斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2559
レビュー : 283
  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061851894

感想・レビュー・書評

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  • さて『占星術殺人事件』で颯爽と登場した御手洗潔だが、第2作目の本書は本格ミステリの王道とも云うべき館物だ。そして奇想島田氏はやはり普通の館では勝負を仕掛けない。タイトルにあるように全体が斜めに傾いだように建てられた斜め屋敷なのだ。この斜め屋敷、その特異な建てられ方故に滞在する人は遠近感がとりにくいという錯覚を覚える。よく遊園地などにあるびっくり舘と名づけられたアトラクション内で見られる、同一線上に立った大人と子供の背の高さが逆転するというあれだ。そんな話が本作には盛り込まれているのだが、実はそれこそ島田氏のミスリード。この館が建てられた目的こそ、ここで起きる殺人事件の真相に大いに関わっているのだが、これがもう唖然とする。常人であれば理解できない目的だ。この真相ゆえに「世紀のバカミス」とまで云われているが、この評価は致し方あるまい。恐るべき執念というよりも金持ちの道楽としか・・・おっとこれ以上はネタバレになるのでよそう。

    本書に関する評価は案外高いが、私はこれに首を傾げてしまう。確かにこのトリックは読者の想像を超える物だが、ミステリとしてどうかと問われれば、佳作かなぁと思う。あの『占星術殺人事件』に続く2作目として発表された御手洗物という称号がどうしても付き纏う本書は、前作と比べざるを得ない運命にある。それと比べるとなんだか普通に物語は流れ、結末までミステリの定型を保って進行する。物語としての熱が前作に比すると減じているように感じるのだ。確かに誰しも初めての小説というのは今後の人生を大きく変える分岐点と成り得る可能性を秘めているのだから、自然、気迫がこもるのも無理はないだろう。しかし作家には1作目よりも2作、3作目としり上がりによくなる作家もいるわけで、そういったことを考えれば、この作品はもう少し推敲すべきではなかったかと思う。しかしこれは単なる私の個人的な嗜好によるものなのだろう。過去何度も行われたオールタイムベストでも100位以内に本書は選ばれているのだから。
    あと、意外に他者の感想で語られないのは本書の文体。前作が通常の物語の文章に加え、冒頭のアゾート製作の手記、そして最後の犯人の告白文と複数の文体を駆使していたのに比べ、本作はなんだか文章が幼いような印象を受けた。小学校の教科書で読むような物語の文体、極端に云えばそんな感じだ。しかしネットで色々な感想を読んでもそのことには触れられていないので、もしかしたらこれも単純に私の嗜好によるものなのかもしれない。

    本書でも犯人や塔の模様の謎(これは簡単だったね)は解ったものの、トリックは解らなかった。ただ本格ミステリでは真相が明かされた時に読者が感じる思いは概ね4種類に分かれると思う。

    1番目はそのロジック、トリックの素晴らしさに感嘆する物。これこそが本格ミステリの醍醐味である。
    2番目は解らなかったものの、特段感銘を受けなく、なるほどねのレベルで終わる物。ほとんどこのミステリが多い。
    3番目は解らなかったものの、なんだこりゃ?と呆気に取られるもの。バカミスと呼ばれる作品がこれには多い。
    4番目は真相が読者の推理どおりだったもの。これもまた作者との頭脳ゲームに勝利したというカタルシスが得られる。

    で、本作はこの4分類のうち、3番目に当てはまる。しかしギリギリ許容範囲かなと思えるのが救いだ。実際本当にこのトリックが成り立つのか一度実験したいとは思うが。特に天狗・・・おっとヤバイヤバイ。

    しかし雪上での殺人や屋敷の中での密室殺人など、好きな人には堪らない作品だと思う。また本作は後々のことも含めて、御手洗シリーズで読んでおいた方がいい作品ではある。その理由はここではあえて云わないでおこう。

  • ちょうど北海道も冬に突入する時期、まさしくこの時期・この土地が舞台のお話が読めたのは幸運でした。極寒の僻地で繰り広げられる殺戮の狂宴、連日繰り広げられる斜め屋敷の密室殺人!それだけでもハラハラで楽しめましたが、なんといっても時代を感じる渋味のある文章といかにも仕掛けの多そうな屋敷の構造に夢中になって読んでいました。なかなか御手洗が登場しないな~と思いきや、現れるなりその奇人ぶりを遺憾なく発揮していて安心しました。善良な刑事たちの凡庸さと奇天烈・御手洗の鮮やかな謎解きの対照が面白かったです。

  • これぞ王道ミステリー。雪山のお屋敷を舞台に連続密室殺人。あり得ない犯行に警官も頭を抱える中、満を持しての名探偵御手洗登場。そして鮮やかな推理。トリックもまさかと言うような、でも納得してしまうのはさすがです。御手洗の登場までが長いから少しだれてしまうけど、全体的に大満足でした。

