りら荘事件 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061851375

作品紹介・あらすじ

秩父の山荘に7人の芸術大学生が滞在した日から、次々発生する恐怖の殺人劇!最初の被害者は地元民で、死体の傍らにトランプの“スペードのA”が意味ありげに置かれる。第2の犠牲者は学生の1人だった。当然の如くスペードの2が……。奇怪な連続殺人を、名探偵星影竜三はどう解く?巨匠の本格傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 今回は推理ノートを用意し、人物相関図、アリバイ表まで書いたのに…。ダメでした。
    これだけ人がばたばた死んでいけば犯人はすぐわかると思っていたのに。
    最後まで疑いもしなかった人が犯人だった。この犯人はものすごく冷静で悪知恵が働く人。
    それからなんといっても冷たい人だ。
    大掛かりなトリックはなかったけど伏線やトランプナイフなどを使ってとても楽しませてくれた。

  • 面白かったが概ねこういうことだろうなというのはわかった。
    本人が気づかないことある!?という箇所や、クローズドじゃないのにそんなに閉じ込めておけるか?という疑念がややある。

  • 登場人物を把握できないうちにどんどん死んでいった。
    古典て感じ。

  • いわゆる館モノのハシリと思える、クローズドサークルではないが。背景、登場人物、に時代を感じることはあるが、連続殺人における小道具、アリバイ、会話の端々に隠された伏線、紛れもない本格推理小説だった。

    実際自分も謎が解かれたあとで、やっと気づいたが、氏の本格に対するこだわりが凝縮された一冊なのだろう。

    難を言えば探偵星影龍三はなんとなく好きになれなかった、鬼貫警部が魅力的だからだろうけど…

    次の鮎川作品を鬼貫警部にしよと思った。

  • びっくりするぐらい次々と殺人が起きる。それに比べて、トリックは地味である。登場人物の名前が変わっているが、トリックと関係なかった。関係があれば十角館だ。

  • 読書会の課題図書。
    だけど、なんだかなんだか…だったなぁ~

  • 鮎川哲也の『りら荘事件』を読了。

    この作品は、実に推理小説らしい推理小説と言える。誰かが死ぬ度に死体の傍に必ず置いていかれるスペードのカード、そして様々な殺害方法。動機にしてもそう。

    読んで初めて知ったが、トランプにはそれぞれ、ダイヤはお金、ハートは愛、クラブは知恵、そしてスペードには死という意味があるという。犯人が死体の傍にスペードのカードをAから順に置いていったのは、それに死の意味があるからで間違いない。

    プロットがしっかりしていて、とても一昔前の推理小説とは思えない出来。少し昔の作品を読んでいると、細かいところで説明がなされていないことも稀にあるのだが、この作品は全てに説明がついていた。

    しかし、登場人物の中で女性は全く華がなかった。ここまで酷いのも珍しい。敢えてそう作ったのだろうが、必ず一人くらいはヒロインや綺麗どころの脇役が出てくるものだ。ところがこの作品の女性は、太った婆さんや醜女、白豚などと称されるような女性ばかり。現実的な気もするが、ここまでだと逆に非現実的とも言える。

    しかし完成度は素晴らしい。本格好きならば押さえておきたい1作である。

  • 5 

    極上フーダニット・ワンダーランド。

    何故か手元に講談社文庫版(本書)と創元推理文庫版の2冊があって、どちらを読もうか迷ったのだが、ルビが多くついている本書を読むことにした。ただ、明らかな誤字があるので再読する際は創元版にしようと思う(さすがに“スペードの札”が“スペースの札”になっていたりすると萎える)。 本書読了後、創元版の創作ノートと解説だけは読んだ。講談社版の解説と合わせて読むとなかなか面白い。ちなみに創元版には講談社版にはない「秩父への鉄道」という図版が載っている。なくても困らないが、あった方が地理を把握する上で役に立つ、かもしれない。


