺もです」
    「今度、剣道を見せていただけます?」
    未緒がいうと加賀は一瞬だけ目を伏せた。小さな動きだったが、まるで一番デリケートな部分に触れられたような反応に、未緒には見えた。
    「今度」と彼はいった。「必ず」
    未緒は頷き、マンションに向かって歩きだした。


    p185
    柳生は加賀の考えを察したのか、にやりと口を曲げ、「だけど役を狙って誰かが俺を殺そうとしたなんてことは、絶対に考えられないぜ。賭けてもいい」
    「そうかな」
    「そうさ。ダンサーはそんなことはしない。出来ないんだ。よくドラマなんかでさ、プリマの座を狙って相手を陥れるなんていう臭いシーンがあるだろ。だけどあんなこと、絶対にないぜ。ダンサーというのは踊りに対しては潔癖だし、他人との実力差を客観的に捉えているものなんだ。自分より優れた者がいる時に、その者をおしのけて自分が踊るなんてことは本能的にないんだよ。役が欲しい時には実力で奪う、それしかないね。傍目には優雅だけど、なかなか生存競争は厳しいんだぜ」


    p297
    「話してください。あなたが沈黙を続ける限り、色々な人たちの苦しみは消えない。誰もが深い傷を負ったまま生きていくことになるし、俺はその人たちを最後まで追い続けることになるのです。どちらにとっても、不幸なマラソンでしかない」


    p303
    すべてはあの夜が始まりだった。
    あの日のレッスン後、未緒は亜希子から自主練習をしないかと誘われた。
    二人はとりあえず食事に出かけた。そしてそのあとで稽古場に戻ったのだ。
    問題はここだった。
    前後の状況を考えると、どうやら風間はずっと二人の行動を追跡していたのだ。
    未緒がいなくなるのを見た風間は、建物に近づいた。一方未緒は買い物を済ませて帰ってくると、玄関の鍵を開けて中に入った。だがこの時に、見知らぬ男に襲われている亜希子の姿があった。
    プリマを守らなければ、と未緒は思った。今、彼女の身にもしものことがあれば、最後の夢も叶わなくなる。
    彼女は身を低くして中に入って花瓶を取ると、男の頭目がけて両手で思いきり振った。


    p319
    「聞こえますか」と加賀はいった。彼女はさすがに少し驚いたようだが、彼がなぜこの秘密を知っているかということは聞かず、「近くなら」と答えた。
    「加賀さん、あたしを逮捕してください」
    「ええ、あなたを逮捕します」
    「これでようやく罪の償いができるんですね。とても長い日々でした」
    「償いは必要です。しかし、公正な審判もまた必要です。あなたにとっても今度の事件は不運だった」

    「俺があなたを守ってみせる」と彼は言った。
    「加賀さん。あたし、加賀さんの声を忘れません」
    声が詰まった。その彼女の体を引き寄せ、加賀は囁いた。
    「大丈夫。耳のこともきっとなんとかしてみせる」
    彼はフロリナ姫の顔のままの未緒に、静かに口づけした。
    「君が好きだから」
    加賀は未緒の身体を強く抱きしめた。

    • きのPさん
      >>kuma0504さん
      コメント有難うございます!
      確かに同シリーズの別作品で美緒の裁判で証人として出席したみたいなエピソードもありま...
      >>kuma0504さん
      コメント有難うございます!
      確かに同シリーズの別作品で美緒の裁判で証人として出席したみたいなエピソードもありましたね!
      加賀恭一郎シリーズの外伝として、是非この恋物語の続編を書いて欲しいですね。。。
      2019/07/04
    • kuma0504さん
      何故か誤作動で、フォローが外れていました。すみません。直しときました。
      「祈りのー」では「恭一郎最大の謎が明らかになる」という意味の煽り文句...
      何故か誤作動で、フォローが外れていました。すみません。直しときました。
      「祈りのー」では「恭一郎最大の謎が明らかになる」という意味の煽り文句があったと思うのですが、恭一郎にとっての「人生最大の謎」は美緒と経緯だと私は思っています。絶対これだけで一冊本を作るべきだ、と5年くらい前からいろんな所に書いています(^_^;)。
      2019/07/04
    • きのPさん
      >>kuma0504さん
      再度フォロー頂き、有難うございます(笑)
      確かに加賀恭一郎シリーズにおいて、美緒の存在(というか、美緒の現在の...
      >>kuma0504さん
      再度フォロー頂き、有難うございます(笑)
      確かに加賀恭一郎シリーズにおいて、美緒の存在(というか、美緒の現在の状況)は大きな謎の1つですよね!
      そこに触れる作品は欲しいものです。何より、加賀恭一郎の恋物語は個人的にもニーズ大です(笑)

      ただ、それ以上に加賀恭一郎の生い立ちというか母親のエピソードも凄く気になっていたので、「恭一郎最大の謎」という煽り文句も個人的には激しく同意できました。

      ちなみに・・・
      もう観られたかもしれませんが、「麒麟の翼」と「祈りの幕」は実写版もとても良い作品ですよ。
      両方とも、何度も見てその都度号泣です。
      2019/07/05
  • 「眠りの森」 東野圭吾 さん

    1.読書動機
    休日に気持ちを軽やかにしたかったからです。
    そんな時は、読み慣れている、安心感ある作家さんの作品を選択します。
    そのお一人が東野圭吾さんです。

    2.小説
    加賀恭一郎さんシリーズ第二作です。
    舞台はプロのバレエ団体です。
    この団体に強盗がはいります。
    バレエ団体の方が正当防衛で誤ってあやめてしまうが入口です。

    ここからが東野さんの作品の面白さです。
    そう、犯人の動機への考察。
    そして、動機が生まれる物語。

    これらが、ミルフィーユのように、細やかな層の重なりのごとく、物語は展開します。

    3.時代への東野圭吾さんの想い
    作品では、西武ライオンズが秋山選手が登場します。
    バブルがはじけた1992年に生まれた「眠りの森」。

    バレエは野球のようにストレス発散の機会となるのか?の問いに対して、主人公の加賀恭一郎氏のコメントです。

    「バレエは精神的にも金銭的にも余裕ある人がみる作品です。
    大部分の国民はどちらももっていない。
    皆、疲れてしまっている。」

    4.私が東野圭吾さんの作品を読みつづける理由
    ミステリー作品であることはもちろんです。
    さらに、人間を優しく見守りつづけるその視線です。

    #読書好きな人と繋がりたい

  • とても悲しい話で読み終わった後に胸が締め付けられるような感じがした。
    バレリーナの世界は華やかなイメージが強いが、この本を読んでいると、過酷な練習が想像できて決して華やかな世界だけではないなと感じた。また、人生をバレエに捧げてきた人の気持ちもよく分かった。
    加賀が未緒の病気に気づいていてずっと未緒を気に掛けていたことや、二人の最後の終わり方がとても切なく泣けた。ぜひテレビドラマ版も見たいと思った。
    もし、自分が正当防衛で人を殺めてしまったら‥と考えさせられた。

  • シリーズ物だった為買った一冊。

    事件は解決に向かったが、なんだか悲しいラストだった。

    事件はどうなるかとか自分の頭では全く考えつかなかった。
    予想外の人が、殺人を犯しびっくりした。

    不運の積み重ねがありこうゆうラストなんだと感じた。

    バレエの人達の苦しさが少し知れた小説でした。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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