  • 買ったけど読むのを後回しにしてた本

    「占星術殺人事件」が自分には合わなくて読むのを避けてました。

    読んでみたら別に読みにくい内容でなく、トリックも考えても全くわからない壮大なものでした。

    この物語の主役?の御手洗さんが登場するまでが長く、その間刑事同士で話し合っている所がだらだらしていて、そこがちょっとイライラした所だった。

    文章で建物の構造や特長、現場状況など説明するのはすごく難しいとも感じました。

    途中にある図解って便利だなと感じた小説でした。

  • 時代背景が古いのと、芝居がかったのと動機が物足りないのを除くと、大変美しいトリックであっぱれ。
    理論もへったくれもないけど、斜め屋敷の存在は芸術の域!

  • いやそのトリック無理あるやろーっ!!と思った笑

  • 昔読んだなあ、と思いつつ。

    途中でそう言えば、とある程度思い出しますが、本格ミステリの傑作。
    でも、あまりに小説が技巧的すぎる、というか本格ミステリすぎるのが、時代感と相まって古く感じがちですが、それでもやはりこの小説はインパクト、設定、結末、と今の本格ミステリの歴史を変えたんだろうな、と思います。
    リアリティが、というのは簡単ですが、やはり一度は読むべき名作だと思います。

  • 犯人は読み進めるうちに分かるのだが、
    トリックはさっぱりわからない。

    雪の足跡については、家を見学させてもらわないとなかなか
    気付けないだろうし、
    もう一つの大胆な方も、ちょっとコレは想像できない(^-^;

    なるほど、斜め屋敷の犯罪だと納得。

    読み易くて引き込まれるので短い時間に一気に読んでしまう。
    見取り図と本文、行ったり来たり・・・。

  • 小説は勢いが大事、教養本は長く愛せることが大事。あくまで個人的に。

    日本の最も北の果て、北海道の宗谷岬のはずれのオホーツク海を見下ろす高台の上に、「斜め屋敷」は建っていた。
    意図的に傾けて建築されたこの風変わりな建物の中で、それに負けないくらい奇妙な殺人事件が次々と起こる。
    警察も駆けつけ、不可思議な密室殺人事件の解決に尽力するが、努力の甲斐もなく事件は収束の兆しを見せない。
    藁にも縋る思いで依頼して東京からやってきた助っ人は、インチキ臭い占い師 御手洗という男だった。
    彼の意味不明な言動に怪訝そうな顔を隠せない一同だったが、そこで事態は急展開を迎えることとなる。

    島田荘司 作、御手洗 潔シリーズで有名どころと言えば、『占星術殺人事件』、『異邦の騎士』、そして本作『斜め屋敷の殺人』の3つでしょう。
    これにてようやく認知度の高い3冊の読破に成功しました。いやぁよかったよかった。

    閑話休題。
    本作の特徴といえば、何といってもその舞台設定の特殊性でしょう。
    なんと建物自体が傾いて設計されているという謎設定。
    そんな奇妙な屋敷の持ち主が浜本 幸三郎なる大富豪。彼が知人を招いてクリスマスパーティを開催するわけですね。
    そこでおあつらえ向きに起きる殺人事件。
    驚くべきことに、死亡時刻やアリバイを照らし合わせていくと、外部からの侵入が困難だっただけでなく、関係者すべてについて犯行が不可能であることが判明します。
    さて困った、どうしよう、というわけで事件に見切りをつけた北海道札幌署の方々は東京に助けを求めるわけですね。

    我らが御手洗が相棒の石岡と共に彼の北の地にやってくるのは物語も後半になるわけですが、このトリック誰が解けるんだよってくらい難解な推理をやってのけます。
    …いや、冗談ではなくて、誰がわかるんですかこのトリック。
    決して情報が少ないとか、アンフェアだといっているわけではないのです。常識の範囲外すぎて唖然とするしかないといいたいのです。
    スケールの大きさ、アイディアの奇抜さ共に規格外。
    読んだ人の印象に残るのは当然のことだと思いました。

    少し残念だったのは、序盤で出てきた花壇の謎でしょうか。
    本筋のトリックがあまりにもなインパクトだったため、花壇の話は「あぁ…うん…」と微妙な反応しかできませんでした。
    その他、登場人物の人間関係が徐々に浮き彫りになっていく様子や、警察による試行錯誤ならぬ思考錯誤のやりとりは小説としてのおもしろさを損なわないクオリティで満足でした。

  • 「読者への挑戦」が挿入されてはいるが……こんなの解けるか!

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著者プロフィール

1948年広島生まれ。武蔵野美術大学卒。『占星術殺人事件』での衝撃的なデビューから現在まで日本ミステリー界の旗手として傑作を多数刊行。同時に新人の発掘にも力を尽くしている。現在その読者は世界に広がる。

「2020年 『改訂完全版 毒を売る女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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