    【以下ネタバレ】
    犯行後カードが置かれる理由は想像がつきやすいと思う。狙いは殺害順を誤認させてのアリバイ作り。入れ替えられるのは2人目(松平)のと3人目(橘)の順番。これだけで橘を探しに行く過程でアリバイを得た2人に犯人は絞られる。振り返ってそれまでの行動、及びその後の犯行から考慮すると、芋づる式に真犯人はこっち(尼)だなとほぼ確信。ところがこいつが最後に殺害されてしまい「え?なんで?」となる。このように謎が解けてしまった(解けたと思い込んでいる)読み手に対しては、もう一段階仕掛けがあるような構造に感じられ、さっぱりわからないという人には一連の謎に見える二枚腰、というかハイブリッド感が素敵。真相も十分納得のいくもので、特に伏線の張り方・ヒントの出し具合(強弱)が絶妙、回収もスッキリ。
    1958年(原型や雑誌連載は更に前)に発表されたことを考慮してもしなくても紛れもなく名作。



    【以下備忘録—他の作品にも触れるネタバレ】
    第一回鮎川哲也賞を受賞した芦辺拓『殺人喜劇の13人』は本作の子供のような作品なんだなと認識。学生が集まる舞台というだけでなく、事件後の食事風景など雰囲気がよく似ている。クオリティはさておき。

    犯行順を錯誤させるためにカードを置いていく、というネタは形を変えながら様々な作品で受け継がれていて、言わばスタンダード化しているとも言える。例えば二階堂黎人の『地獄の奇術師』ではわざわざ本作の書名を出して流用している。本作は蘭子のお気に入り、という設定。

    色盲を利用したトリックも、いろいろと流用されている。一つ例を挙げようと思ったが、どうしてもタイトルが思い出せない。短編で、内容はおぼろげに覚えているのだが。ああモヤモヤする。なんだっけ…。ADVゲームでは『クロス探偵物語』などもそうか。

    砒素を常用していると免疫ができて毒が効かなくなる、というネタはセイヤーズの作品に先例がある(原題『STRONG POISON』(1930年))。 どうりで読んだことがあると思った。

    たらい等で溺死させ殺害場所を誤認させる、というネタは枚挙にいとまがない。風呂だけでなく、特定の川、湖、海などで死んだことにするために、犯人はわざわざ水を汲みに行く。手を抜いて水道水で溺死させると簡単にバレてしまう。

    火かき棒—定番の凶器。掴んで殴る。

    タオル—指紋がつかないスグレモノ。

    吹き矢—馬鹿にしてはいけない。ドイルやクリスティも書いている。

    鮎釣り—駄洒落に見える。

    尼—こんなところにもアマちゃんが。

  • 怒涛の展開で息つく暇もなく殺人事件がおこります。そう思うとちょっと警察の無能ぶりがひどすぎるんじゃなかろうか…。そして探偵が出てくるのは最後の最後。ぱぱっと謎解きして終了です。それでも話に勢いがあるので、どんどん読み進められました。関係ないですが、登場人物の名前は今時のキラキラネームみたいだなーと。

  • 犯罪の手口は現実味薄く、捜査陣の言動も笑いをこらえること度々あり。しかしながら執筆された時代(昭和20年代)を考慮すれば画期的な作品であったのかも。

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著者プロフィール

鮎川哲也(あゆかわ・てつや)
本名・中川透。1919(大8)年、東京生まれ。終戦後はGHQ勤務の傍ら、様々な筆名を用いて雑誌へ短編を投稿し、50年には『宝石』100万円懸賞の長篇部門へ投稿した「ペトロフ事件」(中川透名義)が第一席で入選した。56年、講談社が公募していた「書下ろし長篇探偵小説全集」の第13巻「十三番目の椅子」へ応募した「黒いトランク」が入選し、本格的に作家活動を開始する。60年、「憎悪の化石」と「黒い白鳥」で第13回日本探偵作家クラブ賞長編賞を受賞。受賞後も安定したペースで本格推理小説を書き続け人気作家となる。執筆活動と並行して、アンソロジー編纂や新人作家の育成、忘れられた探偵作家の追跡調査など、さまざまな仕事をこなした。クラシックや唱歌にも造詣が深く、音楽関連のエッセイ集も複数冊ある。2001年、旧作発掘や新人育成への多大な貢献を評価され、第1回本格ミステリ大賞特別賞を受賞。2002(平14)年9月24日、83歳で死去。没後、第6回日本ミステリー文学大賞を贈られた。

「2020年 『幻の探偵作家を求めて【完全版】 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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