眠りの森 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 11964
レビュー : 1043
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061851306

作品紹介・あらすじ

美貌のバレリーナが男を殺したのは、ほんとうに正当防衛だったのか?完璧な踊りを求めて一途にけいこに励む高柳バレエ団のプリマたち。美女たちの世界に迷い込んだ男は死体になっていた。若き敏腕刑事・加賀恭一郎は浅岡未緒に魅かれ、事件の真相に肉迫する。華やかな舞台の裏の哀しいダンサーの悲恋物語。

感想・レビュー・書評

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  • 幕が開き、やがてそれが降りるまで、ずっと釘付けになってしまう、
    まるで、バレエの舞台を観賞しているかの様な読み心地であった。

    華やかな世界のなかで起こった殺人事件も、
    加賀恭一郎が、関係者である美しいプリマに心奪われるシチュエーションなども加わって、
    視覚的に楽しめたような、
    そして
    甘い余韻がいつまでも残る、

    東野作品のなかでは(稀な類だなぁ)と、思った。

  • 【感想】
    少し言い方に語弊があるかもしれませんが・・・・
    メジャーな団体スポーツではない特殊なスポーツをしているプロフェッショナルは、どこか天才肌ながらも世間とズレている人が多いよなーと共感しながら拝読。
    本作品のスポーツは「バレエ」だが、「体操」然り、「フィギュアスケート」や「水泳」然り、プレイヤーというかそのジャンルそのものが浮世離れしているイメージが個人的にある。
    その原因は完成度への飽くなき執念であったり、貪欲さやこだわり、プロ意識などが高さなど、多岐に渡る。
    ちょっと古いが、「あしたのジョー」の登場人物のようなストイックさをこのジャンルのスポーツのプレーヤーには感じる。

    閑話休題のつもりが些か長文になりましたが、、、
    さて、大好きな加賀恭一郎シリーズを読み進めていくにあたって、特にさしたる理由なく「読まず嫌い」だった本作品に初めて着手。
    (読んでいる途中で、「あ、この本なにかで目にしたことがあるなぁ」と思っていたが、石原さとみ主演でTV放映していたなと読み終わってから思い出した。)
    優秀な頭脳を持ち、気遣いや人情味あふれながらも、どこか他人と一線引いている。そんな加賀恭一郎には珍しい、彼の切ないラブストーリーが主題の一作。
    結果、刑事と犯人という立場で悲恋に終わってしまうのだが、加賀恭一郎の人間性が素晴らしすぎて、2人の恋愛がどこか綺麗なもののように映った。

    あと、終わり方がまたニクイというかキザだね~
    加賀恭一郎シリーズでやはり目を引くのは、いちいち加賀恭一郎が吐く台詞がキザで素敵すぎるところかもしれない。
    男前すぎる。。。男なのに惚れそうだ。。。

    ただ、一つマイナスのことを言うとすれば、同シリーズである「悪意」「赤い指」「新参者」「麒麟の翼」「祈りの幕が降りるとき」と比べたら、少し作品のクオリティは下がるかな・・・
    (この5作品はいずれも後作だし、完成度が凄すぎるから仕方ないが。)

    次の加賀恭一郎シリーズは、本作品と同じく読まず嫌いで敬遠していた「どちらかが彼女を殺した」と、「私が彼を殺した」を読もうと思います。


    【あらすじ】
    美貌のバレリーナが男を殺したのは、ほんとうに正当防衛だったのか?
    完璧な踊りを求めて一途にけいこに励む高柳バレエ団のプリマたち。
    美女たちの世界に迷い込んだ男は死体になっていた。

    若き敏腕刑事・加賀恭一郎は浅岡未緒に魅かれ、事件の真相に肉迫する。
    華やかな舞台の裏の哀しいダンサーの悲恋物語。


    【引用】
    p149
    加賀は結局マンションの前まで送ってくれた。そして時間が遅くなったことを、さかんに詫びていた。気にしないでください、と未緒はいった。
    「どうせ帰っても一人だから。今夜は楽しかったです」
    「俺もです」
    「今度、剣道を見せていただけます?」
    未緒がいうと加賀は一瞬だけ目を伏せた。小さな動きだったが、まるで一番デリケートな部分に触れられたような反応に、未緒には見えた。
    「今度」と彼はいった。「必ず」
    未緒は頷き、マンションに向かって歩きだした。


    p185
    柳生は加賀の考えを察したのか、にやりと口を曲げ、「だけど役を狙って誰かが俺を殺そうとしたなんてことは、絶対に考えられないぜ。賭けてもいい」
    「そうかな」
    「そうさ。ダンサーはそんなことはしない。出来ないんだ。よくドラマなんかでさ、プリマの座を狙って相手を陥れるなんていう臭いシーンがあるだろ。だけどあんなこと、絶対にないぜ。ダンサーというのは踊りに対しては潔癖だし、他人との実力差を客観的に捉えているものなんだ。自分より優れた者がいる時に、その者をおしのけて自分が踊るなんてことは本能的にないんだよ。役が欲しい時には実力で奪う、それしかないね。傍目には優雅だけど、なかなか生存競争は厳しいんだぜ」


    p297
    「話してください。あなたが沈黙を続ける限り、色々な人たちの苦しみは消えない。誰もが深い傷を負ったまま生きていくことになるし、俺はその人たちを最後まで追い続けることになるのです。どちらにとっても、不幸なマラソンでしかない」


    p303
    すべてはあの夜が始まりだった。
    あの日のレッスン後、未緒は亜希子から自主練習をしないかと誘われた。
    二人はとりあえず食事に出かけた。そしてそのあとで稽古場に戻ったのだ。
    問題はここだった。
    前後の状況を考えると、どうやら風間はずっと二人の行動を追跡していたのだ。
    未緒がいなくなるのを見た風間は、建物に近づいた。一方未緒は買い物を済ませて帰ってくると、玄関の鍵を開けて中に入った。だがこの時に、見知らぬ男に襲われている亜希子の姿があった。
    プリマを守らなければ、と未緒は思った。今、彼女の身にもしものことがあれば、最後の夢も叶わなくなる。
    彼女は身を低くして中に入って花瓶を取ると、男の頭目がけて両手で思いきり振った。


    p319
    「聞こえますか」と加賀はいった。彼女はさすがに少し驚いたようだが、彼がなぜこの秘密を知っているかということは聞かず、「近くなら」と答えた。
    「加賀さん、あたしを逮捕してください」
    「ええ、あなたを逮捕します」
    「これでようやく罪の償いができるんですね。とても長い日々でした」
    「償いは必要です。しかし、公正な審判もまた必要です。あなたにとっても今度の事件は不運だった」

    「俺があなたを守ってみせる」と彼は言った。
    「加賀さん。あたし、加賀さんの声を忘れません」
    声が詰まった。その彼女の体を引き寄せ、加賀は囁いた。
    「大丈夫。耳のこともきっとなんとかしてみせる」
    彼はフロリナ姫の顔のままの未緒に、静かに口づけした。
    「君が好きだから」
    加賀は未緒の身体を強く抱きしめた。

    • きのPさん
      >>kuma0504さん
      コメント有難うございます!
      確かに同シリーズの別作品で美緒の裁判で証人として出席したみたいなエピソードもありま...
      >>kuma0504さん
      コメント有難うございます!
      確かに同シリーズの別作品で美緒の裁判で証人として出席したみたいなエピソードもありましたね!
      加賀恭一郎シリーズの外伝として、是非この恋物語の続編を書いて欲しいですね。。。
      2019/07/04
    • kuma0504さん
      何故か誤作動で、フォローが外れていました。すみません。直しときました。
      「祈りのー」では「恭一郎最大の謎が明らかになる」という意味の煽り文句...
      何故か誤作動で、フォローが外れていました。すみません。直しときました。
      「祈りのー」では「恭一郎最大の謎が明らかになる」という意味の煽り文句があったと思うのですが、恭一郎にとっての「人生最大の謎」は美緒と経緯だと私は思っています。絶対これだけで一冊本を作るべきだ、と5年くらい前からいろんな所に書いています(^_^;)。
      2019/07/04
    • きのPさん
      >>kuma0504さん
      再度フォロー頂き、有難うございます(笑)
      確かに加賀恭一郎シリーズにおいて、美緒の存在(というか、美緒の現在の...
      >>kuma0504さん
      再度フォロー頂き、有難うございます(笑)
      確かに加賀恭一郎シリーズにおいて、美緒の存在(というか、美緒の現在の状況)は大きな謎の1つですよね!
      そこに触れる作品は欲しいものです。何より、加賀恭一郎の恋物語は個人的にもニーズ大です(笑)

      ただ、それ以上に加賀恭一郎の生い立ちというか母親のエピソードも凄く気になっていたので、「恭一郎最大の謎」という煽り文句も個人的には激しく同意できました。

      ちなみに・・・
      もう観られたかもしれませんが、「麒麟の翼」と「祈りの幕」は実写版もとても良い作品ですよ。
      両方とも、何度も見てその都度号泣です。
      2019/07/05
  • 「祈りの幕が…」の図書館順番待ちをしているところなのだが、レビューによると加賀恭一郎シリーズであり、今までのそのシリーズを読んでおいた方が良さそうだということを知る。
    それで、シリーズの内の読んでいなかったものを読んでいるところ。

    そんなわけで加賀シリーズは本書で6冊目になるのだが、オバチャン、本書ではとうとう加賀恭一郎に惚れてしまった…。
    今まで読んだ作品でも加賀恭一郎は心優しい良い刑事だと思っていたけれど、本作では恥かしながら胸がキュンとしてしまったよ。
    どの作品を読んでも加賀恭一郎は阿部寛の顔が浮かんできちゃうのだけれど、いいの、阿部寛も元々好きだから。

    話の進行通りに、つまり未緒と加賀との接触する過程通りに、女だったらこれは恋しちゃうよ…。
    でもごめん、オバチャン、バレリーナとは似ても似つかぬ体型で!って誰に謝っているんだか?

    あと、加賀も含め、刑事達の捜査会議や、捜査を進めていく段階での何気なく普通っぽい会話も良い。
    本当の刑事さん達を知らないけれど、なんとなく本当の刑事さん達ってこんな感じで捜査しているのかなと想像すると、派手なテレビドラマより好感が持てる。

  • 加賀恭一郎シリーズの二作目が満を持して登場。前作の「卒業」では、まだ学生だった加賀が、本作では刑事になっていた。
    高柳バレエ団の事務所で男性が殺された。被疑者は女性団員。殺された男性は事務所から侵入し、それに驚いた女性団員が自分を守るために男性を殺してしまったのだという。
    当然、バレエ団側は正当防衛を主張するが、捜査の結果、幾つかの不審点が浮かび上がる。バレエ団の複雑な関係。特殊な組織図。

    バレエ団の知られざる秘密を暴いていく加賀が本作の軸ではあるのだが、それに並行して加賀の恋愛模様も絡んでくる。これも見どころの一つである。
    ちなみに加賀が恋をする浅岡未緒という女性であるが、ドラマ版では石原さとみが演じているという。ぜひともドラマ版のほうもチェックしていきたい。

  • とても切なくて美しくて、まるで静謐なクラッシックのような印象が残る物語だ。
    加賀の若さゆえの真っ直ぐさが、現在の加賀を知っているだけにまぶしく映ってしまった。
    未緒の内に秘めた激しい情熱が、深々と物語の底流に流れている。
    バレエ界という特殊な世界。
    狭い世界で起きた事件は、すべてをバレエに捧げて生きてきた者たちの哀しみであふれていた。
    バレエを踊る。思い描いたように、自分の持てる力を出し切ってステージで舞う。
    それだけのために、彼らはたくさんのことを犠牲にしてきたのだ。
    込められた多くの思いが交錯し、事件を複雑なものにしてついには第二の事件を招いてしまう。
    哀しいけれど美しい。
    美しいけれど切なすぎる。
    そんな物語だった。
    あらためて読み直してみると、加賀恭一郎シリーズの中でも「眠りの森」は異色だったことがわかる。
    「あぁ、加賀にもこんなときがあったなぁ」と懐かしく思えたし、若い加賀も悪くない。

  • バレエダンサー界の悲恋、人間模様、バレエに懸ける情熱や躍りの豊かさ、、、
    ミステリーながら、トリックよりも心情が豊かに描かれていておもしろかった。
    主人公の加賀の恋模様も見物です。

  • 加賀恭一郎シリーズ第2作目。1作目で大学4年生だった加賀恭一郎が警視庁捜査1課の刑事となって登場。確か教師になるはずだったのに、いきなり30歳くらいの刑事として登場し、殺人事件を解決する。
    あとで少し触れられているが、教師となったが辞めて刑事になったらしい。1作目で恋愛感情を打ち明けていた同級生の女性も少し登場するがやはり結ばれなかったみたいだ。刑事の父親も引退していて、相変わらずの距離のある関係だが、刑事として相談出来る存在になっている。
    クラシックバレーの世界で起きた殺人事件、正当防衛と見られた事件が、そして引き続き起きた2件目の殺人事件が、加賀の推理で意外な真相が暴かれる。鍵となるのは2年前そして4年前のニューヨークでの出来事。2箇所の所轄の警察の応援として捜査に参加している加賀恭一郎が徐々に真相に迫っていく。
    そして加賀恭一郎の新しい恋愛の行方が気になる終わり方は、第1作目と同じだ。3作目がこの続きになるかどうかわからないが、3作目も読もうと思う。

  • 加賀恭一郎シリーズは何冊か読んだが、加賀恭一郎に魅力があると初めて感じた。

  • 加賀恭一郎シリーズ2作品目。やっぱり加賀さんは優しい!というのが率直な感想です。前作から数年が経ち、所々で経歴が披露されているため、読者はその年月を想像で埋めていくことになります。これからの作品でさらに加賀刑事の人となりが深まっていくことに期待しています。

  • いわゆる推理小説。

    加賀恭一郎モノの最新作をプレゼントで貰ったため、シリーズの未読作品を急いで読まねば!!!!と、手に取った一冊。

    (現在、既読は「卒業」「どちらかが彼女を殺した」「赤い指」と、もうひとつ「(タイトル失念)」、読順不同)

    相変わらず、最後まで誰にも感情移入できないまま進んだが、結末には納得。

    加賀の恋(?)の行方が気になるかな。

    ★3つ、6ポイント半。
    2017.12.28.古。

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著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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